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トケナイ氷  作者: 朱手
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第III章指輪とナイト 3話・情報

更新遅れてごめんなさい。


 冷たく錆びた鉄格子の牢屋に女が一人鎖で繋がれていた。

牢屋の壁は岩を積んで造られており、じめじめした空気のせいで岩も嫌に湿っていた。


女はそのじめじめした空気の中に魔力を感じていた。


「テス・プライ、貴様の強情さにはまったく驚かされるよ。」

 暗闇の中にしわがれた声が響く。


「フフフッ、私があなた程度の言葉ノ鎖に囚われるとでも思ったの?」

囚われている身でありながらもテスは敵に屈せずに気丈に振る舞っていた。


「今貴様の置かれている状況が分かってないようだな。」


空気に紛れていた魔力が濃くなるのを感じた。


「脅しのつもりかしら?

私には幻影や祟呪の類は意味を成さないわよ。」


敵の男は闇に包まれていてもわざと嫌らしさを出すためのようにニィと笑うのがわかった。

「今貴様は魔力を封印されている状況だとくらいは分かって言っているのか?」


「魔力がないのに言葉ノ鎖にかからないのはどう説明するつもりなのかしら?」

 テスも闇で見えない敵に対して負けずに笑って見せる。


その言葉を聞いた男から笑顔が消えた。

感情が顔に出やすいタイプらしく男の顔には苛立ちの色がうつる。


「負け惜しみが。

なら、さっさと魔法で鎖を切って逃げて見せろ!」

男はそう言うとさらに暗い闇の中へと消えて行った。



「………今はまだなのよ。」




□ □ □




 埃っぽい部屋に騒音が鳴り響く。

部屋には木箱や様々な色の液体が入ったガラス瓶などが埃を被ってはいるが綺麗に並べられていた。


その部屋の騒音が一段と大きくなると部屋中に目映いばかりの光が部屋の一番奥から放たれる。

 大きな光が放たれた後、部屋に静寂が訪れる。

奥にある可笑しな形の装置の扉が煙を上げながら開かれるまでは。


「ゲッポー。

せっかくの服が真っ黒ですよ、まったく。」

サーはテスの店で買った白っぽい服が黒く煤けていた。


「身体が痛いとかなんかは何もないじゃないですか。」


サーは煤けた服を払いながら男を見る。


「では、情報をもらい次第、テスさんを捜しに行かせてもらいます。」


「そうですか、分かりました。

では、こちらです。」

男の後にサーはついて行った。

暗い物置にいた二人は明るい方を目指して歩いて行った。


サーは光を見るのがすごく久しぶりに感じた。

しかし、時間では5分と経っていないのに。


「サーさん、これが社長の情報です。」

青い石と紙を手渡された。

「なんですか、この石は?」

サーは石を光に翳して見る。


「その石は“記憶の鉱石”と呼ばれる石です。

その石に魔力を篭めると一分くらいの音声と映像を記憶させることが出来る我が社の製品です。

ただ一つ欠点がありまして……」


「欠点って何ですか?」

 サーは急かさせる。


「再生が一度しか出来ないんです。」


「それだけなら、別に大丈夫じゃないですか?」


「サーさんが大丈夫ならいいんですが。」


「なら、見せてください。」

サーは男に石を渡した。


「私は遠慮させていただきます。

この中にどんな内容が入っているか分かりませんから。

ではごゆっくり。」


男は部屋を出て行くと石が光を放つ。

光は散乱としていたのがいつの間にか一つに集まり、人の姿を現す。


 光はテスの姿だった。

「誰か知らないけど、中途半端な強さの人ならこれから先の映像は見ずに強い人に渡してもらえないかしら?




未だに見ているということはきっと貴方は強いナイトなのね。

私は今、聖都の近くにある山の鍾乳洞に閉じ込められているの。

敵は聴覚からの祟呪だから。

それじゃ、助けに来」てね、とでも言い終わる前に石の映像は途絶えてしまった。


サーは石を拾いポケットに入れ、一緒に渡された外の資料にも目を通した。


「へー、テスさんって“蒼き未了の魔女”って呼ばれているんだ。」

サーは新たな発見をしながら男に挨拶をしてから店を出た。


「鍾乳洞か。

どこの山か分からないけど、近くに行けばわかるかな。」


サーは少し曖昧な考えを持ちながらテスを助けるため聖都の方角へ歩き出した。





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