第二十二話 料理対決の結末
今回はある程度出来ていたので早めの更新になりました。
ライエンの掛け声とともに二人は神速の如く素材を選び始めた。
キティの選んだのはパンやレタス、トマトそしてひき肉を主に選び対するアリスは卵をこれでもかというくらい選んだ。
二人は素材を選び終えると早速調理にかかった。
「これは早いですね、いったい何ができるのでしょうね」
そのあまりの速さに感嘆するカーティスの肩をジャックが叩いた
「あのカーティス……何で俺が審査?」
「ジャックさんの判定なら二人とも納得すると思うので」
「そうか?」
カーティスの答えに納得のいかないジャックだったがものすごい勢いで調理をしている二人を見てとりあえず納得することにした。
さて調理中の二人の状況を見ていたライエンはというと……
「(これは……)」
ライエンの顔を汗が滝のように流れていく。
というのもはたから見るとすさまじい勢いで調理しているのでよくわからないが近くで見ると悲惨な光景が広がっていた。
「(アリスさんはオムレツを作っているようですがいま砂糖の代わりに塩をたっぷり入れたような……)」
そうライエンが思っているころアリスの頭の中ではあるオムレツの完成図が出来上がっていた。
「(お兄ちゃんはオムライスが好きだって言っていたから絶対これであのおばさんに勝てるね!でもなんかインパクトが足りないな……そうだ確かお兄ちゃんこの前あんなことを……)」
アリスはあることを思い出すと調味料の中からある瓶を取り出すとふたを開けた。
「(こ、これはまさか……)」
ライエンがヤバいと思ったのもつかの間何とアリスは瓶の中身を丸々一本分投入した。
「(これでいいかな?)」
アリスは再び先ほど入れたものと同じものを探しだした。
一方ライエンはこれ以上見るの目に毒だと思いキティの方へと目線を移した……が
「(し、司令あなたはいったい何を……)」
ライエンはキティが持っていった材料からハンバーガーを作るものだと思っていたがそこで行われていたのは……
「(なんで全部炒めているんですか……)」
ライエンの見たものは適当にカットされた全部の材料が塩、コショウの味付けでフライパンの上で炒められている状況だった。
「(この前ジャックが言っていたし気にいってくれるといいんだけど……でも今になって考えると私ってあまり料理したことないんだった……)」
普段簡単なものなら自分で作ったりもするが何らかのイベントがある時はほとんど部下である艦魂たちに料理を任せていたのを思い出したキティは自信をなくしつつあった。
そしてその様子を見たライエンはというと……
「(いったい何が出来上がるんでしょうかというよりジャックさん無事に済むといいのですが……)」
ライエンは自分の言いだした勝負に責任が持てなくなっていた。
そして……
「し、終了……(後で胃薬ジャックさんに渡さないとまずいかもしれませんね)」
ライエンの元気のない合図がかかった。
二人は出来上がった料理にふたをかぶせると審査員であるジャックの前に並んだ。
「では最初は司令どうぞ」
「はい」
カーティスに言われキティが前にでてふたを開けた。
「……何これ?」
ジャックは率直な感想を述べた。
そこには何やら肉や野菜、そして油をすって少し大きくなったパンがあった。
「……ハンバーガーソテー」
「……は?」
キティは顔を赤くしながら恥ずかしそうに小さく言った。
「前にジャックがハンバーガーを少し変わった方法で食べてみたいっていていたから……」
ジャックの芳しくない反応にキティはさらに落ち込んでいった。
「ああ、言っていたな……どれどれ?」
ジャックは一口食べた。
「う〜ん。少し油っぽいかな……でもこの味付けは良いよ」
「本当!?」
「ああ」
ジャックの好評価にキティは喜んだ。
一方その様子を見ていたアリスは面白くないといった表情だった。
「(何よ、あんなもの子供でもできるものじゃない!)」
アリスが心の中でそう叫んだ時
「アリスさん」
ジャックが一通り食べ終えたのを確認するとカーティスはアリスを呼んだ。
「は〜い!」
アリスは先ほどまで心にあった感情をうまい具合に隠すと前に出て元気よくアリスはふたを開けた。
「こ、これは……」
ジャックは目の前に現れたものに驚愕した。
「アリス特製ピリ辛オムレ〜ツ!」
アリスは笑顔でそう呼ぶがとてもピリ辛であるとは思えないほどオムレツは血のように真っ赤だった。
「お兄ちゃん前に辛いのが好きって言ったから頑張って作ったんだよ」
「確かにそうは言ったが……とりあえず」
ジャックは恐る恐るオムレツとは言えない赤い物体にナイフを入れた。
「うっ……」
割った瞬間部屋にタバスコの匂いが広がった。
アリスの後ろ側にいたキティ達は思わず鼻をつまんだ。
「タバスコが……結局また入れたんですね」
「エンターの料理を思い出すわね。エンターといい勝負になるんじゃないかしら……辛さで」
「それはまた……」
ライエン、キティ、カーティスが順にヒソヒソと話す一方でアリスは……
「ね、辛そうでしょ」
「あ、ああ……ものすごく」
ジャックはこの状況下で笑顔でいるアリスの今後を少しだけ思った。
このままお嫁に行っても大丈夫なのだろうか?
とりあえずあとで両親にこのことを連絡することとした。
「さあ、食べてみて」
ジャックはゴクリと唾を飲み込むと意を決してオムレツを一口、口にした。
「フグッ!」
オムレツを口にした瞬間ジャックは倒れた。
「ジャック!」
「お兄ちゃん!」
キティとアリスが叫ぶのは同時でライエンは咄嗟にジャックに駆け寄ると5リットルの水の入ったペットボトルをジャックの口にあてた。
「早く飲んでください!」
ジャックは意識がもうろうになりながらも懸命に水を飲んだ。
「はあ、はあ……」
水がほとんどなくなったころ息も絶え絶えジャックは何とか生還を果たした。
「あ、あのお兄ちゃん?」
アリスは恐る恐るジャックに声をかけた。
するとジャックはアリスの方を見ると一言。
「アリス、お前ちゃんと母さんの手伝いしているのか?」
ジャックの真剣な問いにアリスは申し訳なさそうに首を横に振った。
「そうか……今度からは母さんの手伝いしろよ」
「は〜い……」
ため息をつくジャックにアリスは静かに返事をした。
ライエンは二人が落ち着いたのを確認すると口を開いた。
「判定はどうしますか?」
この状況下でどうかとも思うが勝負であったことには変わりないので勝敗を決めたほうがいいとライエンは考えたのだ。
「ちょっと待てそれは……」
「私の負けよ」
ジャックが判定するのに難色を示したかと思うとアリスが声を上げた。
「今回は私の負け……誰が見てもわかるもの」
アリスは目に涙を浮かべながら部屋を飛び出していった。
その様子をジャックは茫然と見ていたが突然背中を叩かれた。
「ジャック!あとを追うわよ!」
「え、でも……」
キティの言葉に戸惑うジャックだったが周りを見るとカーティスとライエンもキティと同じように後を追えと言っていた。
「後片付けは私とカーティスがしておきます」
「司令とジャックさんはアリスさんを追ってください」
ライエンとカーティスの言葉に押されジャックとキティは部屋を出た。
アリスは部屋を出た後運よく今日来た関係者の集団に会いそのまま飛行甲板へと出た。
「はあ……」
アリスはため息をついたせっかく今日を、ジャックと会える日を楽しみにしていたのにジャックに申し訳ないことをしてしまった。
ふと横を見ると関係者を艦から降ろすための準備が行われていた。
「……帰ろう」
アリスがそう呟いた時息を切らせた声が聞こえた
「待つんだアリス!」
アリスが振り返るとそこには息を切らせるジャックとキティがいた。
「なんで、なんでついてきたの……」
アリスの目に再び涙が溢れる。
「勝負がついていないからよ」
息を整えたキティはスッとアリスに近づいた。
「あなたはあれでいいの?あんな結果で本当にいいの?」
キティの問い詰めにアリスはうつむき顔を隠した。
「キティの言う通りだ。アリスおまえは本当は嫌なんじゃないかこの結果が」
さらにジャックの問い詰めが来るとアリスはうつむいたまま口を開いた。
「そうよ、嫌よ、この結果が……でも事実だもの」
その言葉にキティはアリスの頭を叩いた。
「あなたのジャックへの思いはそんなものだったの!?」
「そんなわけないでしょ!私がどれだけお兄ちゃんの思っていたと思っているの!?」
キティ言葉にアリスは顔を上げ涙を零しながら訴えた。
その決意を持った言葉と目にキティは笑みを浮かべるた。
「だったらまた来なさい!私は待っているわ」
「え?」
キティの言葉の意味を掴みあぐねるアリスにキティは再び口を開いた。
「これだから小娘は……また今度勝負してあげるって言ってるのよ」
そこでアリスはようやくキティの言葉の意味を理解した。
つまりキティは再び勝負を受けるといっているのだ。
「……今度は絶対勝つんだからね!」
アリスは涙を拭いながらそう言った。
二人の話が落ち着いたのを確認するとジャックは二人の間に入った。
「じゃあ、今日はこれで一段落だな。そういやキティ、アリスの服は?」
ジャックの問いに二人はサッと顔が青ざめた。
「しまった私の部屋だわ」
「どうすんの!?今から戻ってたら間に合わないわよ」
キティたちがあわてだしたときカーティスが現れた。
「アリスさんの服を持ってきました」
「ありがとうカーティス。でも場所が……」
感謝するアリスだがさすがにここで着替えるわけにはいかない。
「こっちにこいちょうどいい場所がある」
ジャックの案内した所はキャットウォークといわれる飛行甲板員が艦載機の発艦の際身を隠す飛行甲板から一段下がった場所だった。
「本当は入れちゃまずいんだが仕方ないだろ」
「助かるわジャック」
「お兄ちゃんありがとう」
キティとアリスの礼もそこそこにして女性三人はキャットウォークに降りジャックは飛行甲板から誰も来ないかを見張った。
その後幸い着替えが終わるまでだれにも見つかることなく無事にアリスの着替えが終わり艦から降りることができた。
その日の夜
キティとジャックは甲板に立っていた。
「アリスさん可愛かったわね」
「ああ……ってキティお前アリスのこと……」
ジャックの指摘にキティは笑った。
「ついカッとなっちゃってね……でもこのことは内緒よ」
「また『おばさん』って呼ばれるぞ」
「確かに……」
ジャックの冷静かつ的確な指摘にキティは少し悩み始めたその時……
「司令」
突然の呼びかけに動じることもなくキティは振り返った。
そこにはカーティスがいたがその表情にはどこか暗い雰囲気があった。
「どうしたのカーティス?」
キティはカーティスの様子を敏感に感じ取っていた。
「先ほど総司令からこれが……」
「ブルーから?」
キティは不審に思いながらカーティスの差し出した紙に目を移した。
「どうしたんだ?」
ジャックが内容を見ようとしたときキティは紙を落とした。
「本当……なの?」
キティの言葉にカーティスは頷くことしかできなかった。
二人の様子を見ておかしいと思ったジャックはキティの落とした紙を拾い上げ内容を確認した。
そしてそこにはこのように書かれていた。
CV-60サラトガを実験用船として処分することが決定した。
第十回 アメリカ合衆国海軍特別広報放送局〜略して魂テレ
カーティス「ついに第十回を迎えた魂テレの司会を務めるカーティス・ウィルバーです」
キティ「………キティホークです」
ジャック「今回も暗いな」
アリス「そんなに暗いとシミができるよおばさん」
キティ「関係ありません!」
ジャック「まあキティの気持ちがわからないわけでもないな」
カーティス「サラトガさん今頃どうしているんでしょうか?」
アリス「さあ?」
キティ「……サラ姉さん」
ジャック「……今回はこの辺にしておかないか?」
カーティス「ですね。今はそっとしておきましょう」
アリス「じゃあ評価・感想、待ってるわね!」