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トケナイ氷  作者: 朱手
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第I章女王とナイト 8話・契約“魂”二

更新遅れて、読者の皆様御免なさい。

これからもよろしくお願いします。

「うっ、う…ん。」


「目が覚めたか。サーよ。」


 サーが目を開けると、何もない世界にルプスが座っていた。


「ここは何処なんだ?」


「今いる場所に名前はない。そして時間も形も肉体さえも。」


「つまり、俺は今、魂と力だけか。

それで俺は何をすればいいんだ?」


「私にお前の魂の強さを示せ。」


「魂の強さ…?」


「そうだ。

私の魂と入れ代わろうとも押し潰されない強き魂だと証明しろ。」

 言い終わるとルプスの姿が変化し始める。


 ルプスに冷気のたてがみが生え、瞳が銀色の輝きを放ち、額の付近には角の様に尖った氷が尾の付近には刀の様に研がれた氷が浮いている。


「これこそが私の真の姿だ。」

 誇らしげに言い放つと体を揺るわし周りに小さな氷塊を散らかす。


 するとそれが集まり一つの氷の板となり鏡になった。


「この鏡を見ろ。

この鏡にはお前に課せられる試練への道が映し出される。」


 サーはその鏡を覗き込むとしだいに何かが映っていく。




 映ったのは階段だった。



 サーは少し戸惑いながらも、その鏡の階段を登ろうと足を鏡の中に入ようとすると、案の定すんなりと入った。


(ルプスの言ってた試練って、俺丸腰だけど大丈夫なのかな?)などの不安を持ちながらも階段を一段一段登って行く。



 そして、サーは一人の男が立ち待つ部屋に着いた。


「やぁ、君は何故こんなとこに来たんだい?」


「俺はパートナーに魂の強さを見せる為に来ました。」


「あー、それでか。

それは好都合だよ、君。

僕は君のパートナー“ルプス”の過去の主の魂だよ。」


 サーは相手の言う事をいまいち理解出来ず、少し混乱していた。


「まぁ、要するに僕と戦って勝てばいいってだけさ。」



「成る程。

それでは、いかせてもらいます。」


「おっと、忘れてたけど、この部屋では強い想いが無ければ動けないからね。」

 そう男が言いながら、魔力を篭めた拳で殴り掛かって来る。


 サーは避けようとするが、体がうまく動かず

「くはぁッ」


 吹っ飛ばされてしまった。


「あれ?ルプスのパートナーだから強いと思ったけど………

君もしかして弱い?」


 男はサーを弱いと判断して、構えを解いた。


 するとサーはその隙をついてスペルを唱え出す。

「 ―うつるは

     月

    崩すは

     刃

    留めるは

     白

   全てに刃を

    “波紋”―」


 スペルを完璧に唱えるが何も起きない。

「な、なぜ?」

 サーは何が起こったのか全く分からずに自分の掌をまじまじと見て魔力の異変は無いことを確かめる。


「ハッハーハッハハ。

残念だね。

魔法も同じで強い意志無しには意味を成さないのがこの世界!

君はまだルプスのパートナーには早過ぎたみたいだ。

悪いがこれまでだよ。」


 男の右腕全体が今まで以上の魔力に包まれる。


 その右腕を高く振り上げサーに殴りかかった。


 辺りは陥没してしまい、砂煙が立ち込める。




「へぇー、やるねぇ。

君、やれば出来るじゃないか。

見直したよ、あの技から逃げる事ができるなんて。」


 だが、サーの左肩をかすってしまい、そこから血が流れ出ていた。


「やっと、この世界に慣れてきた。

反撃はこれからだ!」

 サーはそういいながら、男の腹に跳び蹴りをかましてやった。


 男はよろめきながら、間合いをとる。




 サーは左肩に右手を当てスペルを唱えだした。

「 ―流れ出る血を

    凍らせ

  我に剣を与えよ

   “創氷の剣(ソウヒノツルギ)”―」


 思いつきで唱えたスペルのおかげでサーは左手の人差し指と中指をくっつけ滴っていた血が段々と凍り付き剣の代わりを手に入れれた。


 スペルがある程度の理に適っていたら発動は可能だ。


「これが俺の最後の魔法だ。」

「僕の本気の一撃に全てを篭めれば砕けない物はない。」


 二人は睨み合う。


「今だ!」

 先に動いたのはサーだった。


 サーは男に切り掛かるが避けられる。


 そして男が右腕を大きく振り上げた瞬間に





 サーは敵の脇腹を貫いていた。




「やるなぁ。

これで僕の魂は解放される。

ルプスによろしく伝えといて、ルプスの主さん―――」


 消えてしまった。

 男はまるで雪が溶けていく様に消えていった。



「サー。よくやったな。」

 いつの間にかサーの後ろに立っていたルプスが話し掛ける。


「それでは、これを受け取れ。」


 ルプスはそう言うと、サーとルプスの体が淡い光に包まれる。




「サー、これが私の魂だ。」

 ルプスの体から銀色に光る魂が出て来た。


 そして、サーの体からは白色に光る魂が出て行った。


 それらはお互いに交わり、魂の一部を交換しあってから戻って行った。


魂の交換が終わると光は止み、ルプスが話し出す。


「私が与えた物は“魂”だ。

そしてもう一つ“氷ノ血ノ剣”(ヒノチノツルギ)だ。

氷ノ血ノ剣は手に魔力を溜めて我が名を唱えれば出てくる。」


 サーは試しに唱えてみる。

「―ルプス―」


 すると、細い諸刃の大剣が現れる。

 鍔は無く、柄も装飾もないという単調な造りだが、サーが握っただけで痛くなる程の冷気と魔力に包まれている。


そんな剣だ。


「次にもといた世界に戻った時には姿が少し変わっているだろう。

だが、サーはサー自身だということ忘れるな。」


「わかったよ。ルプス。

だから早く帰ろ。

これでも無理してるんだよ。」


「むっ、そうかそれでは帰るか。」


 ルプスがそういうとサーは目が見えなくなる程の光に包まれてもといた世界に還っていった。



「今まで解放せずに、最後にこんなことに付き合わせてすまなかったな………。」


 ルプスは消えてしまった魂の欠片が還り終わるまでを見届けてから元の世界へ還っていった。





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