第二十七話 米豪合同演習タンデムスラスト’99(前編)
週明けに期末テストを控えておきながらの更新です……何やってんだか(ハァ…)
しかも今回、初めて戦闘(演習)の描写を書いたのですがそのせいかいつもの倍以上になったため分けました。
また知識不足ゆえお見苦しいとこがあるかもしれませんが許してください。
タンデムスラスト
米豪合同演習の一つで主にグアム沖で実施される。
この演習は米海軍と豪海軍の連携を確認する上での演習だったが近年他国との連携も必要とされ今回のタンデムスラスト99からカナダ海軍が演習に参加。またその様子を観閲するために韓国、シンガーポールなどからも何隻かが来ることになっており今年の規模は米兵が1万人(そのうち海兵隊が約200人)、その他の国の兵は2500人が参加さらに約20隻の艦艇がグアムに集まっていた。
4月1日
キティはグアム沖を艦隊をなして航行していた。
艦隊の内容はキティホークを中心に前方にカーティス・ウィルバー、後方にチャンセラーズヴィル、左右をカナダの海軍フリゲート、モントリオールとバンクーバーで固めた輪形陣をとっていた。そしてその後方には3月末に合流したブルーリッジを旗艦とした揚陸部隊が控えておりクァン達観閲部隊もそこにいる。
「ブルーたちのためにも私たちが何とかしないとね」
陣形の中央に座する空母『キティホーク』の艦橋の上にキティは一人、立ちそう呟いた。
その表情はいつにもなく引き締まっており耳にはインカムが、普段何もないはずの左手には鈍く銀色に光る指輪がはめられていた。
そしてキティの脇には簡素なテーブルが置かれておりその上には艦魂の力で顕現させた銃と周辺海域の地図が置かれておりさらに地図の上にはいくつかの駒が置かれていた。
今日の演習で今回のタンデムスラストの内容は一段落付くのでキティは無意識に緩んでいるであろう自分の緊張感を取り戻すことも兼ねインカムを使い周囲を護衛するカーティスたちに話しかけた。
「今回の目的は敵対勢力に占領されたグアム島奪還のための揚陸作戦です。今回はベルゥさんのような強襲揚陸艦の艦載機による対地支援攻撃がないのでその分私たち打撃戦力の支援が重要になります。全員気を抜かず仕事を務めてください」
『わかっています司令。今回はパーシーさん達が相手ですからね』
「ええ、それに急だけどヴィスさんが相手側に入ったことも忘れないで」
カーティスからの返信にキティはうなずいた
今回のキティ達の任務は揚陸部隊が比較的安全に揚陸するための敵対戦力の排除である。
キティたちが戦力を排除しだい後方にいるブルーが指揮する揚陸部隊が揚陸する手筈になっている。
そしてそれを妨害するのがオーストラリア海軍であったが演習の4日前に急遽システムリンクの訓練のため敵対勢力側にヴィンセンスを入れることが決定したのだ。
一隻とはいえイージス艦がいる以上油断はできない。
「カーティス、防空戦闘の指揮はあなたに任せます。頼むわね」
『了解』
そこでカーティスとの交信を切りキティは自分の隣にある机に目を移した。
机の上の海図には自分をあらわす大きな駒とそれを取り巻くように護衛する4隻の艦を示す駒が配置されそれとは別に艦載機を示す小さな駒がいくつか配置されていた。
すでに艦隊の目となるE-2C『ホークアイ』早期警戒管制機は飛び立っており半径500キロメートルの範囲をすでに警戒・監視している。
キティが目を移すと飛行甲板上ではクルーたちが慌ただしく発艦作業を行っていた。
エレベーターによって格納庫から飛行甲板に上げられ装備の換装が行われたF/A-18C『ホーネット』が黄色のジャケットを着た作業員によってキティにある全部で四基のカタパルトの内、一番右舷側のカタパルトであるカタパルト1へ誘導していく。
F/A-18Cの腹には増槽、翼下には対艦ミサイルの模擬弾を装着しパイロットは移動しながら機体の各種チェックを行い発艦に備える。
そしてカタパルトのところに来ると今度は緑のジャケットを着た作業員が機体の前輪へと駆け寄っていった。
「ジャック、気を付けてね」
キティが見守る中、緑のジャケットを着た作業員ことジャックは前輪がきちんとカタパルトの固定されたのを確認する。
「(前輪ランチバーのシャトルへの固定よし、ホールドバックの固定よし……)」
少しでも身落としがあれば自分への死へとつながる。
その恐怖感とジャックは戦いながら確認作業を進める。
ジャックが確認しているその間にF/A-18Cの後方にある排炎防護柵が後方にいる機体や作業員を発艦する艦載機のアフターバーナーから守るために立ち上がる。
「(All Clear……)」
ジャックはすべてを確認すると機体から離れながらL字型にした右腕をぐるぐると大きく回した。
ジャックのサインを見たパイロットはアフターバーナーを点火、機体が前進しようとするがカタパルトを固定するホールドバックバーがそれを阻止する。
最後にジャックは主翼を避けるため屈み腕を前へ大きく突き出した。
「(GO!)」
それと同時に飛行管制所からのスイッチでF/A-18Cはカタパルトにより一気に時速150キロへと加速、さらにアフターバーナーによる加速も加わりながら大空へとはじき出されていった。
飛んで行くF/A-18Cを見てジャックは一息ついたがすぐさま自分の所定の位置へと戻る。
途中班長のカールがハンドサインで
「御苦労さん」と労われながらジャックは艦橋の上へと目を向け周りの気付かれないようにキティにグッと親指を立てて見せた。
キティもまたその合図に笑顔で答えた。
ジャックがその後所定の位置へ戻ったことを確認し無事に作業を終えたことに安堵しながらキティはふと顔を上げた。右舷側上空ではHH-60Hが発艦の失敗に備えサークルパターンで飛行していた。
キティはその様子を見ながら昨日パーシーに言われたことを思い出しつぶやいた。
「CVW-5か……」
CVW-5(Carrier Air Wing Five:第五空母航空団)
キティの最大の武器ともいえる艦載機の航空群。
今回の演習に参加するのはF/A-18Cを運用し艦隊防空、対地、
対艦攻撃など多岐の渡る任務を行うVFA-195“ダムバスターズ”、EA-6Bを運用し電子戦支援や敵地防空網制圧を主任務とするVAQ-136“ガントレッツ”、E-2Cを運用し艦隊の見張り役として索敵・警戒、艦載機の管制を行うVAW-115“リバティベルズ”、SH-60FとHH-60Hの二機種のヘリを運用し対潜作戦、救難、輸送、対水上戦を行うHS-14“チャージャーズ”の計4飛行隊で先ほど飛び立っていったのはダムバスターズの対艦攻撃隊であった。
キティがそのようなことを考えているとアフターバーナーをとどろかせながらもう一機F/A-18Cが飛び立っていったがまだ作業は続いている。
キティは大きく深呼吸をした。カタパルトを動かすには大量の蒸気が必要となるため現在ボイラーをフル稼働させ蒸気を送り込む必要がありキティはそのことをイメージしながら深呼吸を繰り返す。
「(やっぱり私だと同時運用は2基が限界ね……)」
そう思いながらキティは大きく息をついた。
原子力を動力とするニミッツ級の場合その機関から発生する膨大なエネルギーを利用し大量の蒸気を作り出しながら航行できその気になればすべてのカタパルトの運用が可能であるが通常動力であるキティの場合発生させることのできるエネルギー量では十分な速力で航行しながら同時運用できるカタパルトは2基が限界であった。
しかし、戦闘時でも使用するカタパルトの数は2基なので問題はないといえた。
そんな中、飛行甲板にずんぐりとした胴体の一機の艦載機が上げられてきた。
その機体を見たキティはどこか複雑な表情を浮かべた。
今回の演習の成功条件は敵艦2隻以上の撃沈もしくは戦闘不能であるがこの機体を使うとは……
「パーシーには悪いけど仕方ないわね……」
キティがそう言っている間にもその機体の発艦の準備は着々と進みのちにその機体は発艦していった。
誠に勝手ですが分けたので後書きは次回の話になります。