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トケナイ氷  作者: 朱手
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外伝II革命のヒトミ 2話・捕獲

 風の音に目が覚める。


 少女は眠りまなこを擦り、一人朝食の用意をする。


 メニューは簡単に黒パンと目玉焼きとサラダとミルクだ。


 イザラはサラダのための野菜を手でちぎり、お皿に盛りつける。

 次にお皿の上に卵を割って、乗せると簡単な火の魔法を使い、目玉焼きに変身させた。

 そして黒パンにも軽く火を入れると未だに寝続けている父親を起こしに行った。


「父様!朝だよー!」


「ん?あぁ、分かった。」

 父親は欠伸をしながら起きて来る。


「今日もうまそうだ。

いただきます。」

 イザラの向かいに座り、朝食をとる。


 黒パンを一口かじると、口の中の水分が奪われる。

 それをミルクで流し込むと、サラダ、目玉焼きを完食し、残った黒パンを頬張り、またミルクを飲み、口の中を潤す。


 父親のそんな様子を食べ終わるまでイザラは見ていた。


「ごちそうさまでした。

今日もおいしいご飯をありがと。」

 最後の一言にイザラは笑顔になり、父親の皿をさげ洗い始める。


「そうだ、イザラ!

今日の夕飯はいらないから一人で食べてくれ。今日から三日間は任務でかかりそうだから留守番頼むな。」


「うん、わかった。がんばってね!」


「じゃあ行ってくる!」

 そう言って出て行く父親の背中を手を振って見送った。



 イザラも家の中を軽く片付けたら任務の用意をし始める。


「えーと、今日は砂漠に潜むさそりの捕獲か。

国の外から来たお偉いさんが刺されたからなぁ。

今日は退屈な任務だなぁ。」

 愚痴をもらしながらも準備していたら、時間になりイザラは家を出て行った。




 □ □ □




「こんにちは。

私イザラ・アーシェと言います。

今日一日よろしくお願いします!」


「イザラね、オレはカナス・メルバ。

よろしくー!

今日は二人でさそりな捕獲だけど、経験はある?」


「前に一度だけ。」


「なら、大丈夫だな。

まぁ、奴らの針にだけ注意しとけば何とかなるさ。」


「はい!

それで今日のノルマは何匹ですか?」


「今日のノルマは百匹だ!

だから一人五十匹捕まえるぞ!」


 二人で拳を振り上げて、オー!!と叫ぶとさそり探しをサンサンと輝く太陽の中始めた。



「いないなぁ。

この辺りのはもう捕まえられたのかな?」

 カナスは必死に探しているが全然見付からなかった。


 でもイザラの方は。

「また、見つけた!」


 笑顔で人の頭くらいあるさそりを尾にひもを縛り付け、ブランブランと引っ提げていた。


「すごいねイザラ。

まだ見つけたの?

オレなんてまだ四匹しか捕まえてないのに、もう五十匹は越えてるだろ?」


「うーんとね………。

今ので五十三匹だよ!」


 カナスは苦い笑顔をして、自分の袋の中を再び見詰める。


「あっ!またいた!!」


「………もうちょっと、真面目に探そ。」


「何か言いました?」


「………いや、何も。」


「あっ、カナスさんの後ろの岩影にもいるよ!」


「えっ?」


「ホラッ!」


その数分後には再び少女のうれしそうな声が聞こえる。ということがこの後に何度も何度も繰り返されるのだった。




 □ □ □




 夕焼け時、二人は大きく膨らんだ革の袋を手に提げ、帰り道を歩いていた。


「イザラすごかったね!

どうしてあんなにさそりのいる場所がわかるんだい?」


「わたし生れつき瞳が良いんです。」

 はにかみながら自分の瞳を指差す。


「何も違うところなんて無いのに。」

 カナスはイザラの瞳を覗き込むように見てみるが違いなどは見付けられなかった。


「だって今は普通の瞳だもん。」


「えっ?どういう意味?」


「ンフフ。そんなことよりさそり渡しに行こうよ。」


「えっ、あぁ。えーと、頼んでもいい?

ちょっと今の時間帯嫌いなナイトが受付してると思うから。」


 カナスは話に夢中で自分では気付かないうちに砂帝城の入り口まで来ており、イザラのと比べるととても小さな革の袋を押し付けるように渡す。


「うーん、それは仕方ないね。

うん、行ってくる!」

 そう言ってとイザラは駆けていった。


「………瞳か。

やっぱり使えるよ、あの娘は。」

 駆ける背中に呟いた言葉は少女に届くことはなかった。







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