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トケナイ氷  作者: 朱手
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外伝I過去と悪夢 1話・情け

外伝は時間軸をずらしてサーの時代より1000年程昔です。サーはルプス視点でのみこの世界を見ています。

過去は消えない、変えられない。

あるのは真実のみ。


悪夢は夜に訪れ、苦しめる。

残るのは虚無のみ。


だが、魂には嘘や実有もある。

魂が映す過去と悪夢には全てがある。

けど全てが歪に歪んでいる。


なのに、残酷に歪んだ過去だけが歪まずにあった。




 □ □ □




「ルプス、この辺りにはもう誰もいないんじゃないかな。」


『あぁ、もういないだろう。』


生命一つとしてもういないだろう。

いや、残されてはいないだろう。


戦争“デザート・ウォー”が始まり、明日さえ拝める保障がない毎日を生き抜くためにこの男は任務をこなしていた。


任務の内容は“水の国の外れにある湖に潜む氷帝軍ナイトの殲滅”だった。

そしてこの男は今やり終えて湖は紅く染まっていた。



この戦争“デザート・ウォー”の原因は砂帝が氷帝と雷帝に攻撃したのが全てだった。


そして、ルプスのパートナー“ベジアス・アーシェ”も砂帝軍ナイトの一人だ。


「ルプス、次に行こうか。」


二人は紅い湖を後にして次の戦場へと向かって行った。




「確かこの辺りのはずなんだけどなぁ?」

ベジアスは周りを見回して目的地を探していると。

ベジアスのこめかみを矢が掠める。


「誰だ!」

怒鳴りながら振り向くとそこには武器を持った子供と女が15人程立っていた。


『ベジアス、たぶん奴らが次のターゲットだ。』


「ルプス……?

まさか俺にあの女、子供を殺せと言うのか?」


『殺らなければ殺されるのはお前だぞ。』


ルプスの言葉通り次の瞬間、女は魔法を子供は矢を放ち出す。


「クッ、すまない。

   ―うつるは 

     月

    崩すは 

     刃

    留めるは

     白

    全てを

     白に

    “波紋”―」


女、子供を命の別状はない程度に凍らせて、ベジアスは走り去って近くの洞窟に隠れた。



 □ □ □



「ルプス。僕は砂帝は間違ったことをしてるのではないかと毎日おもう……。」


『ベジアス、間違ったとはなんだ?

お前は砂帝軍のナイトだ。

主を信じれないというのか?』


「僕が砂帝の下で働いているのは事実だ。

けど砂帝のせいでこの戦争は起こった。

それも変えられない事実だ。」


『この戦争は砂帝のせいで起こったかもしれんが必ずしも起こした者が悪い訳ではない。』


「でも女子供を殺さなくてもいいんじゃないか?」


「戦争とはそんなものだ。

割り切って仕事をしないと魂が壊れるぞ。』


「割り切って?

そんなこと出来るはずがないじゃないか!

僕にはさっき攻撃してきた子供とそう変わらない歳の娘がいるんだぞ!」


辺りに沈黙が漂う。


「僕は人を殺し過ぎた……。

きっと戦争はまだまだ続いて僕はさらに人を殺すだろう。

もう嫌だ………。」


ルプスは黙ってベジアスの言うことを聞いていた。


「敵が死ぬ覚悟が出来たナイトだけなら何も言わないが―――。

何故、女や子供なんだ?」


ベジアスはさっきの情況に疑問を抱き、悩んでいた。


『もしかしたらあのなかに強いナイトが隠れていたらお前の本当の妻と娘が危険になるんだ。』


「そんなことを言っても……」


『だから割り切れと何度も言っているのだ!』


二人はそのまま黙ってしまった。

その後も口を聞かずに一日が終わった。




 □ □ □




『起きろ、ベジアス。』

ベジアスはゆっくりと起き上がる。


『私の予感は的中してしまったようだ。』


ベジアスはルプスが何を言っているのか理解出来ず洞窟から出てみると自分の国の方向に大きな煙があがっているのが目に入った。


「ルプス、背中に乗せてくれ。」


『早く行くぞ!』


ベジアスを背に乗るとルプスはすごい速さで走り出す。


だが、ベジアスは満足出来なかった。

「もっとだ!もっと早く走れ!」


ルプスは魔力を使い、さらに速く走る。





10分とかからない間に砂の国に着いた。


ベジアスにとっては地獄のような情景だった。


砂の国の城壁は崩れ、敵の侵入を許してしまっていた。

城下町からは火が煙が出ており、民は逃げ惑っていた。


「ミザリーとアリスは。」

ベジアスは妻と娘の無事を祈りながら、燃える城下町へと入っていった。





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