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トケナイ氷  作者: 朱手
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第III章指輪とナイト 19話・別れ



 テス、イザラ、サーの三人はマガとフィネラルの家の前に立ち、別れの挨拶をしていた。


「ありがとうございました。」

『サー、行っちゃう…』

「また、必ず来ます!」

『うん、待ってる!』



「ありがとうね、マガ。

またこっちに寄ったときにアレは持って来るから。」

「気長に待っとくから。」



「マガさん、色々と修行してもらって瞳が使いやすくなりました。

次に会う時にはさらに強くなっていますから……その…また手合わせしてくれますか?」

「もちろん、僕も負けないよ!」

 ニカッと笑い、イザラもつられて笑う。


「じゃあ、そろそろ行きましょ。」

 三人は手を振りながら、聖都を去って行った。




 □ □ □




 三人は何故か、あの山を登っていた。


 一部分を隠していた結界が無くなって、サーはすごい違和感を覚えていた。


 テスは軽々しく登っていたがサーとイザラは二人揃って馴れない山道に苦戦していた。


「イザラ、突然聞くけどその瞳って?」


「ご先祖様が私の血に“禁忌”の魔法を使って一族の女だけにこの瞳が現れるの。」


「そのご先祖様ってベジアス・アーシェ?」


「えっ!なんで知ってるの?」


「俺のパートナーのルプスがベジアスのパートナーだったから。」


「ふーん。

この瞳はベジアス爺様が戦争に巻き込まれた娘が奇跡的に生き返って、再び戦争で死なないように生きていけるように授けられた力がこの瞳って伝えられてる、けど本当?」


「うーん、当ってるけど、俺は娘はただ気絶していただけで死んでなかったんじゃないかなと思うよ。」


「それは違うわ!

娘のアリスは一度死んだの。

けど父親の腕の中で普通ならそこにいるだけで傷付くくらいの濃い魔力を浴びていたから、その魔力がアリスの身体を癒して生き返らせたって伝えられてる。」


「成る程。

確かにあんな熟練のナイトが何人もいたのに死んだか気絶かわからないのは不自然だ。」


「だから、アリスは一度死んだの!」


二人が会話に夢中になっていると。

「二人ともー!

早く登って来なさい!」

 話しながらゆっくり歩いていたサーとイザラをテスが呼び、急かさせる。


「すぐ行きまーす!

サー、ほら速く!」

 イザラは小走りで登って行く。


 サーも山道を少し急いで登って行った。

「行くよ!」


 テスは二人の様子を見て、微笑んでいた。


 特に力強く山道を登るサーの姿を見て、テスは驚いたがでもそれ以上に嬉しく思った。


 それはまるで幼い子供が一人の男になったかのような変化がテスを微笑ませた。


「テスさん?どうしたんですか?」

 先に追い付いたイザラは何もないのに笑っているテスに怪訝な眼差しを送る。

 するとテスは何も無いわ。とだけ言い、イザラをさらに不思議そうな顔にさせていた。


「すいません、今追い付きました。」


 サーは追い付き、それを確認したテスはスペルを唱える。


「―リーブラ―」


 するとテスの目の前に大の大人が両手を拡げるより大きい羽を持つ、蒼い蝶を三体も同時に喚び出した。


「さあ、二人とも蝶に乗って!」

 サーとイザラはゆっくりと蝶に乗るとゆらりゆらりと飛び立った。




 □ □ □




 イザラとサーの二人は始めこそはキャッキャッ言って、楽しそうにしていたが次第に飽きてしまい、早く着かないかと思うようになっていた。


「まだ着かないんですか?」

 サーはついに我慢が出来ずにテスに聞いてみた。


「あともうちょっとよ。」

 サーはその返事に元気なく頷く。



 またしばらくするとイザラは何かを指を差す。

「氷ノ国が見えてきたよ!」


 そのイザラの一言にサーは顔を上げ、目をしかめる。

 確かに小さくではあるが見えてきた。


「しっかりつかまっててよ!

今からだんだん降りてくから!」

 テスの言われた通りに二人は蝶にしっかりと捕まる。


 するとテスの蝶を先頭に急降下し始め、滑空する。


 そして三人は氷の国にあるウィザード・ウェポンの前に降りた。


「じゃあ、さっさと王宮へ行きましょうか。」

 サーはそう言うとテスとイザラが嫌な顔をする。


「シードにはサーからよろしく言っておいて!」

「氷帝って怖そうで会うの嫌だな。」

 二人は嫌そうな顔をした理由を自ら口にする。


 それを聞いたサーは二人を一喝する。

「何を言ってるんですか?

テスさんは任務を成功した証拠として来てもらわないといけないし、イザラはクーデターのことがあるからシード様に会わないといけない!」

 サーはそう言うと嫌がる二人を氷帝の待つ、王宮へと連れて行った。


「「嫌だよ〜!」」


 いや、引っ張って行ったみたいだ。







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