第I章女王とナイト 3話・出会い
「ふぁーあ。」
今は夜明け前。
薄闇の中でサーは1人で氷の国を目指し大きなあくびをしながら歩いていた。
ルプスがいないのはまだ寝ているからだ。
出発時にサーが喚び出してみたら寝ていて起こそうとしても起きない始末。
仕方がないのでルプスを戻しサー1人で歩いていた。
−−数時間後−−
(疲れたな。
それに腹が減ってきたしな。
何か食べよ。)
サーはカバンの中の食料を適当に探り取ってみると手が掴んだのはりんごだった。
それはサーの家にあったりんごだ。
サーはそれをシャキシャキかじりながら歩き続けることにした。
りんごは甘くみずみずしく、サーの疲れを紛らしてくれる。
「おいしかった。
気分もいいし、そろそろルプスを呼び出してもいい頃かな?
―ルプス― 」
サーの隣にすまなそうな顔の狼が現れた。
『おはよう。サー。
今朝は その……すまなかった。』
ルプスは呼び出された途端にサーに謝る。
「別にもういいよ。
でもそのかわりちょっと背中に乗せてってくれない?」
サーは朝のお返しだと言わんばかりにそう言い放つ。
『あんまり人を乗せるのは好きではないが仕方がない。
乗れ。』
サーは笑顔でルプスに静かに乗る。
『しっかりと捕まっていろ!』
とルプスが言うか言わないうちに走り出す。
ルプスの背中は氷に覆われているが全然冷たくない。
10分ぐらいルプスに乗っているとサーの目に湖が映る。
「ねえー
ルプスー
あの湖でー
休憩しよー」
とサーが言うとルプスのスピードが若干速くなった気がした。
その湖はとても綺麗で広かった。
ルプスは湖に着くと一生懸命に湖の水を飲んでいた。
「ねぇ、ルプス
この湖の水もらってもいいかな?」
『別にいいだろ。
浴びる程あるんだ、だが何にするんだ?』
「水火の壷に入れようと思って」
サーの手には小さな壷が握られていた。
壷の栓をとって湖の方に向けた途端に湖の水が吸い込まれていく。
『すごいなぁ!』
ルプスはただ単純に驚いていた。
壷がまんたんになると栓が勝手にしまった。
「これ2個で金貨1枚しないって……あの店経営大丈夫かな。」
などとサーとルプスは少し話しながら休んでいた。
すると近くから
「キャー!誰かー助けてー!!」
と叫ぶ女の声がする。
「ルプス、聞こえた?」
ルプスは頷く。
『助けに行くか?』
「もちろん」
サーはルプスに乗り、声のした方へと走りだす。
行ってみると10人以上の男達がサーと同じぐらいの年の女の子を囲んでいた。
その集団の中に突っ込みサーはルプスから飛び降り、女の子の手を掴み腰に挿した剣を抜く。
ルプスは女の子の1番近くにいた太ったスキンヘッドの男の首筋に噛み付いた。
女の子は少し興奮してはいたがサー達が敵ではないという事は理解してくれているみたいだ。
「ルプスこっちに戻って来い。」
ルプスは噛み付くのをやめ、敵に背を向けずに下がって来た。
男達はグヘヘヘと不気味な笑みを浮かべながら近付いてくる。
「お前ら今なら見逃してやる。
早く立ち去れ!」
サーの言葉を聞き男達は笑い出す。
「何が今なら見逃してやるだ!
ナメんなガキが!」
男達が次々に叫び出す。
「そうか。仕方がないな。
ルプスその子を守っていろよ。」
サーはさっき水を入れた水火の壷の栓を外した。
すると大量の水が流れ出て、それに併せてサーは得意な魔法を唱える。
「 −地を賁るは
千の影
月にうつるは
万の牙
敵を縛めよ
“千狼万牙”−」
そう唱えると流れ出た水が狼の形を象った氷になり男達に次々に襲い掛かかって行き
ついには男達は凍り付いてしまった。
「早く逃げよ。」
と言いサーは呆然としている女の子の手を引き、さっきの湖まで戻って行った。
また読んでいたたきありがとうございました。これからもがんばって更新するので読みに来て下さい。