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トケナイ氷  作者: 朱手
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第IV章再開とナイト 5話・龍戦〜ベル〜

「ナイト達よ! 早く姫を守り、龍を討ち果たせ!」


 龍の襲撃によって風の国はパニックに陥っていた。


 城内にいるナイトの二分の一は国民の保護を任され。

 そして四分の一は破壊された瓦礫の下敷きになった人の救出することに。

 残された四分の一のナイト達が龍との戦闘となった。


 龍との戦闘に駆り出された数、二十名弱。

 いくら相手が大きな龍と言っても、多勢に無勢。

 勝利は確実に思えた。


 が、しかし問題はナイト一人一人の質にあった。

 ナイト∀やAの強いナイト全員は国民の保護に当てられ。

 ナイトC・Dの未熟なナイトは瓦礫処理に当てられていた。


 つまりは龍との戦闘に駆り出されたのはナイトB・Cという戦闘らしい戦闘を少し体験した者達だった。

 でも誰も龍に接近して闘おうとせず、全員が魔法での援護射撃となっていた。


 そんな状況にサーは立ち上がった。

「―ルプス―」

 手に氷ノ血ノ剣を握り締め、風のナイトにイザラと同じ箒を貰い、飛び立つ。



「―魔銃“芭蕉扇”

  的を射抜け

    散弾

   “末広”―」

 風の銃弾は扇型に散乱し、龍に当たるが鱗のついた硬い面の翼を盾代わりに防ぐ。

 その両翼を開け、口を大きく開け風の息吹を撃つ。


「 ―彷いの氷

   “流氷”―」

 氷塊が龍の頬に当たり息吹の軌道がズレ、ベルには当たらなかった。


『貴様……』

 龍はサーを睨み付ける。


 すると、不意な方向から赤黒い大きな球体が飛んで来て、龍にぶつかり爆発する。


 その球の来た方向にはあのナイトB・C達が大きな魔法陣を囲んでいるのが見えた。


 一人一人の力では龍に敵わないが皆の力を併せれば、という考えから生まれた作戦だ。


 流石の龍もこれには一溜まりも無かった。


 当たった右半身の鱗は剥がれ、肉が爛れいた。


『死ねぇえぇえぇ!!!』

 咆哮と共に風の息吹を撃つ。

 だが、さっきの魔法も遅れながらに陣より放たれる。


 二つの魔法は空中でぶつかり合う。


 二つは一つになるように重なり、強い光が全てを包む。


 その二つの魔法の結果は地上付近での大爆発。

 陣はもちろん、その陣の近くにいたナイト達も巻き込んでのだ。


 その犠牲を無駄にしない為にも龍の疲れている今を狙うべく、サーは全速力で接近する。


 氷ノ血ノ剣を構え、狙うはナイトB・C達が残してくれた傷。


 しかし龍はそれに気付き、尻尾で叩き落とす。


 箒はバラバラ散り、サーも成す術無く、落ちて行った。

「サァアァァアァー!!」

 ベルは友へ叫ぶ。

 しかし返事も何もないまま落ちて行った。


 ベルは怒りに満ちた眼差しを龍に向ける。

「よくもサーを……!

 ―魔銃“芭蕉扇”

   射殺せ

    絶弾……」


「―ルプス―」

 ベルのスペルを遮り、サーのスペルが響く。


 すると空中から氷の鎖が放たれ、龍の首を捕まえる。

「サ、サー!」


 サーはしっかりと鎖を掴んでいて、落ちてはいなかった。


 自分の首に巻き付いてきた鎖の先を見た龍は勢いよく飛び回り、サーを振り払おうとする。


 がその時、ベルの方向から強い魔力を感じ、龍はチラリとそちらに目をやる。


 「―魔銃“芭蕉扇”

   的を射抜け

    単弾

   “旋風弾”―」


 だがそれは不幸にも魔力の風により回転する弾が龍の目を貫く。


 不幸中の幸いか、角度のせいで脳は貫かず、頭蓋骨で止まったみたいだがその痛さは尋常ではなさそうだ。


 そして、勢いよく動き回っていたものが止まるとその反動によって力が生まれる。


 その反動によりサーは空中に投げ出されそうになるが鎖を必死に握り絞めていると、鎖が繋がれている首を中心に円を描き、龍の背中に落ちる。


 それは奇跡と言っても過言では無いほどの偶然。

 サーは龍の背に氷ノ血ノ剣を突き刺す。


『グゥヴァアァアァ!!!』

 龍は尻尾と翼を器用に使い、サーを再び落とす。

『―レイブン―』


 ガラスで出来た肉を持つ鳥が空中でサーを拾う。


「ふうー。間に合った。」

 どうやらその鳥はベルのパートナーみたいだ。


『壊してやる………。』

 龍は風を吸い込む。


 ベルがどんなに魔力の弾を撃ち込んでも、サーがどんなに魔法を放っても。

 龍は風を吸い込む。


 体中が血だらけになっても龍は。

 風を吸い込む。


 そして体全体を下に向け、口を開ける。

 最期の力を振り絞って、全てを代償に、風の息吹を放つために。 風の国へと。


 それはこの国が始まって以来初めて、風が止んだ瞬間だった。







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