第V章戦前のナイト 8話・頭
一ヶ月以上の放置、本当にごめんなさい。まだまだ続きますので、見捨てずに読んで頂けたら幸です。
なんだろう
暖かい小さな火が目の前にある
? あれ?草原じゃない
剥き出した土に手をつき、イザラは身体を起こし、状況を把握しようとする。
「起きたぞ!」
誰に向けられた言葉かわからないがイザラの耳にも入った。
ゾロゾロと男達は集まって来て、あっと言う間にイザラを囲んでしまった。
「あ、あんた達は、な何よ!」
男の数に怖じけ付いてはいるが、少しの抵抗だけを見せつける。
図体のでかい筋肉ムキムキが一歩前に出る。
イザラはその一歩にビクッと震えるもその男を睨みつける。
「そう恐い顔するなや、ねーちゃん。
俺らは一応あんたの命の恩人だぜ?」
「オイラとガスが助けたんだ、感謝しなよ!!」
小柄な男がいつの間にやら大男の隣でそのガスという名の大男を指をさしながら、立っていた。
「それにしてもよくあの砂漠をそんな格好で渡りきれたな。」
「ねーちゃんは運がいいね!
砂漠を渡りきれただけじゃなく、さらに俺達に助けられて!!」
「? 砂漠って何のことですか?
私は仕方無しにあそこで野宿していただけですよ。」
イザラの言葉によって皆、目が点になる。
その場にいる全員の思考が止まる。
「じゃあ、なんだ?
俺達はただの眠ってる女を連れてきただけ、っていうことか?」
「カ、カ、頭に怒られちゃうよ!!
どうするガス?」
「どうするったってよ、頭が留守の今のうちに………。」
男達は一斉に道を開ける。
「出来れば、早くにお引き取り下さい。」
「は、はい……」
イザラは雰囲気に押されるままに、その洞窟を出て行くことにした。
見送りにあの凸凹コンビが来てくれた。
「こんなとこまで連れて来て悪かったな、ねえちゃん。
俺はガスでコイツはフォートだ。
もう会うこたぁないだろうが、またな。」
「………ガスとフォート。
!
ちょっと親方の名前は?」
イザラは肩を押されて洞窟から出て行く、それに連れ、目の前が真っ白になっていく。
それでもイザラは必至に意識を耳に集中させた。
……スティール・ハンズ…
………
あぁ
やっぱり……か。
□ □ □
「そんな簡単に頭の名前を口にするな!」
「何怒ってるんだよ?
あのねーちゃんはきっと信用できるよ。
何たって、シードの部下だよ、きっと。」
ズボンのポケットから紙切れを取り出す。
ガスやフォートからすればよく見知った顔が載っている紙だ。
「本当にその技術だけはいつ見てもわからないな。」
「へへへっ!これは返しておくよ、先週、借りていた金。」
フォートは金貨を三枚投げ渡す。
「また勝手に盗ったのか?」
「借りただけ、借りただけ。」
二人は頭の帰りを待つ仲間のもとに帰っていった。
イザラはもとの草原に座り込んでいた。
何が起こったのかわからないという顔で座り込んでじっとしていた。
がしかし、すぐに理解する。
「ねぇー!!出て来て!!アンタ達の力が必要なの!!」
イザラの声に返事するものは誰もいなかった。
「ねぇってば………。」
辺りには魔法のかけらすら感じられない。
きっと最高ランクの結界魔法であの洞窟を隠しているのだろう。
イザラはどうしよか悩んでいたときだ。
後方より魔力の砲弾が飛んできた。
イザラは訳が分からず、必至によける。
「やったか?」
「いや奴ならこれくらいで死なないはずだ、捜すぞ!!」
物陰から聞こえてきた不吉な会話に、イザラは荷物を隠し、武器だけを持つ。
相手の数は二人だけ、一人は魔術師、もう一人は未知。
先に魔術師のほうから攻めるのが得策。
そんなことを頭の中で考え、イザラはナイフを片手に飛び出し、背後から襲い掛かる。
「キャッ!!」
だが見えない何かに弾かれ、尻餅をついてしまう。
「な、なんだこの女は?」
二人の男はイザラに驚く。
しかしイザラはそれ以上に驚いていた。
コイツらは私を狙ってない!!
「チッ!!まだ奴の手下が残っていたんだろ!」
そういうと能力が未知な男のほうが間合いを詰めて来る。
イザラは急いでスペルを唱える。
「―rhythm―」
相手は一瞬動きが止まったが、お構いなしにイザラを殴り飛ばす。
「なんてバカ力なの?」
イザラは素早く立ち上がり、ナイフを再び構える。
イザラはそのナイフを敵に投げ付ける。
「―銀の刃に
隠れし獣よ
血に飢えたる
その刃で
敵を貫け
“銀喰”―」
ナイフの刀身である銀の一部を代償に捧げ、溶けるようになくなる、“J”のような形になると、残ったナイフに人型が宿り、敵を攻撃する。
その人型は男の吸血鬼を想わせる美しいがどこか恐怖を感じさせる姿をしていた。
人型の攻撃により、敵は鍛え上げられた肩から血を流していた。
再び、人型が攻撃を仕掛けようとしたとき。
「フンッ!!」
たった一度の打撃で魔法の人型を掻き消してしまった。
「この程度か、死ねぇ!!」
「 ―白の教会
差し延べる……」
間に合わない。
やられる
苦し紛れに防御魔法のスペルを唱えはじめたが、イザラは恐くて目を閉じる。
だが攻撃が一向にこない。
恐る恐る目を開けて見ると、誰か知らない人が立っていて助けてくれていた。
「すまねぇな、ねーちゃん。
俺のせいで無駄な傷負わせちまったみたいだな。」
いや、私はこの男のことを知ってる。
この男が―――
「俺はスティール・ハンズ。
ここいらのバカの頭やってんだ!」