第I章女王とナイト 9話・変化
「おっ、目が覚めたか。わらわは信じていたぞ。」
シードは医務室に寝ているサーのベットに座っていた。
「シード様、俺は?」
「初めての契約は誰でも倒れてしまう。
何せ、躯の内には他人の魂が半分程入ってきておるんじゃ。
しかも躯が変わる程の魂がの。」
シードはサーの姿を見ながら不適な笑みを浮かべていた。
サーは躯の異変に言われて初めて気付き跳び起きた。
「な、なんだ?この肌は!」
サーの肌は色白では済まされないくらいに真っ白に染まっていた。
「サー、それだけじゃないぞ、ほれ。」
シードはそう言いながら鏡を創り見せてやった。
「え、俺の髪が……」
サーの髪は白く長かっただけだが、今はそれが
凍ってしまっている。
「多分、そなたの体から漏れ出る魔力が冷気となり、そのような姿になっているのだろう。
だが、よかったではないか、白髪だとは気付かれにくくなったと思うぞ。」
シードがサーの反応を楽しむように見ているとサーは自分の髪を弄りながら聞く。
「シード様、俺は何日ぐらい寝ていたのですか?」
「ちょうど、一週間じゃな。」
「一週間も!」
自覚がないサーはひどく驚いていた。
「何を言っている、そなた。
初めての契約では、普通十日から二十日は寝たっきりになってしまう。
流石はわらわが認めたナイトなだけはあるの。」
シードは満足そうな笑顔を浮かべていた。
「ところで、俺はいつからナイトとして働けば、よいのですか?」
サーはナイトという言葉で思い出したように聞く。
「そうじゃな、明日からでよいわ。
明日の朝に王宮に来い。その時にそなたのチームになる者達に会わせて、あとはチームに任せるとしよう。」
シードは、考えを廻らせながら何やら計画を立ている。
サーは再び鏡で、変化の様子を見る。
それに気付いたシードは話し出す。
「今回の契約では確かに変化はあったが、“魂”の契約だけでだ。もし“肉”の契約をしたら交換した部分は完璧に今までと違う物に変わってしまう。
一度、契約をしてしまうと体がバランスを求めてしまい契約を他の部分でもしなくてはならなくなる。
……わらわはそなたが変化のことを知っていると思っていたから……」
シードは俯いてしまった。
「別にいいですよ。
どんな姿になっても俺は俺ですから。」
サーは真っ直ぐシードを見ながら言う。
シードは少し照れながら立ち上がり、
「明日の朝に」
とだけ言い残し医務室を後にした。
□ □ □
サーはシードが出て行った後、女に貰った短剣がベットのわきの棚に置かれているのを見つけ、手に取って再びじっくりと柄の装飾を見る。
「この短剣ってどれくらいの切れ味何だろう?」
簡単な疑問に取り付かれたサーは試しに今自分の寝ているベットに突き立てようと鞘を抜き、刺すがベットには一切刺さらなかった。
「あれ?おかしいな。」
サーは素手で短剣の刃を触るが何も切れず、血も出なければ傷一つとして付かない。
「いったい何のための剣なんだ?」
サーは切れない短剣を鞘に戻すと、再び横になり明日のことを考えながら眠りについた。
起きている時と同じ夢を見ながら―――