第百弾 シェミル村内部
三人でとりとめない会話しながら、一キロ程進んだところで、シェミル村の西側入り口に辿り着いた。
入り口の前には、薄い金属繊維で編まれた、鎖かたびらを装備している中年の男性が二人いる。
すぐ傍の、物見やぐらの上にも人影が見えた。
恐らく、魔物の襲撃を警戒しているのだろう。
そこで挨拶をしようと、レオナさんが俺達の先頭に踊り出る。
「君達も、ラッテ村から逃げて来たのかね?」
「君達も? では、ここまで逃げ落ちる事が出来た人がいるのですね?」
「ああ、君達を含めて十人だ……まだ、我々の村まで来る人がいるかも知れないがね」
ラッテ村の人口は三百名。その内の十名。
俺を抜けば九名。
つまり、全体の三%しか生き残れなかったことになる。
その真実を認識した筈なのに、二人は少しも動じる仕草をしない。
逃亡中に感付いたんだろう。この襲撃で生き残れる人間は、限りなく少ないと。
それに気が付いた俺だけが肝を冷やしている。
事件を体験していない俺だけが! ……恥ずかしい話、俺がリーネの立場だったら、絶対に平常心を保っていられない。
ショックで、精神が変になる可能性すらある。
そんな二人を、どうやって慰めればいいかと考えても、俺に出来る事は余りにも少ない。
だから、俺がすることをができる事を実行に移す。
「―――えっ!? キッドにぃ!? 急に、手を差し出して……いったい、どうしたの!」
「いいから、手を握ってもいいぞ。嫌なら別に」
「ううん。えへへへっ、キッドにぃ、このまま。このまま行こぉ~!」
俺が示した行動により、リーネの顔色がみるみるうちに元気になっていく。
作戦が上手く功を奏した。
これなら、多少は気を紛らわせれるだろう。
「よし、あんた等なら、村に入れても問題なさそうだな。ささっ、早く村の中に入っちまいな。今は緊急時だ、いつ襲撃されるか解らねぇからな」
「お気遣い感謝します。警戒のほう、頑張って下さい」
「おう、困ったらお互い様だ。気にすんな」
警備の人達に認められ、無事、シェミル村内部に入る俺達。
内部の様子は物々しく、片手剣に盾。長剣、槍、弓と武装した者が数多く見られ、バリケードを作成に使う木材を運んだりと、緊迫した空気が読み取れる。
想像以上にひっ迫した現場に、足を踏み入れたようだ。
村の中を歩きながら、逃げ延びた人の現在の居場所を聞くと、シェミル村の村長、ミトスさんのご自宅にいる事が判明。
ミトス村長の家の場所を聞き、二人の歩く速さが軽やかに上がり、早歩きになる。
村の中央を流れる細い川幅になった、ヘラリス川の上に掛かる木製の橋を渡り、東へ東へと移動すると、他の家より大きい、木造三階建ての高さがある建物が見えて来た。




