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トケナイ氷  作者: 朱手
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第I章女王とナイト 6話・氷帝

今までの話をちょっといじりました。

適当な作者で少ない読者様ごめんなさい。

でも、より読みやすく、より分かりやすくなったとおもいます。これからもよろしくお願いします。

「ん、ふぁーあ。」


 サーが起きた時すでに街は静かな暗闇に包まれていた。


 サーは軽く食事をとり、宿屋を出た。


 その姿はその街に溶け込むように、一人、昨日まで一緒にいた少女がいなくなったことの寂しさを纏っている。


 サーがいた学校では、白髪という風貌のために彼は浮いた存在だった。

 そのせいであまり友達らしい友達もいなかった。


 だが、ベルはサーの外見を気にせずに普通に話し掛けてくれた。


 ただそれだけでうれしかった。



 サーは寂しさにかられながら歩いていると、綺麗な噴水のある広場に出た。


 その広場にあるベンチに一人腰掛ける。


(今夜ベルは王家の人間に会うと言っていたけど、ベルってもしかして良い所のお嬢さんなのかな。)

などと軽く考えをとばしていると、サーの耳に歌声が入ってくる。


『―――我らの女神 “阿洙羅(アシュラ)”よ


友のカオ持つ あなた あまたの尾は 我らを守る者


友のカオ持つ あなた 天舞う衣は 我らを癒す者


友のカオ持つ あなた 凍て付く刃は 我らを導く者


あなたの瞳に映るは 寂しさが凍える 海に眠る 友の魂―――』


 サーは歌の聞こえるほうへ歩み寄る。

それはまるで何かに引き寄せられるかのように。


 行き着いたのは女神“阿洙羅”の像が奉られている広場だった。

 そこには顔を隠すように深くローブを被る女が一人地面に座り込んでいた。


 その女はサーにこっちに来るようにと手招きをする。


「あなたにこれをあげるわ」

女の手には短剣が握られている。


「あなたはきっとこれからいろいろなモノを壊したり棄てなくてはいけないようになるわ。」


「いったい、どういう事だ?」


「あなたが守りたいモノを守っていたらきっとまた逢えるわ。」

 そう女が言うと強い風が吹き、女の姿はもうそこにはなく、短剣だけが残されていた。


「いったい何だったんだあの女?」

 サーは女の短剣を手に取り、よく見てみる。

 その短剣はとても美しく、鞘には精霊が踊る、柄には神“阿洙羅”が人々を守る様子の装飾が施されている。


 その短剣の装飾にサーは魅了され、その短剣を腰に挿す。

すると、急に眠気に襲われたサーは宿屋へ帰って再び眠りにつくことにした。




 □ □ □




 サーは今朝からバタバタとしていた。


 朝、サーが起きると氷の国の王“氷帝(ヒョウテイ)”から手紙が届いていたのだ。


「余の友助けし少年よ。そなたの願い聞き入りた。今日会いて話がしたい。余の王宮へ参られよ。」との内容。


 サーは髭をそり、歯を磨き、髪を梳かし終えるとテスの店で買った服を着て今まで持っていた剣と昨日女にもらった短剣を腰に挿し、髪を隠す帽子を被り宿屋を出た。


 急いでサーが王宮に着くと門番の男がサーに話かける。


「小僧、王宮に何のようだ?」

 サーは門番に手紙を見せる。

「なんだ小僧?

何々…………失礼しました。さぁ、こちらへどうぞ」

 門番は急に態度を変え、サーを王宮の中へと案内し、帝の間へと連れて行くと逃げるように走って行った。


 サーはその部屋の門を叩く。

「ベル・ウェンディーの友サー・クライフ、ただ今参りました。」

「入るがよい。」


「ハッ」

 サーはその門を開け中へ入って行った。


「よくぞ来た。

わらわは待ちくたびれたぞ。」


「えっ、女? 子供?」


 サーの目の前には王座に座るとても幼い女の子がいた。


「子供だからといってわらわを馬鹿にするでない。」


「本当に貴女様が氷帝なのですか?」


「わらわ以外に誰がいると言うのじゃ!」


 サーはその女の子の言っている事をいまいち信じる事が出来なかった。


「そんなに疑うのならわらわに一発魔法を放ってみろ。」


 サーは戸惑っていると氷帝は呆れたように言う。

「なんじゃ、ウィンディーが薦めるからできる者かと思えばただの腰抜けか。」


 サーは氷帝の言葉にのせられ、スペルを唱え始める。

「  ―我

  クライフの息子

   サー

    汝

  凍てつく狼

  ルプスの主

    今

   契約に従い

   我に力を


   うつるは 

     月

    崩すは 

     刃

    留めるは

     白

    全てを

     白に

    “波紋”―」


 サーがスペルを言い終え地面に手を添えるとその部屋は瞬く間に凍り付く。


 が、氷帝の周りだけは変化が起こらない。


「この程度か。

魔法を使うとはこういう事だ。」


 氷帝はスペルを唱えずににサーと同じ魔法を放つ。


「ナッ、わらわの魔法がっ、」

 だがなんと氷帝が放った魔法がサーの周りだけ変化がなかった。


 サー自身も驚きあたふたしているとテスの言葉を思い出す。

『あなたを敵の魔法からその服が守ってくれるわ。』


 そして氷帝はもうひとつのことで驚いていた。

「そなた、その髪……」


「えっ、あー帽子がー!」

 氷帝が放った魔法の衝撃でサーが被っていた帽子が飛んでしまっていた。


そんなサーを見て氷帝はニヤリと笑う。

「ふむ、そなた気に入ったぞ。

魔法の攻撃力はまだまだじゃが、わらわの魔法を無化してしまうとは、そなた少し鍛錬を積めば、騎士長にだってなれる器じゃと見た。

それにその髪。うんうん。

そなたにナイトの位を授ける。」


「あ、ありがとうございます。

我が身を氷帝のため、国のために捧げます。」


「そう構えるな。

あと、わらわの名は氷帝ではなく“シード・コーテーセン”じゃ。

シード様と呼べ。」


「はい……、シード様。」


「うむ、よろしい。」


 幼き帝は白髪の若きナイトを気に入った。


 しかし、その少年は不吉の色を持つ。


 色は生まれた時に神が与える、初めての贈り物。


 その贈り物は、まだ意味をなさないが、だがいつかは―――





 白はこの世界で幸せを消し、不幸に変える色。


 だが、白を纏う少年は、今は夢に近づき少しばかりの幸せを掴んでいた。


 その幸せはいつかは不幸へと変わるのか。


 それともその言い伝えがただの言い伝えなのか。


 それを決めるは一人の少年。

 サー・クライフがこれから決めること。





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