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トケナイ氷  作者: 朱手
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第III章指輪とナイト 9話・鎧



「ナッ、マガ・ムーンレス!」


 男は一歩退り、両手を構える。

「―snap―」

 スペルを叫ぶと連続で指を鳴らし、音の斬撃がマガを襲う。


 だが、マガはあの手の骨で払い除けてしまい一つとして斬撃は当たらなかった。


「姉さん、僕が闘ってる間、あの二人を護っていてあげて。」

 マガがそう言うと、サーと女は何か温かいモノを感じ、不思議と安心できた。


「僕の友達を傷付けた、君を僕は壊すよ!」

 マガは魔力を躯中に纏う。


「いくよ。

  ―フィネラル―」


 魔力によって煙があがり、姿は確認できないがあまりの魔力にボロボロのサーと女は気絶しそうだった。


 かすかな意識の中、二人の瞳には煙の中から白い鎧に身を包んだマガが映った。

「…“鎧骨(ガイコツ)”……」

 男は息を飲む。

男の顔は次第に青白くなり、嫌な汗もかき始めた。


「これを知ってるんだ。」

 マガは鎧の中で無邪気な笑みを浮かべる。


「それが“禁忌”を犯して手に入る力……。

流石は四ノ鍵番の中で最強とうたわれる“黒き非悪の咎人”。」


「あんまりその名前で呼んでほしくないんだ。」

 マガの不機嫌な声が男の耳に入るとマガの姿が視界から消えていた。


 肩に少しの冷たい感覚が、そして血が流れ出るのを感じる。


  「―step―」

肩を斬り落とされる前に男はマガに攻撃し、間合いをとった。


 男は白い鎧をよく観察してみる。


 すると、右腕の肘くらい先からだけ鎧がなかった。


ニヤリと笑うと、ポケットの中を確認する。


 中には爆弾が数個あり、全て違う種類の爆弾であった。


 睨み合いが続く。

 先に動いたのは男だった。

タイミングを見て、爆弾を投げる。


 投げた爆弾は空中で大きな音とともに光を放ちながら爆発した。


 これは目と耳を潰すための物だろう。

マガは目は無事だが、耳がやられてしまっていた。


「あれ?なんかおかしくなっちゃった。」

 本人はあまり気にしていない様子だった。


 そして一つを残して、爆弾を三つを投げ付け、スペルを唱える。


 「―explosion―」

爆発音が何千何万の針となりマガの全身を襲い周囲がハチの巣となっていた。


 だけど、マガ自身は一切の攻撃を受け入れてはなかった。

「無駄だよ。僕にはこの鎧があるからね。」

コツコツと生身の右手で握っている手の骨で鎧を叩いて、余裕さをアピールする。


 だが、男は最後の爆弾を握り、叫ぶ。

「こうなれば………。

   ―roar―」


爆弾は爆発するが、音は聞こえない。


マガの目から見ると、爆発があった空間を中心に異変があるのがわかった。


 音とは空気の揺れ。

それを圧縮し、固める。


流石に危険を感じたマガは簡単な魔法で盾を創る。


  「―bark―!!」

 銃声のように洞窟内に鳴り響いた、しわがれた声と共に音が一直線にマガを貫こうと飛んでいく。


魔力で出来た盾は音をたてながら崩れ落ちた。


「フー、今のは生身なら死んぢゃっていたよ。」

マガは鎧のホコリを払いながら笑う。


「馬鹿が。

   ―clap―」

 男はさっきの魔法を放った後でマガの右腕を狙って近距離に近付いて来ていた。


 だがマガはまだ笑顔のまま。


 そのまま無邪気に手の骨を振り落とす。


 男の手が合わさる。

 地面と。


「グッ、ァァアッ―――」

 今まで体験のしたことのない程の痛みに叫び声を上げながら、その場に倒れ込んでしまう。


 マガは鎧骨を解く。


「もう無事だから、姉さん二人を放しても大丈夫だよ。」

 マガがそういうと温かったナニかはなくなったのをサーも女も感じた。


「ありがとうございました、マガさん。」

 サーはマガに礼を言いに行く。


「友達のためなら仕方がないよ。

で、その子は誰?」


「アッ、えーと、名前を教えてもらえますか?」

 サーは少し照れながら、女の名前を聞く。


「わたしの名前はイザラ・アーシェ。

イザラでいいわ。」


「アーシェ……。

それにその瞳………。」


 サーは何かに引っ掛かった。


 サーが何かを考えてる間に横でマガとイザラは愉しそうに会話が弾んていた。


 サーはそんな二人を見て、ふと後ろを振り向くと男が何かをしようと藻掻いていた。


  「―step―」

 そう叫ぶと、足を振り上げ地面に着こうとする。


「させるか!

  ―地を賁るは

    千の影

   月にうつるは

    万の牙

   敵を噛み砕け

  “千狼万牙”−」

 サーは水火ノ壺から水を出しながらスペルを唱え、水は狼の形をした氷となり男を襲う。


 男の顔が恐怖に歪むと一匹の狼に足を噛まれ、それを合図に次々に狼が男の足、腹、首、頭に噛み付き男は悲鳴も上げれずにズタズタに噛まれていった。


 ボロボロなサーの魔力では30秒程しか保たず狼は消えていった。


「あっありがとう。」

「助かったよ。裸じゃ痛いからね。」


 サーは疲れ果て、大の字に寝転ぶ。


「どうしたの?」

「大丈夫!?」

二人はサーの顔を見ると元気そうなのでそれ以上心配しなかった。

 一応イザラは簡単な治療をサーに施した。


 少し三人は休憩した後、立ち上がって帰ろうとした時、ズタズタにされた男の狂った声が耳に入る。

  「―release―

ハーハッハッハ!

お前達はここで死ぬんだ!

ハーハッハハハー!!!」


「まだ生きてたんだね。」

 マガが冷たく言い放つと剣を振り落とそうとした瞬間に地面が揺れた。


「ハーハッハー!

この洞窟は魔力だけで保っていたがそれも解放した!

もう皆生き埋めになって死ぬしかないんだよ!」


 地響きがより激しく鳴る。


 三人にはもう洞窟の崩壊を止める程の魔力はもうない。


 死の迫る地響きと気の狂った笑い声の中、三人は絶望の色を隠せなかった。







今回初登場のエンシェントスペルの意味です。

explosionは爆発音


roarは轟音(響めく音)


barkは銃声


releaseは解放でした。


これからもトケナイ氷をよろしくお願いします。

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