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トケナイ氷  作者: 朱手
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第II章騎士団とナイト 5話・初仕事



「力だ……ルプス、おいルプス、魂も肉も何もかも、何もかもやる…


……力が全てなんだ!!

ハッハッハハハッーーー!!!


ハーハッハッハ、ウッ・・・


ウ。ヴォァッ

ヴォォォァァァァアアアッッッーーーー!!!


チカ…らがすべ…テを………」




絶望を楽しむような笑い声と

崩壊し狂いながらの叫び声が

血に染まった戦乱の中響き渡る。


その姿は魂を無くし、肉は頭と心臓そして欠片程度の血肉だけ。


それはもう人間ではない“別のナニカ”へとなっていた。


その“ナニカ”は力の塊、いや力と欲望の醜い残骸として存在していた。


(やはりなってしまったか……。)


自分が侵した罪を悔やむ狼は罪を償うために“ナニカ”へ向かって行った。






「―――きぬか。コラッ、起きろ!」


サーは何が起こったかもわからずに跳び起きた。

「フォッ、フォッ、面白い起き方じゃな。」


(また、あの夢……

出て来るのはルプスと契約の時の男……

でもあの姿……)


サーが悩んでいるとトラクトが話し掛ける。


「おぬし、具現化も出来たようじゃな。」

トラクトは二つに割れた氷の珠を指差していた。


「え、はい、ブラッドさんにアドバイスしてもらったら出来るようになりました。」


「ほー、ブラッドが。

まぁ、よい。今日からは仕事をしながらの修行になる。」

「ハイ!分かりました!」


「うむ、初仕事のためにまずこれを書いてくれ。」

そういいながら何処からか一枚の紙を取り出した。

「何ですか、これ?」


「なーに、簡単なアンケートのような物じゃ。」


サーはその場で書き終えトラクトに手渡した。


「ふむ、ふむ、ほーおぬしまだ18か、若いのう。」


トラクトが紙を見ていると。

「師匠!

そんなもの見てないでさっさと仕事に行くぞ。」


急に現れたブラッドは待たされ続けたからかイライラした口調だった。


ブラッドがいたことに気付かなかったサーは驚いていたがトラクトはそうじゃなと落ち着いて言いながら二人は移動し始め、サーは後を追い掛けて行った。




 □ □ □




氷帝が治める国は氷・水・凍の三国である。


そして今から三人がすることは氷の国の外れにある灯台へ貴重な荷物を届けること。



「ハァ、ハァ、ハァ」


「しっかりせんか!

わしよりも何倍も若いのじゃから!」


サーは一人、大量の荷物を持たされていた。


「し、師匠、休憩にしませんか。」


まだ夏のような暑さの中を歩き始めて一時間と経ってないがサーは修行での魔力消費のせいか疲れやすくなっていた。


「なんじゃ、もうへばったか。

だらしがないのう。」


「師匠、この先に川があるからそこで休むとしよう。」

ブラッドは地図で確認しながらしゃべる。


トラクトは仕方がないなと休憩することに同意して、一行は川へと歩いて行った。



「ハー、生き返った!」

サーは頭ごと川につけ、川の水をゴクゴクと飲んでいた。


その様子を見て、トラクトとブラッドはあることに気付いた。


「ワンコロや、おぬしは契約どこまでやったんだ?」


「今はまだ魂だけです。」


「魂だけでその髪……

師匠、サーの髪さっきより伸びてないか?」


ブラッドの言う通り、水を飲んでからサーの髪は少し長くなっていた。


「やはり……

ワンコロ、おぬしの魂の一部になったパートナーの魂が安定を求めて、おぬしの肉や力を徐々に契約した状態にしようと侵食しているのじゃ。

その髪はいわば前兆じゃ。

後、何か変な夢も見てるじゃろ。」


「はい、今日も見ました。」


「意外に深刻やもしれんのぅ。」


サーはつきつけられた事実に困惑していた。

「……それで、俺はどうなるんですか?」


「なーに、魂が暴走しやすくなるだけで平気だ。」

ブラッドが楽観的に言うのでサーは安心したが。


「じゃが、暴走してしまったら最悪の場合……」



「そんな!

まだ、18年しか生きてないのに!」


「大丈夫だ。

死ぬのは百人に一人ぐらいだ。

それに暴走がきっかけで強くなったナイトもいる。」

ブラッドの強くという単語に反応した。


「強く……。」


「まぁ、今日の仕事が終わったら夢だけならどうにかしてやろう。」


「ありがとうございます。

さぁ、俺も回復出来ましたので行きましょう。」


サーが少し無理に明るく振る舞っているように二人には見えたが気のせいだろうと思い、先を急いだ。





相変わらず、荷物はサー一人で持っているがさっきの川で休憩してからは全然疲れた様子一つと見せなかった。


さらに、サーは年代の近いブラッドと楽しそうに話をしていた。


その時突然、ブラッドとトラクトの眼が変わった。


「チッ、囲まれているぞ。」


「数は13、14、15、16。

16人囲まれているようじゃ。

ふむ、おぬしら二人は先に行け!

荷物に傷が付いても困るからのぅ。」


トラクトがそういうとブラッドは全速力で走り出し、サーはトラクトに睨まれやっと走り出した。


それを追い掛けようとする影が急に動けなくなった。


「待て、何処の馬の骨か知らんがわしが相手してやろう。」


トラクトがそう言うと隠れていた者達が出て来た。


「久しぶりです、トラクトさん。」


「おぬし達は……、チッ。」


(ワンコロにはこの戦い厳しいかも知れんのぅ……。)






「ハー、ハー、ブラッドさんもう大丈夫ですよね?

こんなに走ったんですだから。」


「いや、こっちも囲まれちまったみたいだ。

やるぞ、サー!!」





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