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プロローグ

久しぶりに書きました。

登場人物に違和感が出ていたらすいません。


連載ということですこし短めですー

 正午を過ぎた日中、活気に満ちている王都中に鐘の音が鳴り響く。

 同時にひっそりと息を潜めていた学園中が賑やかに沸き立ち始めた。

 授業の終了を知らせる鐘の音。

 しかし今日、この鐘の音だけは学生たちにとって特別な意味を持っていた。



 「「「「「夏休みだーー!!」」」」」



 学園から聞こえてくる学生たちの歓喜の叫び。

 今この時だけは貴族も庶民も関係なく騒ぎ合っている。


 ——夏休み。


 それはこのセプトン王国の学園に古くから伝わる休暇の事である。

 今から2ヶ月、学園は休校になり学生にはそれぞれ自由な時間が与えられのだ。

 夏休みという言葉の意味自体は理解をしていない生徒たち、しかし学園が休校になるという事実だけが彼らの気分を高揚させていた。


 休みを利用して故郷の町に帰る者、冒険者として稼ぎに出かける者、自分の領地に帰りバカンスを楽しむ者。


 夏休みの利用の仕方は様々である。

 学生である生徒たちが仲良くお互いにそれぞれの夏休みの予定を語り合う。

 そんな笑顔と談笑の鳴りやまない学園。

 しかしそんな中、不機嫌そうに学園を出ていく生徒が一人いた。


 着崩れた服や整っていない髪、とてもではないが身嗜みはいいとは言えない。

 何も知らない人がその生徒を見れば庶民と勘違いしてしまうだろう。

 しかし服に使われた庶民では手に入らないような高価な布や、その動作から微かにだが見てとれる気品が彼が貴族であることを示していた。

 そんな生徒は不機嫌な様子を隠すこともなく、貴族街に建つ一際豪華な建物に入っていく。

 建物の警備をしていた衛兵が、その生徒を確認するだけで通す様子からもやはり貴族で間違い無いことが伺えた。


 そんな不機嫌な彼は、迷いそうになるほどの広大な建物内を一切の迷いなく歩き続ける。

 すでに歩きなれ、覚えてしまった通路だ。道に迷わなくて当然だろう。

 上へと続く階段を上っては下に降り、同じ道を何度も通りようやく彼は一つの壁の前で立ち止まる。

 その瞬間だった。


 何の兆候もなく目の前にあった壁が消え、新たな通路が現れた。


 

 「……本当に面倒くさいな」


 

 彼はため息交じりの愚痴を吐き出しながら、新たに現れた通路を歩きだす。

 突き当りに見えるのは大きく重苦しい扉、彼は迷うことなく乱雑にノックする。



 「入れ」



 扉の奥から聞こえてきたのは渋く大きな声、それでいてどこか威厳を感じさせる声だ。

 そんな声に従うように部屋へと入り、彼は遠慮をせずに不機嫌な様子で口を開く。

  


 「お久しぶりです、アドラグル卿」


 

 できる限りの不満と不機嫌さを込めた声。

 しかし部屋の奥でくつろぐ一人の男性、アドラグル・オーグネス侯爵は気にした様子もなく豪快に笑う。



 「はっはっは! いつになく不機嫌そうじゃないか、ゼオン」


 「夏休みが始まると同時に呼び出されれば不機嫌にもなりますよ」



 彼……ゼオン・アルケインことオレは、アドラグル卿が顎で指す椅子に腰を下ろしながら愚痴たれる。

 ただでさえアドラグル卿の依頼は厄介ごとが多い、今までも時間がかかる依頼ばかりだった。

 そして今回の夏休みの始まりと同時に呼び出されるほどの依頼。

 すでに夏休みが潰れるのは目に見えている。


 (はぁ、久しぶりにアリシアとバカンスを楽しめるかとおもったんだけどなぁ)


 テンションは最悪だ、しかし宰相の依頼を無視するわけにもいかない。

 オレは早速話題を切り出す。



 「それでアドラグル卿、依頼は何ですか?」



 せめてもの反抗を込めた不機嫌な声で尋ねる。



 「そう不機嫌そうな顔をするな。

  だがちょうどいい、お前に頼みたい依頼もあまり猶予があるわけでは無いからな」


 「猶予ですか……」



 (確定だな)


 今回の依頼はおそらく今まで一番厄介だ。

 オレは説明に入ったアドラグル卿の声を耳に、姿勢を正す。



 「ゼオン、お前は『神魔の巣窟(ティアマト)』を知っているな?」


 「もちろんです。セプトン王国で唯一の未踏破ダンジョンですからね」



 神魔の巣窟、A級に分類される高難易度ダンジョン。

 この世界に名前のみが残る神『ティアマト』の名を冠するように、出現するモンスターが最低でも【上級】であり、未だに全てのモンスターを確認できないほどの多岐の種類のモンスターが生息している。

 そして何よりその名を轟かせている理由は、やはり未踏破であることだ。

 この世界において未踏破のダンジョンは両手で数えられるほどしかない。


 かつて異界から召喚された7人の勇者、彼らが振るったとされる神器が収められている7つのダンジョン『封滅神器の継承(アテナ)』。


 かつての世界で初めて確認されたジョブである【ダンジョンマスター】に就いた大犯罪者、フォーレン・ダイダロスが創ったダンジョン『始原の迷宮(クノックス)


 かつての魔王城が長年の魔力の蓄積によって変質した城塞型ダンジョン『冥界の悪魔城(パンデモニウム)


 そして上記の9つ以外の数少ない未踏破ダンジョンのうちの一つが『神魔の巣窟』である。

 


 「その『神魔の巣窟』だが近頃異変が起こっている。お前にはこの調査を行ってもらいたい」


 「調査と言われましても……オレには何もできませんよ。

  公爵の私軍か、【死の王】の不死の軍勢で調査した方がよいのでは?

  それにダンジョン改変期なら冒険者だけでなんとかなると思いますが……」



 ダンジョンはダンジョンコアに魔力を蓄積すると、新たな階層やモンスターを生み出す時がある。

 いわゆるダンジョンにおける成長期、それこそが改変期だ。

 ダンジョンの改変に乗じて、時折モンスターが地上に出てくるが逆にそれぐらいしか被害は無い。

 今回の『神魔の巣窟』も改変期ならば冒険者だけで対応することが出来るはずだ。


 しかしアドラグル卿はオレの言葉を聞き、困ったように眉を寄せる。

 そんな様子にオレは目を少し見開いた。

 常に豪快に笑っているこの人がこのような様子を見せるのは珍しい、先ほどの猶予が無いという言葉といい今回の依頼は何かあるようだ。



 「残念だが俺の私軍は動かすことが出来ん。【死の王】も一人で国防を担っている以上、動かすことは隙を作ることになる。

  それにダンジョン改変期だが……おそらく違う」



 その声はいつもとは裏腹に掠れて小さい。

 オレはそんなアドラグル卿の言葉の続きを待つ。



 「内密にされている事だが、『神魔の巣窟』を起点とした周辺で謎の病が流行している」


 「……」


 「今は病に掛かった人の数も少ないが、治す手立ても見つかっていない。

  病の侵攻は遅いようだがこのままでは……」


 「……死人が出ると」



 予想以上の重たい話に顔を覆いため息を吐く。

 なるほど、アドラグル卿が動くのも理解できる。

 しかし……


 (なんでこんな重大な問題をオレに依頼するんだ)


 学園の生徒であるオレの権力などたかが知れている、それこそ学園に通う腕利きの冒険者の方が役に立つ。


 

 「アドラグル卿、申し訳ありませんが今回の依頼は「ああ、ついでに先ほども言ったがこの話は内密にされているものだ。一度知られたとなると混乱を避けるためにどこかに軟禁させてもらう事になる」……」


 

 (狸親父め!)


 意地の悪い顔でこちらを見て笑うアドラグル卿を睨みつける。

 本当にこの人のこういうところが苦手だ。

 いつも和やかなアリシアの親かと疑わしくなるほどだ。

 そのうえ、やると言った事は必ずやる。軟禁すると言ったらほんとに実行するだろう。


 依頼を断ったら辺境の地で軟禁。

 受けても夏休み中に終わるかもわからない依頼に追われることになる、結局のところ聞いてしまった時点で逃げ場は無かったのだろう。

 


 「ついでに言わせてもらうと、断った場合はアリシアに会えないと思え」



 悩むオレに追い打ちの様に言葉を続ける。

 本当に食えない人だ。



 「……受ける事にしますよ」


 「そうかそうか! よかった断られたらどうしようかと思ったぞ」



 微塵も断る事を予想してなかいなかった。

 そんな様子が所々から見てとれる、そんな様子にオレは再び大きくため息を吐く。



 「ですが、調査に必要な資金やオーグネス侯爵家の名前をお借りしますよ?

  男爵家の名前では冒険者ギルドは動かせませんので」


 「ああ、お前の思うように好きに使え。

  だがその代わりにどんな手を使っても解決するように頼むぞ」


 「……依頼内容は調査という事をお忘れなく」


 「はっはっは! 期待しているよ」


 

 建物内にアドラグル卿の笑い声が響く中、ゼオン・アルケインの夏休みは進み始めた。


 一つの伝説と共に。

 

読んでいただきありがとうございます!


未熟な文章なので色々ご指摘いただけると嬉しいです。


これからは三日に一回のペースで投稿していきたいと考えています。

もしよかったら読んでいただけたら幸いです!

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