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トケナイ氷  作者: 朱手
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第IV章再開とナイト 4話・参上

 突っ込んだ女と吹っ飛ばされた男。

 それを真横で目撃した女。

 そして突っ込んだ女を追う男達。

 吹っ飛ばされた男と突っ込んだ女は知り合いだった。

 その二人が出会った理由を覚えていた男、サーは今の状況はわからないが、追われている女、ベルの手を取って走り出す。


「ちょっ!サー!」

 ずっと黙って見ていた女、イザラがサーに呼び掛けるが返事もないまま走って行った。


「待って下さい!姫!」

 追っていた男達は再び逃げ出したベルを追い掛けて行った。


「みんな、自分勝手だ。」

 残されたイザラはその団体の後をゆっくり追い掛けることにした。




 サーが逃げるにはこの国の地形の情報が足りなかった。

「ベル、その箒まだ使える?」


「だ、大丈夫だよ。」

 ベルから大丈夫のセリフを聞いたら、ベルの手に持つ箒の魔力を篭める部分に軽く触れる。

「ッキャッ!」

 ベルの腰を抱く。

「捕まって!」

 そして魔力を篭めると、二人の体は浮いた。 いや、飛んだ。

 その高さは建ち並ぶ家屋を2、3メートル越す程までに。


 飛んだ二人は空中でちゃんと箒に乗り直す。

「ちゃんと乗れた?」

「うん。 ところでサーはこの国で何してたの?」

「ちょっと任務で。」

「そっか……。」

「ベルはこの国のお姫様だったんだ。」

「アハハッ。 バレちゃったね。 でもっ!」

 二人を追って来ていた男達が跳び上がり箒だけを攻撃し、ベルを捕まえようとする。

 サーは必死にそれを避けるが背後から跳び掛かられる。

 それをきっかけにたくさんの男達に押さえられ二人は捕まってしまった。


「姫と他一名、確保完了。 城へ連れ帰る。」

 機械的な返事の後、拘束された二人を立たせ無言で連れさらわれた。




 □ □ □




「ベル。 何故お前はそこまでこの家から逃げたがる?」

 真っ白なフサフサの髭とは真逆のツルツルの頭を持つ王、サレッド・ウィンディ。

 つまりはベルの父親。


 サーは事情を簡単に説明されたが、ベルにせがまれて未だここにいる。


「父様、私は世を見ておきたいのです。

私はウィンディ家の一人娘。

この国を次に継ぐ者。

上に立つ者にはしっかりと世を見る義務があります。」


「お前の言い分わからない訳ではない。

しかし何故一人で無断で行こうとする?

家来と共に行けば安全ではないか。」


「それは家来の人達がついて来ては、真の世が見えないと思うからです。」


「うーん。 わかった、今から大臣達を収集し、お前に安全に世を見せる方法を考え出そう。」


「ありがとうございます、父様。」

 ベルは娘想いの父親に涙目になりながら、礼を言うとサーを引っ張って出て行った。


「さっきも聞いたけど、サーはこの国で何をしてたの?」


 廊下を歩いているベルはふとした疑問を投げ掛ける。

「実は人を捜しているんだ。」

「ふーん、なんて人?」


「ブラッド・アッシュって言う先輩のナイト。」


「ブラッドさん!ブラッドさんなら最近までこの国の領域内にいたよ。」


「今はどこ行っちゃったか知ってる?」


「それが急にいなくなってわからないの。」


「ここにいたってことを知れただけでも収穫だ、ありがとう。」


「エヘヘ。」

 ベルは照れ笑いをする。


 しかしそれの幸せな時間も束の間、城に強力な風の魔法が放たれる。


 城の外を見ると、龍が飛んでいた。

 深緑な鱗を全身に纏い、泳ぐように空を舞うがその鋭い琥珀色の瞳だけは城からは離さなかった。


 人々が龍に注目し始めると、風の国中に龍の声が響き渡る。

『我はプレート“プリズン”よりの使者!

四ノ鍵番“無淵の翠き銃使”に用があり、今ここに参上した。

無淵の翠き銃使よ、名乗り出でよ!』


 ベルは手に持った箒に跨がる。

「ベル、何してるんだ!」

 サーは今にも飛び立とうとしているベルを止めようとするが、ベルはそんなサーを気にもせずに、その龍の目の前に飛び立ってしまう。


「私の名前はベル・ウィンディ。

またの名を“無淵の翠き銃使”。

用件は何です、プレート“プリズン”よりの使者さん?」


『我はお前の持つ“鍵”を欲しい。』


「それは無理な願いです。

お帰り下さい。」


『悪いが力付くにでも!!!』

「―レイブン―」


 ベルはガラスの銃より、龍はその魔力を備えた息吹より、強力な魔法の風の弾と球を放つ。


 □ □


「いきなり来て、会社に砲撃だなんて失礼ね!

しかも龍が三体も、何の用かしら?」


『“鍵”を渡して貰おう。』



 □ □ 


「姉さん、乱暴なお客さんには罰を、だね!」『マガ、あたし怒った。お昼ご飯めちゃくちゃ!!』


『さっさと“鍵”を渡しな!』







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