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アンルミナスの灯朧  作者: 暁雪
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[序章]

初めてのハイファンタジーなので、もしかしたら説明不足や矛盾があるかもしれません((殴

アドバイス募集中です!



ーーー全ての子供は、誕生と同時に「自分は親に愛されて当然である。」という信念を強く抱いている。

親から愛され、そして大人になるまでの間、無条件に護られるに決まってる····ってね。


しかし、実際はそうもいかない。

まぁ、大抵の子供は親からそれなりの愛を受け、護られながら成長していくのだろう。

しかし、意外とそうでない場合も珍しくない。

親から愛されず、護られるどころか害される子供だってそこら中に居るのだ。


例えば僕····『シヴァ・クレーヴェル』とかね。


僕の父さんは、僕が生まれる少し前に豹変し、母に暴力を振るうようになった。

父さんによる暴力の所為せいで母さんは心を病み、僕が4歳になる頃には、よく僕に暴言を吐くようになった。

「お前がお腹に宿った所為だ」····と。

けれども、両親以外に頼る者の居ない僕は、どうしても2人の事を嫌いになる事が出来なかった。


そんな或る日。

僕を罵るだけでは、父さんに耐えきれなかった母さんは、此の世を去った。

余りにも、突然に。

あっけなく。



母さんの亡骸を見た父さんは、泣いて悲しむと思いきや母さんの遺体に向かって罵詈雑言を浴びせた。

力無く横たわる母さんの遺体を踏む父さんの顔は、僕は恐らく忘れる事が出来ないだろう。


其処から、唯でさえ酷かった日常が、よりくらいモノになった。

母さんに似た白い髪と淡い金色の目を持つ僕は、唯視界に入っているだけで父さんの逆鱗に触れ、暴力は日常茶飯事。

食事にも満足にありつけない。

そんな暗くて寒い日々が長く年続いた。


····そして、母さんが死んでから3年経った或る日。

僕は父さんに腕を掴まれて馬車に投げ入れられ、何所どこかへ連れて行かれた。

そして····投げ捨てられた。

しかも、何所かも分からぬ山の中に。

驚いて父さんを見ると、

「もう此れ以上穀潰しを育てる気は無い!」

と1言吐き捨てて去って行った。

後を追ったが、子供の足で馬車に追いつけるワケがない。

栄養不足な僕はすぐに息が上がり、その場に倒れ込んでしまった。

「····此れからどうしよう」

7年間という短い人生で、山に入るなんて此れが初めてで、僕は唯々ひしめき合う緑に愕然とした。

風は冷たく、身体からだの体温を容赦無く奪ってゆく。

栄養不足な身体に、薄い衣服。

勿論もちろん食糧なんてある筈がないし、調達する事も出来ない。

「····寒」

ーーそんななかで、僕はいったい、どうすればいいのだろうか?


              ✠


鬱蒼とした木々。

冷たい風。

そして、痣だらけの細い身体からだ

目に入るモノ全てが、僕に『棄てられた』という現実を叩き付けていた。

····何所どこまでも緑だけが拡がる森の中で独りきり。

食糧どころか靴も無い。

そんな状態で、早くも夜になった。

周りは月明かりによって怪しいシルエットを型取り、昼間でも十分に気温の低かった周囲は、夜になった所為で震える程に冷え込んでいる。

そんな中に、そんな中に····独りきり。

此処が何所かは分からないけれど、相当山の奥なのは分かる。

恐らく人は絶対に来ないだろうし、例え来たとしても僕なんかに構わないだろう。

もしかしたら··否、もしかしたらじゃなくて、僕は。

「···死ぬ、のかな。」

ーー死。

其の言葉を自覚した途端、胸の奥が強く痛んだ。

痛みを自覚した途端、今度は目の奥から、出なくなっていた筈の涙が零れて頬を濡らした。

零れ落ちた涙が、夜風にあたって更に僕の体温を奪う。

「····うぅ、ぅ」

死にたくない。

こんなにも暗い、何も無い人生なんて嫌だ。

虚しい、辛い、苦しい。

僕が何をしたというのだ。

我儘わがままを言った記憶もないし、周りに大きな迷惑をかけた記憶もない。

なのにどうして、暴力を受けたうえで棄てられなければいけないんだろう···?

どうして僕だけがこんな目に遭うのだろう?

どうして、誰も助けてくれないんだろう?

どうして皆、見て見ぬフリをするのだろう?

誰か、誰か····

「助、けてよ····」

僕は、意味も無く掴む者の居ない空中へと手を伸ばした。

誰でもいい。

此の暗い森から、僕を助けて···と。

涙で視界をぼやかしながら、ある筈の無い『奇跡』という妄想にすがった。

しかし····というか矢張やっぱり、伸ばした手を掴む者などらず、擦り切れた手のひらは空をき·····

「····お前、独りか?」

···らなかった。

「!?」

な、何だ?

思わず、涙でぐちゃぐちゃになった目を見開いた。

「まぁ、こんな所にそんな格好で居るって事は、そうだよな····」

「!??」

ぇ?え、何??

来るはずの無い返事と、掴まれない筈の手に感じた温もりに、僕は大きく困惑した。

誰、だ···此の人?

声で男だという事は分かるが、暗くて顔が見えない。

「ん?···あぁ、明かりだな。」

そんな僕の思考を察してか、目の前の人物は指先に光を灯した。

魔法···!

しかも無詠唱で。

此の人はいったい?

「···眩しくないか?」

「····!!」

明るくなった事で、今迄いままで暗くて見えなかった彼の容姿が、はっきりと目に映った。

目の前の人物は···若い男だった。

恐らく此の国のモノではない鮮やかな本紫の瞳に、1束だけが長く伸びて纏められた滅紫けしむらさきの髪。

ゴツゴツとしてない、しなやかな指先。

そして、今迄見たこともない···柔らかな表情。

彼の全てが初めてで、全身に強い衝撃が走る。

こんな、こんな大人がるんだ····

「····大丈夫か?いや、大丈夫じゃないな。酷い痣だ」

「·····」

でも、此の人はいったい何者なんだろう?

こんな時間に、しかも誰も来ないような山奥に、どうして人が居るんだろう?

旅人···ってヤツかな?

でも、こんなにも暗い中歩き回る人なんて居ないだろう。

「····頭は打ってないか?此れ、指先何本に見える?」

「····さ、3本。」

「よし、頭は打ってないみたいだな。」

困惑する僕を他所よそに、青年は次々と僕に言葉を投げかける。

其の声は低く、とても穏やかだ。

いや、それよりホントに誰だ此の人。

「···ん?誰だお前って?」

「·····」

あ、また思考を読まれた。

まぁ、そんな事言えないし、悟ってくれるのは有り難い。

「····えーと、何だ。俺の名前は『ローゼル・シーカノクト』。元『アクマゾ王国』のⅡ型回復魔導師(ウォー・ヒーラー)だ。」

「!」

回復魔術師ヒーラー····!

しかも国の。

其れは、相当凄い人な筈だ。

詳しくは知らないが、父さんが「チッ、お国遣えの奴らはいいよなぁ」とか言ってたし、多分国の上の方に居た人なんだろう。

さっきだって無詠唱で魔法使ってたし。

···そんな人が、何故此処に?

っていうか、何で僕なんかに声を掛けたんだろう?

「····だから、元だって。そんな顔すんなよ。」

いやいや、するなと言う方が無理だろう。

彼は少し不満そうだが。

しかし、少しすると「まぁいいか」と呟いて、話を切り替える。

「···ところで、お前家は?迷子、では無いよな?」

「····家、無い。棄てられた」

ーー口に出すだけで、苦しくなる話に。

今迄少しだけ温まっていた心が、一気に温度を失う。

過ぎ去った寂しさが、逆流してくる。

目の前に人が居るのにも関わらず、世界に自分独りしか居ない様な絶望感が僕の脳裏を覆う。


そんな僕に、目の前の青年···ローゼル・シーカノクトは、救いの一言を口にした。

僕の暗い日々を変える、暖かな言葉を。



「ーーーじゃあ、ならウチに来い。特に何もないとこだが、こんな所に独りで居るよりかは良いはずだ。」


             ✠


此の言葉をキッカケに、僕の人生は変わった。

周囲からの嘲笑は微笑みに変わり、

暴力は挨拶に変わった。 

ご飯もちゃんと食べられて、周りの人達は優しい。


僕が連れて来られたのは、日陰者の村。

社会から弾かれた人たちが流されて、20数年程前に作られた村だ。

其処で僕は、ローゼルから魔法や医術を学んで13歳になった。




 ーーー此れは、輝かざる者····『日陰者アンルミナス』の記録だ。










・アクマゾ王国:主人公シヴァの出身国。表面上は栄えているが、貧富の差が激しく裏で禁術の実験を行っているなど、色々と闇深い国。明るい茶髪〜金髪の人が多い。

・Ⅱ型回復魔導師ウォー・ヒーラー:アクマゾ王国に遣える回復魔導師の内、戦場での回復を行う魔導師。

一応攻撃魔法も使えるが、狙われやすく脆弱な為死亡率が高い。

目元を覆う白い布の付いた額鎧アーメットがと、神父のような濃紺の服が特徴。

額鎧アーメット:忍びの額あての洋風バージョンな額を守る防具。カチューシャのように着けるタイプが多い。

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