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トケナイ氷  作者: 朱手
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第III章指輪とナイト 16話・池



「何するんですか!フィネラルさん!」


 水面に浮き上がってきたサーが怒っている声を聞いた、宙に浮いているフィネラルはサーを水から抱き抱えてあげる。

『うー、サー重い。』


「水のせいでまた伸びた………。」

 髪を気にしていじっているサーを抱えながら、フィネラルは池を指差す。

『見る。』


 その方向にはサーがいた場所で、周りは凍り付いていた。


 フィネラルは浮いて移動し、氷の堅そうな部分にサーを降ろす。


「これも俺の……。」


『これでサーの魔力の領域がわかる。』


「あっ、成る程!

えーと、俺の周り1,5mくらいは何も無くて、そこから10mくらいまでが凍り付くみたいです。」


『パートナー喚ぶ。』


「はい。

   ―ルプス―」

 素直にパートナーを喚び出すサー。

 喚び出されたルプスは氷の上に座っていた。


『遅かったな。

もう少し早く喚ぶと思っていたが。』

 ルプスは肩を揺らしながら笑う。


『お前、止め方知ってる?』


『フッ、当然だ。

私が授けた力だぞ。』


「じゃあ、ルプス早く教えてくれ。」


『フンッ、まず領域凍結を無くすには肉の契約を解除するスペルがあるからそれを唱えるだけだ。

そんなことよりもサーお前には領域凍結の完全支配を修得してもらう!』


「領域凍結の完全支配?」


『そうだ。

肉の契約では普通、鎧のような物が手に入る。

ベジアスなんかが良い例だ。

奴は片腕だけを完璧に守る形だったが。

だがお前は鎧ではなく、領域だ。

お前の領域は魔力を氷に変換することができ、さらに形状を自由自在に変形させることもできる。』


「それが領域?

なら完全支配ってのは?」


『それは目茶苦茶に氷を創り出しても意味がない。

だから自分が考える氷を瞬時に創り出し、相手を攻撃する。

それをするためには領域を完全支配するしかない。』


「言ってることがイマイチ……。」


『実際にやってみれば少しは掴めるだろう。』


『あたし手伝う!』

 フィネラルは手を挙げて、主張する。


『まぁ、邪魔にならんようにな。

まずは今のサーの領域の範囲を知ることだ。』


「それはフィネラルさんとやった。

1,5mくらいまで何も無くてそこから10mくらいが凍り付く。」


 フィネラルはうれしそうにニヤリと笑う。

『チッ。

なら領域を小さくしろ!

魔力の具象化と要領は一緒だ。』


 サーは眼を閉じ、肩の力を抜いて、領域を小さくする。


『そうだ。

よし、その状態を保て!』


「ルプス、次は?」


『次は領域に魔力を放ち、凍り付かせろ!

これは魔力の具現化と同じ要領だ。』


 サーは魔力を放つ。

 すると、サーの周りに氷の膜が、壁がと張り出し、いつの間にやら氷の球体が出来上がっていた。


『サー、次に領域を最大限に拡げ、そこの女を攻撃しろ!』


『あたし!』

 フィネラルは自分を指差し、驚く。


『手伝うのだろう。』

 笑うルプスを横目に、フィネラルはサーの攻撃に集中する。


「フィネラルさん、いきます!」


『負けない!』


 氷の球体にひびが入り八つに割れる、すると氷から鎖が飛び出し攻撃を仕掛けて来る。


 フィネラルはそれを全て躱し、氷が尽きるのを待った。


『サー、放った鎖からさらに攻撃を繰り出せ!』

 ルプスの声が響く。


 すると鎖から針が飛び出す。


 だがフィネラルはそれをも簡単に躱していたら急に攻撃が止む。


『どうした?終わり?』


 フィネラルは未だ連なっている氷の鎖に気をつけながら、辺りを見回す。


『大変だ。

女、サーを助けろ!』


 岸に渡っていたルプスの声でサーの方を見ると、形の崩れた球体の中に姿がない。


 すぐその真下に落下していくサーがいた。


『キャァァアア!』

 フィネラルは叫ぶながら必死に助けに行く。


『   ―護れ

    彼の者を

   堕ち逝く者を

    救い上げよ―』

 フィネラルが即興で創ったスペルのおかげで風が吹き、軽くサーの躯が宙に浮く。

 そこをフィネラルが抱き抱え、岸まで連れて行った。


『もう魔力が尽きるとは軟弱な!』


『気を失った、魔力尽きたからだけ?』

 心配で泣きそうになっているフィネラルはサーを大事そうに胸に抱きながら、ルプスに問う。


『それだけだ、サーならすぐに目を覚ますだろう。

私は還るとする。

領域はサーの両瞳の中に消えているから屋根の下に寝かしても家は凍らないだろう。

サーにも瞳のことは伝えておいてやれ。』

 そう言い残すとルプスは還っていった。


 一人残されたフィネラルはサーの両脇を抱え家の方向へ飛んで帰って行った。


 未だ消えてなかった白い道の中。







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