第I章女王とナイト 1話・試験
書いてみました。がんばって更新するので読んで下さい。
俺のまわりにいるのは
俺を嫌い近づかない奴か
それを可哀想がり近づく奴だけ……。
俺の外見は不幸を呼ぶ色によって包まれている。
いや、色を無くす色によって。
その色はどこにでも混じり徐々に色褪せさせる。
人は俺を不幸とは呼ばない。
俺のまわりを不幸と呼ぶ。
この世界は色を大切にする。
それゆえに俺は嫌われた。
俺の色は―――
□ □ □
たてつけの悪いドアが耳障りな音を廊下に鳴り響かせながら若い先生はまた出て来た。
「次の者、入って来なさい。」
言われた通りに人がまた一人、部屋の中へと入っていく。
次に呼ばれる長い白髪が目立つ少年は人がたくさん並ぶ廊下に静かに立って順番を待っていた。
一生を左右しかねない試験で緊張しない者はそうはいないだろう。
その少年も例外ではなかった。
その少年は緊張のせいで、ただでさえ白い顔がさらに青白くなっていた。
「次の者、入って来なさい。」
「ハイッ!」
少年は大きな声で気を紛らわしながら立ち上がる。
汗ばむ手がドアノブをつかみ、一呼吸してから捻る。
色が広がる部屋に入る。
部屋には試験官の老人二人と若いドア係の先生がいた。
少年は1歩ずつ中へと入って行き、部屋の真ん中まで行く。
「サ、サー・クライフ。
ケ、契約魔法を用いた魔力上昇による肉体強化をします。」
「はじめて下さい。」
試験管の言葉を聞き、サー・クライフと名乗る少年は蒼い瞳を閉じる。
今まで練習して覚えたスペルを頭の中に思い浮かべ、息を深く吸い込む。
「 ―我
クライフの息子
“サー”
汝
凍てつく狼
“ルプス"の主
契約のもと
我に 力を― 」
唱えると、サーの身体が淡い光りに包まる。
「これを切ってみなさい。」
と老魔法使いの先生が言い、何かを囁いたらサーの目の前に木の人形が現れた。
その人形には体の至る所に魔法陣のようなものが彫られていて、どこか陰を帯びている感じがした。
だがサーはそんなことは気にせずに腰にさしている剣を抜き、体に宿っている魔力を剣にも宿す。
大きく振りかぶり上段に構える。
そして剣が風を斬る音が部屋に響く。
切り掛かられた人形は一刀両断だけにおさまらず契約の効果で断面が凍りついている。
サー自身も思ったよりうまくいき驚いていた。
「うん、8点!」
という声が目の前の老いたしわくちゃな魔法使いの先生から
「うーん、7点じゃな−−」
と、古傷だらけのイカつい老剣士の先生がしぶしぶと言い放つ。
「−ーお前はまだパートナーとは、簡易“契約”だけみたいじゃが、お前さんは“ナイト”志望じゃったろだから、“ナイト”になるつもりなら早目に正式な“契約”をしておくべきじゃと…」
サーは老剣士の小言を退屈そうに聞いていた。
契約とはパートナーとなる魔獣や聖獣、たまに精霊と魂などの一部を交換して、力を得る儀式のことだ。
簡易なものから正式なものにかわると呪文はいらなくなったり技が強くなったり…などなどだ。
「−だけど、剣技はとてもよかった。
だから契約を早目に。」
と老剣士の先生が言い終わると。
老魔法使いの先生は
「君が願うならきっと素晴らしいナイトになるでしょう。
頑張りなさい。」
といわれたサーはありがとうございますとだけ言い、卒業証書を受け取り部屋を、嫌いな学校を出て行った。
□ □ □
「−ルプス−」
と、サーが唱えると隣に、凍り付いた毛皮を覆う狼が現れた。
パートナーの“ルプス”だ。
ルプスは“氷狼”という種類の聖獣。
氷狼は聖獣の中でもトップクラスの魔力の使い手だ。
『サー、受かったな。
それで、これからはどうするんだ?』
ルプスはパートナーの卒業を素直に喜ぶ。
「んー、
そうだな……とりあえず、卒業は出来たし“氷の国”へ行こうかな。
最近、ナイトの募集してるって聞いたし
それにあそこに行かないとお前と契約出来ないしさ。」
サーはルプスに淡々とこれからの予定を話す。
ナイトとは国王の直属の組織で魔獣退治・賊の逮捕など、時には戦争に駆り出されることもある危険な仕事だ。
でも名を残せるようなことをしたら永遠に語り継がれ英雄と呼ばれ、讃えられる。
サーも大きな手柄をたてて、いつかは英雄になることを夢見る者の一人だ。
ナイトとはそんな実力重視な仕事だ。
『氷の国か。
では、荷物の準備をしないとな。』
ルプスの言う通り、ここ“水の国”からだとルプスに乗っても氷の国へ行くのにはまる一日はかかってしまう。
(ルプスは人を背に乗せるのを嫌うから二日、三日はかかるか。)
サーは頭の中で氷の国への旅路を考えていた。
「うーん、そうだな。これから少し暇だし街に買い物でも行くか。」
とサーは言いルプスと共に、店の立ち並ぶ方向へゆっくりと歩きだした。
彼の色を隠すための深い帽子を被りながら―――
読んでいただきありがとうございました。何かアドバイスがあれば、些細な事でも良いのでコメント下さい。