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トケナイ氷  作者: 朱手
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第III章指輪とナイト 2話・公私

「テ、テスさんは―――

テスさんはどうしたんですか?」

 サーはシードに歩み寄る。


「なんじゃ、テスとは顔見知りか。

ならば話は早い。

実は奴は“四ノ鍵番”の一人なんじゃ。

今はフリーのナイトじゃが昔は我が国のナイトとして働いてくれていた。

つい先日、ナイトの仕事を請け負ったようなんだが、その仕事中から行方が分からなくなっておるみたいじゃ。

それで奴の部下から捜索依頼が来た。」


 テスの本当の姿を教えられたサーもルプスも唖然としていた。


「これは行方不明になった仕事の依頼書らしい。」

 サーは先程からシードが取り出していた紙を受け取る。


 紙の中身は今からちょうど一週間前、水の国から聖都に向かう途中に盗賊に依頼主の娘がさらわれたので助けて欲しいとの内容だった。


「テスさんは盗賊に?」


「おそらく………。

テスほどの者がやられたのだ。

相手はただの盗賊ではないだろう。」


「まさか、この前の?」


「聞いた話では、ブラッドもかなり苦戦したらしいの。」


「ハイ。

“アラアラ”とよく言う女がかなり強い魔法使いでした。」


「“アラアラ”?」


「どうかしたんですか?」


「いや、わらわの推測なのじょが、そやつはたぶん誰かに操られているぞ。」


「え、どういうことですか?」


「“言霊ノ鎖”じゃ。

“言霊ノ鎖”とはある言葉を一定時間内に言わせるとその間だけその相手を操ることが出来るという技じゃ。」


「そんな技があるんですね。」


「旧砂帝軍のナイトの中に昔、音呪の使い手がいたと聞いたことがある。

そやつはクーデターを起こそうとして失敗し、そのあとは行方知れずと聞いていたがな。」


「そんな奴を俺達で倒せませんよ。」

弱気なサーをルプスは睨む。


「じゃが、相手が店の人気に関わるから秘密裏にしてくれと言われているのじゃ。」


「そんな、師匠かブラッドさんのどちらかだけでもだめですか?」


「トラクトは有名過ぎてだめじゃ。

ブラッドは修業の旅に出るとか言って出て行った。」


『サー、私達だけでも大丈夫だ。

所詮はクーデターも失敗してるしな。」

 ルプスはサーを元気付ける。


「そうじゃルプスの言う通り、わらわは信じているからな。

それでまず水の国へ行け。

そして、ウェザード・ウェポンに寄ってから聖都には向かえ。

では、頼んだ。」


 サーとルプスは宮殿を出て、自分の宿へ帰って行った。


「いいのですか、シード様?

二人だけで行かせてしまっては。」

「奴一人で行かせるのにはおぬしも賛成したじゃろ、トラクト。」


「…………。」




 □ □ □




「ルプス、宿に帰る前にこの国にあるウェザード・ウェポンに寄っていいかい?」


『好きにするがいい。

だが、私を戻してからにしろ!』

ルプスは早く指輪を取り返したくて、ついつい苛立ってしまっていた。


「ありがとう。」

サーはルプスを還すとウェザード・ウェポンへと向かって行った。



「いらっしゃいませー」

店に入ると同時に営業スマイルを振り撒く女性店員が少し高めの声で挨拶をする。


「お客様、何をお探しで?」


「客じゃないんですよ。」

 サーがそう言うと店員から営業スマイルが消え、店の奥から誰かを連れて来た。



「話は聞いてます。

サーさんですよね?」

 黒いスーツの男が出て来て店の奥にサーを案内する。


 行き着いた部屋はソファー二つが向かい合い、間に机があるだけの狭い部屋だった。



「すいませんが今日はどのような御用件で?

確か、会うのは氷の国の店舗でだったはずでは。」


 男の言葉を聞き、シードに言われたことを思い出す。


「すいません、少しでも早く情報が欲しくて。」


「熱心なのは大いに結構です。

ですが、情報などが入った物は全て氷の国の店に置いてきてしまってるのですが。」


「そうですか。」

 サーは少し俯く。


「では、今から行きましょうか。」


「えっ?」

 サーは俯いていた頭を上げる様はなんともまぬけだった。


「我が社には荷物の転送装置があります。

それを使えばすぐにでも氷の国へ行けます。」


 男が手の先にはいかにも怪しい機械が置かれていた。


「これがその装置ですか?」

 サーは何か身の危険を感じる機械に後ずさる。


「そうこれこそが我社の世界一の質量を転送することが出来る転送装置。」


(ダセー!なんてダサい機械なんだ。

サーはあまりのダサさに笑い出しそうになるのも仕方がないくらいにその装置は無駄な装飾が有り得ないくらいまでに付けられていた。


「……一ついいですか?」


「何でしょう。」


「失礼かもしれませんがこれって危険とかありませんよね?」


男は転送装置の扉を開ける。

「私も一緒に行くのですから、危険がないとは言えませんがほぼゼロですよ。」


男は説明しながら中へ入って行き、サーも男の言葉を信じて入って行った。


「では、行きますよ。」


 男がそう言うとサーは身体に何か圧力を感じながらも我慢した。


そして急に楽になったかと思うと機械音が響き渡る部屋から二人は消えて行った。







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