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トケナイ氷  作者: 朱手
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第III章指輪とナイト 17話・修行

いつもいつも更新が遅くてごめんなさい。

次もまた、更新遅るかもしれません。

でも、トケナイ氷をこれからもよろしくお願いします。


 夜が明け、カーテンの隙間からある一室に少なからず朝日が差し込む。


 その光だけでは室内はまだ暗く、テスはカーテンを全て開けて回っていた。


「サーはまだ眠っているの?」


「うん……もうすぐ目を開けてもいい頃だと思うんだけど。」


「テスさん、あと一日だけ待ってみましょ。」


『…サー……。』


 みんなの言っている事は違うが、サーを心配していることに違うはなかった。


 全員がサーの寝ている部屋の下の階の部屋にいると、階段を降りてくる音が聞こえた。


「ふぁーあ、おはようございます。

みんな、集まって何かありましたか?」

 心配させていた張本人は欠伸をしながら居間に現れた。


『サー!』

 躯のないフィネラルはまるで弾丸のような速さでサーに抱き着いた。


「うッ!

どうしたんですか、フィネラルさん?」

 勢いよく抱き着かれたものだからしりもちを着いてしまった。


 サーは周りから白い目で見られているのに気付き、ベッタリとくっつき頬擦りするフィネラルを引きはがす。


「えーと、何で俺、ここにいるんですか?

たしか、池で修行していたと思ったんですけど。」


 サーは自分が倒れて運ばれたことに気付いていなかった。

 みんなは流石に呆れて口を閉じてしまった。


「ハァー。

サーあなたは修行中に倒れて、三日三晩眠っていたの。」

 テスは仕方なしにサーに説明してあげる。


「明日の朝にはここを発つから準備なさい。

その後に修行は見てあげるわ。」

 サーはそれを聞くとすぐに準備にかかった。


 もともと最低限の荷物しか持って来ていなかったサーはものの五分としないうちに戻ってきた。


「テスさん、出来ました!」


「早かったのね。

さあ、外へ出ましょ。」

 テスがそう言うと外へ出た、何故かみんな一緒に。


「えっ、みんなで修行するんですか?」


『そう。

みんなする!』

 フィネラルは自由に浮き、飛んでみんなよりも速く外へ出て行った。


 外へ出ると、まだ昼前とはいえ初夏の太陽がサンサンと輝いていた。


「じゃあサー、見てあげるからかかってきなさい。

あっ、でも肉の解放はしちゃダメよ!

魔力が尽きちゃうから。」


「いきますよ!

   ―ルプス―」

 氷ノ血ノ剣を手にサーはかかって行った。


 テスは向かって来るサーの横一閃の斬撃を屈んで躱し、その状態のままサーの足首を蹴り払う。

 するとサーは状態を崩すが、手を付きバク転し間合いを取る。


 そしてテスの方向を見ると、首に綺麗な蒼く染められた爪が突き付けられる。


「はい、負け。」

「まだまだ!」

 そう叫ぶとテスの手首を握り、そのまま捻りながら足を引っかけ立ち上がるとテスは手首を掴まれたまま転んでしまう。


「どうですか?」


「あと、もうちょっとね。」

 再び、二人はテスがサーの首に爪を突き付けるという状態に戻っていた。

 だが、今度はさらに強く爪を食い込ませる。

「完敗です、テスさん。」

「フフッ、なかなか良かったわよ。

体制の崩れてからのバク転とあの手首を取ってからの素早い関節技は対したものよ。

ただ始めの攻撃の仕方がイマイチね。

まあその辺りはマガに聞いて。」

「ありがとうございました!」

 サーが礼を言い終わるとマガがすぐ隣に来ていた。


「その剣よく見せて!」

 サーが斬撃のことを聞こうと思ったら、マガは剣が気になるのか、サーに話す間も与えず剣に顔を近付ける。


 テスとイザラが修行を始めたのでサーはマガの手を引きながら、その場を遠退く。


「こーのーけーん………やっぱり、斬るより突くほうがいいよ。」

「そうなんですか?」

「うん。だって刀身がこんな長くて重いし剣先がこんなに堅くて尖っているから。

そうしたほうが速いと思うよ。」

 マガは的確なアドバイスをサーに送ると、ニカッと笑う。


「じゃ、次は僕らでやろ!

  ―フィネラル―」

 右腕の骨を握り、サーに見せ付ける。


「刀身は見える?」


 刀身と言われても、サーには何も見えてなかった。

「白い腕の骨しか見えません。」


「それじゃあ困ったな。

うーん。」

 マガが唸りながら悩んでいると、辺りをキョロキョロと見回すとパッと笑顔になり少し顔を赤らめて、サーの腰を指差す。


「…その…奇麗な短剣かしてほしいな……。」

 腰には氷の国を訪れた初日に不思議な女から貰った装飾の多い短剣があった。

 マガは瞳をキラキラと輝かせ、子供が親にほしい物をねだるようにサーに頼んだ。


 サーは別段気にせずに短剣をマガに手渡す。


「痛ッ!」

 マガは短剣を落としてしまい剣に触れた指を押さえる。

 爪は割れ指も切れ、血が出ていた。


「だ、大丈夫ですか!」


「んー、見かけ程じゃあないよ。」

 自然な笑顔でそう言い、剣を触らないようにしながらじっと観察する。


 隅々から内側まで見透かすような瞳で見る。


「すごいね、この剣。

魔法をかけてその上からさらに魔力を完璧に隠してる。

今も全然感じられないくらいに。」


 サーは恐る恐る軽く指先で触れ、何もないことを確認してから掴む。


「…何も……おこらないですね。」

「もうそれはいいから仕舞って!

えーと、やっぱり僕の骨でやるよ。

骨の先には魂の刃があるんだ。

それをぎりぎりまで見えるようにするからサーも見ようとして!

姉さんを見るように!」


 マガは目を閉じ、肩の力を抜く、そしてサーは瞳に魔力を集中させる。

 すると肉の契約で手に入れた領域の力によって、マガの剣が見えはじめた。


「見える?」

「あっ、見えてきました。」


マガはサーの返事を聞いて、ニヤリと笑う。

「なら、やるよ!」

 そう言って、マガは左足を半歩前に出し、骨を強く握る。


 サーは先程マガに言われたことを思い出し、突き攻める。


だが。

「そんなのダメダメ!

同じ技なんか相手にはバレバレだよ。

例えば、こうだよ!

動いたらダメだよ。」


 マガはダとメの間からその剣撃は始まった。

 連続でサー自身には当たらないギリギリを突き切る。

 パラパラと髪が切れ落ちる。

「こんな感じかな。

初めて逢った時ぐらいまで短くしたけど良かったかな?」


「ちょうど良かったです。

切りたいなと思っていたから。」

 腰ぐらいまで伸びていたサーの髪は今はもとの肩までのいい感じに切ってもらえていた。


 サーは服についた少しの毛を払い落とし、再び剣を構える。


 左手だけで握っている氷ノ血ノ剣を口の横くらいに刃を相手に向け、右手と右足を半歩前に出し、相手に対して半身に構える。


「避けて下さい!

   ―ルプス―」

 そう言い肉の解放をする。


 サーの背後に氷の壁を創り、それにすごい勢いで背中から押させて素早い突きを繰り出す。


「オットット!」

 マガは勢いに乗った攻撃を全て躱す。


避けられたサーは止まらず、さらに先まで転げて行った。


「ハァハァッ。

今のはどうでしたか?」


「満点だよ!

もう少しちゃんと肉の解放を練習したら、もっとスピードも出ると思うよ!」

 マガは血の滲んだ袖を見せる。


 サーは笑顔でその場に大の字になる。


「サー、最後に私が相手よ!」

 そう言って、サーの頭下にイザラが立つ。


「サーが寝てる間に三人に鍛えてもらって、以前とは見違える程強くなったんだから!」

 イザラは瞳をノースペルで“万鏡の瞳”になって見せてアピールする。


 サーは立ち上がり、氷ノ血ノ剣を再び握り締める。


「じゃあ、相手の体から一滴でも血を出させた方が勝ちだよ!」


「いいわよ!」

 サーのルールにイザラは乗り、二人は笑顔になる。


「行くよ!」

「やるよ!」







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