あなたが今日のお夕飯です
新しいのです
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暗くて深ーい森の中、不気味で怖ーい森の中。
私は今そんな森の中をふわふわふらふら迷走している。簡単に言えば迷子、難しく言えば……迷子の難しいのってなんだろう?
日も落ち月が空に登り出す頃、何処からかいい匂いが漂ってきた。
お腹がクーと音を鳴らす。そろそろ手持ちのご飯が無くなりそうで節約中なのだ。
私はクンクンと鼻を鳴らして匂いの元を探した。
「クンクン…クンクン……、こっち!」
私は匂いの元がある方へ向かって急いで飛んでいく。
お腹が空いてたのもあるけど、他にもそこに向かおうとする誰かの匂いがしたのだ。もしかしたら横取りするつもりなのかもしれない。
他の人にとられてなるものか!と翼に力を込めるとまたお腹がクーと鳴いた。今日はお昼ご飯も食べてないのだ。
「それは私のご飯なんだからね!」
美味しいご飯にありつく為に、他の人に横取りされない為に気合いを入れてバサバサと翼をはためかせて飛んでいく。
とってもとってもとーっても!美味しそうな血の匂いのする場所を目指して。
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「ハァッ…ハァッ…、……このままここで死ぬ訳には……」
木陰に身を隠し息を整える。
身に纏う鎧には多くの傷あり返り血で汚れてしまっているがこの程度は問題にならない。
「くっ…、これではもう剣を振ることは……」
それよりも問題なのはこの右腕だ。
襲撃者によって肘から下をバッサリと切り落とされてしまったのだ。
その際切られた腕から溢れた血で目潰しして何とか逃げる事が出来たのだが……。
ここをなんとか乗り切って無事国に戻ることが出来れば治せる可能性も…、いや、そもそも戻れるかどうかも分からない。
そんな不安な考えを捨て去るように頭をふる。
私にはやらなくてはならない事があるのだから。
「んっ…くぅっ……!」
痛みと声を我慢して切断部より少し上の部分を左手と口を使って解いた髪紐を使いキツく縛り上げる。
これで最低限止血は出来ただろう…、放っておいたら出血多量で死んでいただろうし…。
ただ肘から先を回収出来なかったのは悔やまれる。逃げる際投げつけなければ良かったなと今は思う。
「そろそろ動かなくてはな…」
そう呟き起き上がろうとした瞬間目の前にナイフが飛んできた。
それを頭を傾ける事で辛うじて避け、続けて飛んできたナイフは腰に差していた予備の短剣で切り払った。
「くそっ!隠れてないで出てこい!」
すると1つの草むらからワラワラと出てくるわ出てくるわ、その数なんと20名!
あまりの光景に「お前らどうやってそこに隠れてた!?」と思わずツッコンでしまった。
「と、とにかく!私もタダで殺られるつもりは無い!せめて貴様ら全員道連れにして「ちょっとまったー!」く…れる?」
私の覚悟を遮る様に誰かが声を上げた。目前の襲撃者達も内数名が声の主を探している、つまりコイツらではないという事か。なら何処から。
「そこの片腕無い人に死なれると私のお夕飯事情的に困るのですよ。だからバトルは私がお夕飯を済ませてからにしてくれたらありがたいなぁと思ってたりするんですけど…」
「貴様は何者だ!」
私と襲撃者達が一斉に声のした方に武器を構えた。
「うぇっ!?にゃ 、にゃんですか!?やるって言うなら受けて立ちますよ!?」
そこに居たのは大人数の視線と武器にビックリして変な戦闘ポーズをとった、悪魔のような羽根を持つ血塗れた少女だった。
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私は美味しそうな血の匂いがする所を目指して飛んでいた。
しばらくふわふわ飛んでいると血の匂いが2つに別れていた。
「どちらにしようかな、おかあさんの、い う と お り。 こっち!」
交互に匂いのする方を指差し最後に当たった方に行く事を決めそちらに向かってふわふわ飛んでいった。
更にしばらく飛んでいくと黒づくめの人が沢山死んでいる場所に辿り着いた。
「あれー?」
場所間違えたかな?と思いもう一度匂いを嗅ぐと沢山の死体の中に私が探していた匂いを見つけた。
(もしかしていい匂いの人は死んじゃったのかな?)
とりあえず探す邪魔になるので死体は適当に地面に穴を開けてそこに入れていく。
すると死体の山の中から血塗れになった腕が出てきた。
他の死体は全て両腕があったのでもしかしたら?とそれの匂いを嗅いでみると私が探していた匂いの人と同じ匂いがした。
「と、いうことは…、当たりはあっち!」
私は見つけた腕を鞄にしまいもう一方の匂いのする方へ勢いよく飛び立った。
それから更にしばらくしてようやく美味しい匂いの人を見つけた。
その人はさっき片付けたのと同じ黒づくめの人達に囲まれていて、有り体に言えば絶体絶命?明らか敵対してるみたいだし助けた方がいい?
とか考えてる間に黒づくめの人達と美味しい匂いの人が戦いそうな雰囲気になってきた!
(死んだら味が落ちちゃう!どうしよどうしよ!?と、とにかく!)
「と、とにかく!私もタダで殺られるつもりは無い!せめて貴様ら全員道連れにして「ちょっとまったー!」く…れる?」
(大きい声疲れるぅ…、でも戦闘止めれたぁ…。あとは…)
「そこの片腕無い人に死なれると私のお夕飯事情的に困るのです。だからバトルは私がお夕飯を済ませてからにしてくれたらありがたいなぁと思ってたりするんですけど…」
「貴様は何者だ!」
「うぇっ!?にゃ 、にゃんですか!?やるって言うなら受けて立ちますよ!?」
(話しかけただけなのにいきなり武器向けられた!なんでー!?)
「貴様は何者かと聞いている!」
(え!?あ、えーと、こういう時は確か…)
「わ、我が名はアリア…! アリア・ヴァンピール…! 半魔半聖の吸血鬼、である!」
石仮面を装備してそうな吸血鬼のポーズでアリアは高らかに自己紹介をした。
(うん!練習の通りできた!)
アリアは心の中でガッツポーズをした。
そして――
「吸血鬼だって!?」
美味しい匂いの人はアリアの正体に驚愕し剣を落とし
「全員即座に撤退行動に移れ!何としても情報を持ち帰るんだ!」
黒づくめの人達は言うが早いかシュババッと何処かへ逃げて行ってしまった。
「え?あれ?」
自己紹介をしたら驚かれて逃げられる、アリアとしてもそんな経験は初めてでどうすればいいか困惑していた。
それから少し考えて――
「あなたが今日のお夕飯です。だから血をください、あと落し物です?」
私はその場に座り込んでしまっていた美味しい匂いの人に話しかけながら落し物?の腕を手渡したのだった。