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最終話

「ユウ君、準備OKだ!」


 永遠とも思われた長い長い一分がようやく終わる。ヒロの言葉を受けたユウは安堵に似た感覚を覚えた。


「分かりましたヒロさん。お願いします!」


 この状況を打開する策をヒロが披露してくれるのだろう。どんな策かユウには想像も付かなかったが、これまで予想の上の上を行く彼らだ。どんな策が出てきても驚きはしない。


「…………」


 だが、ユウの言葉に対してヒロは無言のまま口を開かない。


「ヒロさん?」


 この切羽詰まった場面で一体何を、ユウがそう思った矢先。


(これは……ヒロさんの思いが伝わってくる……)


 混じりあった理力とマナがお互いの感情を、意志を伝えている。先ほどまでよりも一層ヒロのことを感じられるようになっているのだ。


(なるほど、そういう事なんですね。分かりましたよヒロさん)


 コックピットの中でユウは無言で頷いた。


(うん。どうやらユウ君も分かってくれたようだ。こういうのは勢いが大事だ。あと、かっこよさ!)


 もちろんヒロ側でもユウの思いや考えを受け取っている。ヒロ自身も想定していなかったマナと理力の融合状態の能力。それを生かしてヒロの考えた秘策を伝え合ったのだ。


 はたから見ればアルヴァリスは無言で突っ立っているだけのように見えるだろう。そう、彼ら二人以外には。


「行くぞユウ君! あれを使うぞ!」


「はい、ヒロさんいつでもいいですよ!」


(このセリフも打ち合わせ通り。そして次は……ヒロさんのセリフ)


「スーパー!」


 ヒロが一際大きな声を張り上げる。


「理力!」


 それに続いてユウも腹の底から声を出す。


 ユウのパートは忙しい。なぜなら彼はアルヴァリスも操らなくてはいけない。声と同時に脚部の人工筋肉をフル稼働させ一気に飛び退る。地面に付き刺さったオーガ・ナイフをしっかり掴むと、さらに空高く跳躍した。


 まるで地面から追い風を受けているようだとユウは感じた。通常の跳躍では到達できる高さではない、それこそレフィオーネが飛行している以上の高度に到達したからだ。


「マナ!」


 所定のポジションに到達したことを確認し、ヒロが高らかと声を上げる。


「ソードっ!」


 再びユウのパートがやってくる。アルヴァリスがオーガ・ナイフを両手で握り、頭上高く振りかぶる。そのタイミングに合わせヒロは練りに練ったマナ理力融合エネルギーをオーガ・ナイフの刀身に展開したのだ。


 七色に光る、まるで噴出する炎のように波打つ刃が形成されていく。その長さはアルヴァリスの全長を超えるほど長く、そして大きい。


 まるで秘宝のように煌く七色の剣に見惚れる間もなく、アルヴァリスは悪鬼へと向かって落下していく。そして機体背面にある理力エンジンの排気口からマナ理力の余剰エネルギーが溢れだし、まるでロケットのように重力加速度を無視して加速していった。




「「ファイナルブレイク!!!!」」




 瞬間、ユウとヒロの声が重なった。


 これが合体技スーパー理力マナソードファイナルブレイクだ!


 あまりの突撃の速さと刀身長により回避は困難だと判断したのか、それとも更なる力を得て巨大化した自分には通用しないと思ったのか……悪鬼は手にした棍棒のように太く大きくなった剣を構えて迎え撃つ。


 その心意気やよしと、アルヴァリスは振りかぶって力を溜めていた虹色の剣を悪鬼へと一息に振り下ろした。


 頭上から襲ってくる虹色の剣に対して悪鬼は禍々しい剣の横薙ぎでその一撃を粉砕しようと試みる。しかし悪鬼の予想に反して剣は砕け散り、そのまま全身で虹色の刃を受けることとなった。


 アルヴァリスが剣を振り抜き、着地と同時に虹色の刃が地面をもえぐる。


 一撃を受け棒立ちになっている悪鬼には、なぜか切断面は見受けられない。


「「すまっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」」


 これで終わりだと思った瞬間、極限まで燃えた男達の叫び声が聞こえ、アルヴァリスが悪鬼の横をすり抜ける。すれ違いざまに横なぎの一撃を入れ、再度剣を振りぬいたところでようやくアルヴァリスの動きは止まった。


 縦からの一撃と横なぎの一撃。十文字に攻撃を受けた悪鬼はここでようやく切断面から虹色の炎を上げ……まもなく激しい爆音と共に爆発四散した。


 光り輝く粒子と月明かりで照らされるアルヴァリスの顔。それが悪鬼の爆発によって一瞬暗く陰るが、次第にその輝きを取り戻していった。






「やったデス! あのヤベー奴をやっつけたデス!」


「はい、先生さん! ヒロさんとユウさんの勝利です!」


 スワンのブリッジで成り行きを見守るしかなかった二人がお互いの手をつなぎながらぴょいぴょいと飛び跳ねている。


「やったなユウ君」


「ええ、どうやら敵のパイロットも無事なようです」


 振り返ったアルヴァリスのモニターは爆発地点で元の姿に戻っている隊長機を映し出していた。あの悪鬼の姿はまるで幻のように掻き消えていたのだった。


「マナ理力は悪しき力を絶つ。彼は悪しき力を失い善人に戻ったのだ……」


「そうか……マナ理力って、そんなすごい力だったんですね!」


「いや、思いついたことを言っただけ……調子に乗ってごめん。どうしても決め台詞が必要かと思って」


「あはは、そんなことだろうと思ってましたよ」


「ふふふ、ユウ君も言うようになったな」


 辺りに二人の笑い声が響いていた。


(途中からわしだけのけ者じゃったんじゃが……)


 ヒロの背中に張り付いていたファルナは蚊帳の外であったことに不満だったが、まあたまにはいいじゃろと思い、この後貢がれるであろう飴玉の数を上乗せしてもらおうと思うのであった。


 こうして、真夜中の決戦はホワイトスワンと魔法障壁の勝利に終わったのだ。















――――――――――――――――――――













「お疲れ様です、ヒロさん!」


 ユウは急いでアルヴァリスから降ろしたヒロ達の下へと駆け付ける。夜の冷えた空気が戦闘で火照った身体に気持ちいい。いつの間にか空は雲が晴れ、月といくつもの星が煌々と照っていた。


「ふへぇ……生身でロボットとの戦闘なんて……もう二度としないぞ!」


「そんなこと言って、おぬしはそこら辺で叫びながら右往左往しとっただけなのじゃ……とはいえ、魔法障壁管理者としては良くやったのじゃ。ほめてやるのじゃ」


 ヒロは戦闘で疲れてしまったのか、その場に座り込んでしまった。ファルナもマナは補充できたものの、精神的な疲れからかヒロから離れて地面へ大の字になってしまう。あちこちに維持していた魔法障壁も今ではすっかり消えてしまっていた。


「さすがはヒロさんです! カッコよかったですよ!」


「ふむ、私も少しは見直してやってもいいデス」


「え、そう? ベルーナと先生さんにそう言われたら、まだまだ頑張れちゃうぜ!」


 と、そこへホワイトスワンで待っていたはずのベルーナと先生もやって来る。可愛い女の子に褒められてしまい、疲労もあってかヒロの顔は緩みまくってしまった。


「もう、オジサマ。だらしない顔ですよ……イタタ」


 恭子もマナで生成した大剣を消しつつヒロの下へとやって来る。彼女は悪鬼にやられた傷が痛むのか、少しばかり険しい顔をしている。ブレザーの学生服も所々傷んでしまっているが、それでも普段通りに振る舞えるくらいには回復したのだろう。


「なぁ、ユウ君。これで俺たちの勝ちだよな?」


「ええ。でも撤退しただけなので、体勢を立て直したらもう一度やってくるかもしれません。その前に早くここから離れましょう」


「んーたしかに。また襲われたら嫌だしなぁ…………ん?」





『ザザ…………接続、安定。魔法障壁管理権限を有する人物を特定』





「その声は……魔法障壁さん!」


 ヒロの頭の中に聞こえてきた声は懐かしの魔法障壁さん。相変わらず事務的な対応だが、こういう時には妙に心強い。


「というか、今までなにしてたの!? 俺凄い大変だったんだけど!?」


『質問の意味が理解できません。サポートセンターに接続しますか?』


「サポセンあるの!?」


「あ、あのヒロさん……?」


 恐る恐る声をかけるユウ。その隣で先生はかなりアブナイ人を見る目つきをしている。


「あっ、ユウ君、先生さん! 変な目で見ないでくれ! 俺は今、魔法障壁さんと会話してただけなんだ、決して頭を強く打ったり変なクスリをキメたり妄想癖があるわけじゃあないんだぞ!」


「あっ、はい」


「ヤベー奴はみんなそう言うデス」


「信じてよぉ! そうだ、魔法障壁さんの音声を外部に」


『コマンドエラー。現在強制帰還シークエンス準備中のため各種コマンドは受け付けられません。……空間座標固定。移動マーカー設定:四体。各種パラメータ設定開始…………』


「えっ!? 帰還!? みんな、これから元の世界に戻るって魔法障壁さんが!」


「なんじゃと?!」


「良かった、私達帰れるんですね!」


「あ、そこのアナタ(ユウ)、日本人ですよね!? もしかしてアナタも勇者なのでは? ……あ、それと出来れば私は日本に帰り」


『それでは空間を接続します。今すぐに対ショック、対閃光防御、ついでにありとあらゆる防御姿勢を取って下さい』


「え、あ、ちょっ……!」


 ヒロが何かを言い終わる前に、彼らの身体がまばゆく光り出した。辺りは一瞬にして輝く粒子で満たされてしまう。


「な、なんデスか、この現象は?!」


「わっ! ヒ、ヒロさん!?」


「ユウ君! もう時間がないから一言だけ! 色々と助かった、ありがとう!」


「こちらこそありがとうございました! そっちに戻ってもお元気で!」


 激しく煌めく光の奔流のなか、ヒロの笑った顔が見えた気がした。






 ユウと先生があまりの眩しさに目を閉じたのと同時に、ヒロ達の身体は消えるように見えなくなる。そして光の粒子は次第に消えていき、後にはユウたちが取り残されただけだった。


「ユウ、先生ー! あの光はなんだったの? あれ、あの人たちは?」


 レフィオーネがボロボロになりながらもアルヴァリスの近くにやって来て操縦席のハッチを開けてクレアが叫ぶ。幸い、機体の損傷は大きいものの、なんとか無事らしい。


 ユウは何もない場所を見つめつつ、静かにクレアの方へと振り返った。


「ヒロさんたちは帰ったよ。元の世界に」


「まったく、人騒がせなヤツらデス」


「えっ?! なんなのあの人たち、急に現れたり帰ったり。まぁいいわ、さっさとここを離れるわよ」


 そう言うとクレアは頭を引っ込める。ユウはもう一度、ヒロ達がいたところを見やり、そしてアルヴァリスの方へと走り出した。そして先生を機体の手のひらに乗せて立ち上がる。





 ユウと同じ日本から異世界に転生したというヒロ。どことなく頼りない雰囲気だったが、ユウにとっては同郷の人間ということもあって妙に安心感を憶えていた。


(もう少し、ゆっくり話してみたかったかな……)


 月夜の下、ユウは少しだけ故郷を思い出す。しかし今は感傷に浸る時ではない。


 アルヴァリスがホワイトスワンに帰艦するとけたたましいエンジン音を響かせて走り出す。ユウたちは連合軍と帝国軍の戦争を終わらせるために、次の戦場へと向かうのであった。
















――――――――――――――――――――














『空間接続終了。ぶっつけ本番にしては特にエラーもありませんでした。お疲れ様です』


 王都ファルナジーンの隅っこ。ヒロと恭子が戦闘を繰り広げていたあの草原に突如、光の玉が宙に出現した。


 その光の玉はゆっくりと小さくなっていき、そこから何かが落ちてきた。


「いてっ!」


 落ちてきたのはヒロだった。落下の姿勢が悪かったのか地面に腰を思い切り打ち付けてしまい、苦悶の表情をしている。


「きゃっ!?」


「のじゃぁ!?」


 と、続けざまにベルーナとファルナも同様に落下してくる。もちろん、痛みで顔が歪んでいるヒロの上に。


「ぐぎゃあ?!」


「あわわわ、大丈夫ですかヒロさん?!」


「おぉ、どうやら無事に戻れたようじゃの!」


「お、俺はもう駄目かもしれない……ベルーナに膝枕をしてもらいたかっただけの人生だった……がくり」


「キャー!? ヒロさん、しっかりして下さいー!」


「まったく、オジサマだらしないです。ほら、起きてください」


 白目を剥いているヒロを思い切り揺さぶっているベルーナの後ろへ、ストっと華麗に着地するのは恭子だった。一度は戦闘不能になったものの、若いだけあって体力は既に回復しつつあるらしい。


 そして仰向けになっているヒロに近づき襟首を持つと、その頬を平手打ちした。


「いだっ、痛いよ! もっとやさしくですね!」


「良かった、生きてたんですねヒロさん!」


「冗談はそれくらいにしてください。それにしても疲れました……なので(わたくし)はそろそろ帰ります。また来ますので、その時には今度こそ私をちゃんと日本に帰してくださいね、オジサマ」


「いてて……いや、今回のはイレギュラーみたいなもんだし、自由に異世界転移は出来ないよ……って、もういないのかよ!」


 ヒロがなんとか身体を起こしているあいだに恭子は既に立ち去っていた。嵐のように現れ、嵐のように消える。それが恭子という女の子なのだ。


「それにしても……凄い体験だったなぁ。理力に理力甲冑か……それに合体攻撃! 燃える展開!」


「うむ。なかなか面白い世界じゃった」


「私、まだ心臓がドキドキしてます!」


「でもやっぱり俺はこっちのほうが良いな……」


 ヒロは遠くに見えるファルナジーンの王城を見てポツリと呟く。ベルーナとファルナもそれに同意しているようだ。


「あっ、ヒロさん、ファルナ様! はやく魔法障壁管理部に戻りましょう! 襲ってくるのは恭子ちゃんだけじゃありませんよ!」


 ベルーナは勢いよく立ち上がり息まいている。魔法障壁管理部とは名ばかりで、職員はヒロとベルーナの二人きり、ファルナは手伝ってはくれるが基本的に仕事には役に立たないので、人手は足りないのだ。


「よし、戻るか!」


「うむ、王国の守りはわしらにかかっておるしの!」





 ファルナジーン王国魔法障壁管理部。そこには異世界からやって来たという勇者ヒロが王国守護の要である魔法障壁を管理運営している。人手も予算も足りない職場だが、それでもヒロはベルーナやファルナ、他にも彼を助けてくれる人々の為に奮闘していく。


(青い空だ……地球もこの世界も、ユウ君のいる世界となんら変わりない)


 青い空の下には沢山の人が住んでいて、笑ったり喜んだりと幸せな日常を過ごしている。このファルナジーン王国も、ユウたちのいる世界も、元の世界の日本だって、それは変わらないはずだ。


 新たな人生をこの異世界で送るヒロの前には多くの困難が待ち構えているのだろう。それと同様に、ユウも沢山の出来事に苦しめられるのかもしれない。だがヒロには、ユウなら大丈夫だろうという確信があった。短い間ではあったが、ユウにも頼れる仲間がおり、彼らの絆の強さを感じ取ったのだから。






 俺は、いや俺達は、地味ながらもみんなが安心して暮らせるようにとこの仕事をしているのだ。ヒロはその思いを新たに、ベルーナたちがいる方へと走り出す。


 俺は大阪ヒロ(35)。文系大学出身の異世界転生者でお城の魔法障壁を管理しています!




 おわり


コラボ小説をお読み頂きありがとうございます!


こちらはコラボ先である「ぶんおま」作者のセレンUKさんが書いてくれたアルヴァリス二次小説です。ぜひお読みください!


https://ncode.syosetu.com/n1694fp/

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