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トケナイ氷  作者: 朱手
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外伝II革命のヒトミ 8話・事実

遅くなってごめんなさい。

今回はヒトミの方を先に読んでください。

これからもトケナイ氷をよろしくお願いします。


「何がですか?」


「これは絶好のチャンスだ!」


「だから、何がですか!?」

 イザラは中々話が見えないことに苛立ちを覚える。


「わからないか?

俺はナイト長だ。

そのナイト長が眠ったままだと流石に砂帝も見舞いに来るだろう。

それで見舞いに武器なんかは持ってこない。

丸腰の上に不意打ちとなればいくら砂帝でも簡単に始末出来るだろう。」

 イザラはアーカスが話す作戦を聞いていると、これならいけそうな気がしてきた。


 それを見たアーカス笑いながら注文する。

「短剣とのど飴を用意しておいてくれ。」


「今すぐに!」


 言われた通りイザラはのど飴を買うために病院を出て行った。


 病院内の看護師に頼んでのど飴を用意してもらっている間に、イザラは手頃な短剣を探しに街へ出て行った。


 一先ず、鍛治屋を訪れてみた。

 でもあるのは、包丁やナイフのようなか細い物か長剣やレイピアのような大き過ぎ、今のアーカスでは扱いきれない者しか無かった。


 他の店も見て回ったものの、調度良い物は無かった。

 少し不安だが、父親の遺品の中にあった短剣を渡すことにして病院へと帰って行った。


「あっ!イザラ!

この人をちょっとアーカスの病室まで連れていってあげてくれないかな?」

 病院のロビーでばったりと出会ってしまった。

 カナスの隣にいる男に。

 顔が見えないようにローブを着ているがこの男が誰かはわかる。



 ――砂帝



 イザラの頭の中はいっきにパニックに陥った。


(どうしよ?きっとのど飴は届いてるだろうから呪歌でどうにかできるかな?

でもやっぱり)


「どうしたイザラ?

早くお連れしろ。」

「ハ、ハイッ」

 イザラは仕方なしに砂帝をアーカスのいる病室まで連れていくことにした。

 しかしその途中、頭の中はどう砂帝を殺すかについて考えていた。


「着きました。どうぞお入り下さい。」

 イザラは砂帝を部屋に入れると、砂帝の魔力を感じて寝てるふりをしているアーカスが瞳に入る。


 砂帝は無言のままアーカスのすぐ隣に座る。


 それを見計らってアーカスが砂帝を押さえ込む。

「イザラ!」

 突然のことに出遅れたがイザラは鞄から短剣を取り出し、砂帝の胸を突き刺す。


 砂帝は力無くその場に倒れ込んだ。

 その際に胸から短剣は抜け、返り血がイザラにかかる。


 呆気ない砂帝に二人は不信感を覚え、蹴って確かめたりするがまるで反応はなかった。


「何かおかしいな。」

 アーカスがそう言った瞬間にドアは開き、三人のナイトが入って来る。


「貴様達は砂帝様殺害の罪により、強制連行させてもらう。

手を頭の上に置け!」


 入って来た一番いかついナイトが怒鳴る。


「………イザラ、伏せろ!

   ―roar―」

 イザラは慌てて伏せると拡散した音の刃がナイト達を襲う。


「逃げるぞ!」

 アーカスはイザラを腕に抱き、窓を破り走る。

 しかしそこにもナイト達はうじゃうじゃとしていた。


  「―月のない夜

  見えない暗闇の中

  微睡む時を過ごせ

   “眠気の風”―」

 辺り一面に生暖かい風が吹き抜け、その風に当たった人はパタパタと眠り込んだ。


「今の内に逃げましょ!」

 二人はその場を走り去って行った。




「チッ、逃げられたか。」


 イザラの魔法を物ともせずに立ち続ける男は苛立つことをさらけ出すように大きな声で悪態をついた。




 □ □ □




「ハァ、ハァ、ハァ。

どうやら撒けたようです。」

 額の汗を拭いながら窓の外を覗き見ていた。


「本当にここでバレないだろうか。」

「大丈夫ですよ。

何よりここなら誰にも迷惑になりませんし。」

「そうか?」


 二人が今いるのはイザラの家である。

 イザラは直感的にここなら少しの間隠れれると思い、ここに来た。


「でも、何でこんなことになったんでしょうね?」

「わからないか。

裏切られたんだよ、俺達は。」

「誰にですか!?」



「………たぶんカナスだ。」

「そんなカナスさんが?

何かの勘違いですよ!」

「お前が刺した砂帝は確かに砂帝本人だったが、魂が抜かれていた。

カナスの持っている魔本は聖獣達の魂の一部を抜き、それを餌に使役するというやつだ。

それを砂帝に使ったのだろう。」


「じゃぁこれからどうするの?」

 二人の間に沈黙が長く続く。


「………許せ、イザラ。

    ―nap―」

 イザラの目の前にアーカスの手を翳し、スペルが唱え終わると糸が切れたように眠り込んでしまった。




 ―――暗くて何にも見えない。

瞳に映るのは形のない闇。

その闇の先に何があるのかはわからない。

 けど何かがある。

その何かがさらに私を閉じ込める闇なのか、それとも私を救い出す光なのか。

 見てみよ。

 怖いけど、閉じてる瞳を、目を、眼を、開けて見てみよう、瞳で。目で。眼で。

 真実を見るのは怖いけど真実を知れないのは悲しいから。


 この瞳で全てを見続けよう。







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