外伝II革命のウタ 5話・料理
三人は夜の砂漠を歩いていた。
「もうすぐ目的地だ、頑張れ!」
一人遅れ気味のイザラは歩き疲れ、足はパンパンに張っていた。
砂漠には道など無く、星やコンパスなどを頼りに進むしかないし、昼間は太陽の光が強すぎ余計な体力を消費してしまう。
それゆえに行動は夜だった。
「うぅー。やっと着いた。」
喜ぶ元気さえないぐらいに疲れた様子だ。
三人が到着したのは小さなオアシスだ。
水が湧き出ており、そのまわりには植物がちらほらと見られる。
イザラは張った足を冷やそうと湧き水に足をつける。
「キモチィ。」
とろけそうな笑顔でそう呟く。
アーカスは料理のための水を汲みに来たら、ちょうど少女のそんな顔に遭遇し、声を掛けようかと思ったがそんな笑顔を見てからでは出来なかった。
だいぶ足も楽になったので足を水から上げ、タオルで拭く。
そして水を手で掬い、一口だけ飲む。
この砂漠のように渇いたのどはすぐに潤さわれた。
その後も何をすることも無く、ただ星空を眺めていた。
次第に東の空が明るくなりはじめる。
「イザラ、朝ご飯にしよ!」
感動的な風景はカナスがぶち壊してしまった。
だが張本人はそんなこととはつい知らずに朝食だよー。とイザラを急かさせた。
イザラも壊れたムードを惜しみながら、朝食のために立ち上がった。
カナスは水を汲みに来たついでにイザラを呼んだみたいで二本の水筒に水を入れていた。
それの横を通りさっさとアーカスが作っている朝食のもとへ歩いて行った。
「……お待たせ。」
「どうしたカナスに何かされたか?」
イザラの不機嫌を感じたアーカスは料理をそれぞれの器に入れながら尋ねる。
「ううん、疲れただけ……。」
手渡された器を受け取る。
「なら、いいが。」
受け取った皿の中身は茹でた芋と野菜に魚の干物を焼いただけという簡素な物で、なんとも男の料理って感じだった。
帰って来たカナスには既に皿が用意されており、芋を手に取りカブリッと一齧り。
アーカスも魚を手で持ち齧っていた。
イザラは辺りに見回してフォークか何かを探したがそんな物は無かった。
「どうしたイザラ?食わないのか?」
アーカスは魚から口を離し、イザラの心配をした。
「ううん。」
顔を横に振ると野菜を掴み、口の中に放り込んだ。
その後は手づかみでも気にせずに食べていった。
「カナスさん、あとどれくらいで目標のテリトリーに着くんですか?」
「今日の夕方頃に出発して夜には着くよ。
だから今のうちに休んだほうがいいよ。」
「うん、わかった。」
イザラはそう言うと水辺に魔法で大きな布を浮かせ日陰を作るとそこですやすやと眠り込んだ。
□ □ □
「ふぁーあ。」
「イザラ、もうすぐ奴の縄張りに入るからもうすこし緊張しろ。」
あくびを怒られ、イザラにとっては眠気覚ましになっていた。
「ねー、失敗作の特徴もう一回教えて。」
「魔獣の血が交じってるからわからないが、最後に見られた姿形はサイに似ており、
象のように厚い皮膚に覆われ、身体中に固く閉じられた口があり、一度開けられたら全てをくらい尽くす牙が見え、額には太く短いが尖った角を持っている。」
「足は速い?」
「いやそこまで速くは無かったらしい。
だが厚い皮膚の前では剣も魔法も効かなかったらしい。」
「ならどうするの?」
「それはオレが奴と闘って、その間にアーカスの得意な呪歌で奴を内部から破壊してもらう。」
カナスが話に割り込んでくる。
「カナスさん、私忘れてない?」
「イザラは援護と補助をを頼む。」
アーカス急に手を軽く上げ、二人は黙る。
「縄張りに入ったぞ。
ここからは気を抜くな。」
『フンッ!ヴヴゥー!』
その時三人はまだ気付いていなかった。
すぐ近くに獰猛な失敗作がいることを。