第I章女王とナイト 5話・入国
俺は今、熊と戦っている。
俺が剣で戦っていると、どうやら相手の熊はベルを捕まえたまま、戦うのが苦になったみたいでベルを洞穴の中へと押し込んだ。
「ルプスー、俺が熊の気を引くからその隙にベルを助けろー」
『わかった。』
(もし、洞穴の中に他の熊がいたらベルが危ない。
ここは手早く決めるか。)
サーはポケットの中を探る。
「こっち向け熊!」
そう叫び、熊がこっちを振り向いた瞬間サーは閃光弾を放った。
「グォォオ」
どうやら熊は目が潰れ混乱し始めたようだ。
「これが俺の最強の魔法だ!
ーうつるは
月
崩すは
刃
留めるは
白
全てを
白に
“波紋”−」
唱えながら剣を地面にさすと、
剣を中心に次第にその周りが凍りだし、熊も徐々に足下から凍っていき動け無くなる。
『サー、娘は助けた。
気絶はしているが大丈夫だ。
はやく行くぞ。』
「あぁ、ルプス」
一分もしない内に氷が溶け目覚める熊を背に俺は走った。
□ □ □
「んっ…、ぅんっ…」
「起きた?よかった。」
「サー?私……
ハッ、熊は?熊はどうしたの?」
ベルは急に体を起こす。
「落ち着きなよ、ベル。
熊なら追い払ったから。
でも良かった。それだけ元気があればもう大丈夫だね。」
その時、グーという音が響いたかと思うとベルの顔が真っ赤に染まり上がった。
「あー、これでいいならどうぞ。」
サーはそう言いながら食料店でもらったクッキーをベルに渡す。
「ありがとう…」
とベルは言いながら真っ赤な顔でクッキーをかじった。
辺りにはカジカジとベルがクッキーをかじる音だけが響き、二人の間に沈黙が続いた。
「ごめんねぇ、サー。
私すごい足手まといだよね。
任せとけとか言ってたのに……」
沈黙を破ったのはベルであった。
「気にするな
俺はベル、お前を守るって言っておきながら、危険な目にあわせてしまった……
俺のほうが謝らなければならないくらいだ。」
「エヘッ、ありがとう、サー。」
さっきより明るくなり、笑顔で答える。
「じゃあ準備して太陽が昇る前の涼しい間に移動しよ」
「いいねそれ。
そうと決まれば早く行こ。」
サーとベルは薄暗闇の中、幼い子供のように二人愉しそうに歩いていった。
□ □ □
そんなこんなで俺とベルは氷の国に着いた。
「ありがとう、サー。
あのことだけど、王家の人には今日の夜に言っておくから
明日の朝にお城へ行ってみて。」
「ありがとう。
今日は宿でも探して少し寝ることにするよ。
じゃ、今度逢う時はナイトになった姿で。」
「うん、また逢おうね。バイバイ、サー。」
ベルはサーの姿が見えなくなるまで手を振っていた。
サーもは手を振り返しながら、見知らぬ町の人混みの中へと入っていった。
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