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トケナイ氷  作者: 朱手
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外伝II革命のヒトミ 1話・昇格

長らくお待たせしました。二話同時投稿です。比較してみてください。

 もしこの瞳が無くなれば………。

 でもそれは叶わぬ夢

 なら誰かの為に役に立てれば

 それがわたしの夢


 でもわたしが見た夢は………。




 □ □ □




「でね、母様。」

 四角い石に話し掛ける少女がいた。

 その少女は手に小さな可愛らしい花側握られていた。


 少女はニコニコと笑っていたが急に青ざめて慌て始める。

「父様に怒られちゃう!」

 そう叫ぶと、手に持つ花だけを残し、どこかへと走り去ってしまった。


「ハァ、ハァ、」

 少女は王宮の中を走っていた。


(大変!今日のパーティーには遅れたらダメだ。と父様にあんなに言われてたのに!)


 必死に走り、走り大きな扉の前に着く。

胸に手を当て乱れた呼吸を落ち着ける。

 そしてこっそり扉を開けると中から賑やかな人の楽しそうな話し声が聞こえてきた。

 少女はその人混みの中に紛れるように入って行った。


「コラッ!イザラどこへ行ってたんだ?」

 小さいが聞きたくなかった声にビクッと振り向くと予想通り父親の姿があった。


「父様あのっ…えーと……。」

「ふぅー。

また行ってたんだろ。

母さんは喜ぶよ。」

「うん!」

 イザラはしゅんとしていたが父親の言葉に明るく頷く。


 チリンチリンッ――


 広間の一番奥でいたこのパーティーの主催側の人間が鈴を鳴らし、その場にいる人、皆がそちらの方を振り向いた。


 皆の視線の先には砂帝の姿があった。


「集まってくれた皆、今日は俺のために集まってくれてありがとう。

今日で俺は二十七歳になる。

砂帝になっては七年だ。

まだまだ俺は未熟な砂帝だが、我が領土をこのプレートで一番裕福にこの俺の手で必ずしてみせる!

例え破壊を司る神“閻羅”をも破壊してまで!」

 広間には盛大な拍手が巻き上がった。


「では、旨いかはわからんが食事を楽しんでいってくれ!」

 それを合図に隣の部屋と繋がる扉から五人のシェフと料理が出て来て、豪華な料理が振る舞われた。


 イザラは父親が取って来てくれた料理を人混みから少し離れた場所で食べていた。


「おっと、忘れていた。

今日は我が国の“ナイト名誉叙任式”でもあるんだ。

名前を呼ばれたナイトはこちらへ来てほしい。

えーと、ローグ・マルクス、ナイトB。

リア・ターナー、ナイトB。

リューシュ・カイル、ナイト―――

―――」

 誰かの名前が呼ばれる度に拍手が起こり、人がまた一人と並んでいく。


「イザラ・アーシェ、ナイトA。

彼女は我が国最年少ナイトで今年十一歳になったばかりだ。」

 広間が歓声で溢れ、イザラは真っ赤な顔で砂帝に歩み寄り、皆の方向に振り返った。


 イザラに向けられる視線は期待や興味だが不信感や疑問を抱いた物も少なくなかった。


 だがイザラはそのことに気付きながらも父親の誇らしげな顔を見るだけでそんなことはどうでもよくなった。


「そして最後に今から我が国のナイト長に就任したナイト、アーカシ・タイク、ナイト∀だ!」

 今までの物とは比べ物にならないくらい盛大な拍手が送られる。


 中年代の男が人混みが割れて出来た道より歩み出て来る。



 イザラは無意識にその男を見る。

 すると、瞳があった。

 一瞬であったが、男とイザラの瞳があった。

 それが何だか無性に恥ずかしくなり、イザラは瞳が合わないようにやや俯き気味に視線を落とした。


「ナイトを代表してアーカス、一言頼む。」

 アーカスは砂帝に、会場の者に礼をする。


「砂帝様、お誕生日おめでとうございます。

会場の皆様ありがとうございます。

何より今の私達ナイト一同がありますのは皆様が色々な方向より我々を支えていただきましたおかげです。

これからも我々、ナイトをご支援お願いします。

長々とありがとうございました。」

 拍手の中、ナイト達は職務に戻るため広間から退出していった。


「ナイト諸君は出て行ったが皆はゆっくり食事を楽しんでいってくれ。」


 イザラはこっそりと父親のもとに戻って行き、再び二人で食事を続けた。




 □ □ □




「父様、今日のパーティーは楽しかったですね!」


「あぁ、だが今日みたいに遅刻ばかりしているとナイトBに逆戻りだぞ。」


「父様のいじわる!」


「ハーハッハッハハー!」

「ンフフフッ!」

 どこの家庭にでもある笑い声を振り撒きながら二人は帰っていった。




 チリンチリンッ――




 背後からイザラの耳には鈴の音が聞こえパッと振り返るが誰もいなかった。


「?」


「どうしたイザラ、早く帰るぞ!」

 父親の呼び声が鈴の音のことなど吹き飛ばしてしまい、イザラは父親の後を追い掛けて行った。


 しかしその鈴の音が少女に黒い影を運んでいたことなどその時はまだ誰も知らなかった。







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