第III章指輪とナイト 13話・契約“肉”二
二話同時投稿です。
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淡い白い光に満ちていた。
いやそれしかなかった。
ひんやりとした空気に包まれながらサーは立っていた。
以前に来た時とは変わった世界にいた。
以前は何もない世界に立っていたが今は光や冷気などの魔法元素もあり、目に見える物が多くあった。
サーは辺りを見回す。
ルプスが見当たらない。
「おい、ルプス!
どこいるんだ?」
返事はなく、虚しく響くだけ。
サーはしばらく歩いていると一枚の鏡があるのに気付いた。
「この鏡は――」
この鏡は中に階段があり、魂の契約を結びに来た時に登った物だった。
サーは引き寄せられるように再び階段を一段一段登っていった。
カタンッ、カタンッと足音がいやに高い音で鳴る。
そんなことも気にせずにサーは登って行く。
着いたがそこは以前と変わらず、何も無かった。
「我が名はルプス!
―この城の主
この世界の鏡
我が主に捧げる
躯の記憶に残りし
強き猛者を
この世にうつし出せ―」
彷っていたサーの耳にルプスがスペルを唱えるのが入った。
「サー、もうすでに契約のための試練は始まっているぞ。」
ルプスの声はその一言を最後に聞こえなくなった。
カタンッカタンッと足音がする。
サーが登ってきたのとは別にある向かいの階段から足音が聞こえてくる。
『サー、あたし来た。』
サーの耳には少し前まで話していた声が。
サーの鼻には少し前まで嗅いでいた香りが。
サーの目には少し前まで見ていた姿が。
サーはルプスのスペルからして今まで出会ってきた人のなかで一番強い人が現れるとなっていたからてっきりシードやトラクトのような者が現れると思っていた。
だが現れたのは幼い氷帝や老いたナイトΣではなく美しい女の魂と力だった。
そうフィネラル・ムーンレスだった。
しかもこの世界ではフィネラルには肉があった。
『サー、これは試練。
あたしを倒せ。』
そう言うと右手には冷めたような紅い色に染まった刃をした大鎌が握られていた。
よく見るとその色はフィネラルの瞳と同じ色だった。
『構えて、行くよ!』
フィネラルはまっすぐにサーを切り掛かって来る。
サーも氷ノ血ノ剣を出しフィネラルの攻撃を防ぐ。
フィネラルが相手だというだけでやりにくいのに鎌の攻撃一つ一つが重くサーは反撃をする機会を失っていた。
「クッ、これならどうだ!」
そう叫ぶとサーは鎌の刃ではなく、柄の部分に剣をあわせた。
すると鎌の刃は飛んでいき、フィネラルが持っているのは棒となった鎌の柄だけだった。
『やられちゃった。』
フィネラルは不満げに棒の切断面をまじまじと見ながら話す。
「これで肉の契約の試練は終わりですか?」
不満げな顔が無邪気な笑顔に変わる。
「まだまだだよ!」
サーはその笑顔に何か、恐怖のようなものを覚えた。
フィネラルは棒を槍のように構え、魔力の弾を両端に一つずつ創る。
『避けさせない!』
棒を回転させ、フィネラルは目の前で魔力の弾の残像で真円を描く。
そしてその円の中に魔法陣が映り出す。
『―Iron Maiden―』
そうエンシェントスペルをフィネラルが唱えると魔法陣がサーの足元に現れる。
サーは魔法陣から走り逃げようとしたが魔法が発動するほうが速かった。
サーの両脇に半分に割れた女神の像が現れた。
内側が刺だらけの女神の像。
それらはサーを中で挟み、串刺しにした。
サーは手も足も出ずにやられてしまった。
『終わった、さよなら。』
今回のエンシェントスペル「Iron Maiden」は拷問器具、鉄の処女のことです。