表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

変態との攻防シリーズ

恋の自覚と変態と

作者: 天羽つゆり

誤字報告ありがとうございます!

何はともかく二人の関係が暴露されることなく、二学期が始まり数ヶ月が経ち今は学園祭の真っ盛り。

そんな彼女のクラスは担任西村の陰謀によりメイドカフェである。

これはクラス中が律への嫌がらせだと気がついていた。

もちろん戦いは勃発したが最終的には、やはりメイドカフェとなった。


「あれって…ゆずき?」


学園祭に来ていた女性が呟いた。


「このばかがーー」


メイド服を着た律は誰もいない廊下で変態に背負い投げを繰り出した。


「うわぁぁぁ」


すぐさま手を着こうとしたゆずきだったが、そこには床がなかった。そう階段。


「うぎゃぁぁ」


さっきとは比べ物にならないくらいの声をだしながらゆずきは階段を転げ落ちていった。

それを傍観する秀隆と南ももう、慣れたもんだ。二人で談笑している。


「きついけど幸せ…」


はあはあ、息をあらくしながらゆずきは帰還した。


「っていない!!」


三人はさっさと生徒会室へと向かい始めていた。

追いかけようと走り出した、その時、ゆずきの頭にハイヒールが刺さった。

追いかけてくるだろうと思っていたら、「まってーーーーびゃぎゃーーーーー」という叫び声に三人は同時に振り返った。

そして目に入ってきたものは、頭にハイヒールを刺したままうつぶせに倒れたゆずきの背にかかとをめり込ませるゴージャス美女の姿だった。

ゆずきも抵抗しその美女の顔を見た瞬間、青ざめた。

ハイヒールを刺したままその場を逃げ出した。

美女も負けじと走り出す。


「待ちなさーーーい!!ゆずきーーーこの馬鹿の変態がーーー!!!」


その後直ぐに美女に捕まったゆずきは彼女にたこ殴りにされた。


「あのどちら様でしょうか?」


律が聞くと美女はにこやかに微笑みながら名を名乗った。


「忍よ。貴女がこの変態ゆずきを匿ってくれてたの?ありがとう。ゆずきが居なくなってからもう心配で心配で…警察に捕まって牢屋に入れられてるんじゃないかと」


そういいながらゆずきを蹴る。


「ここに居るとは思わなかったけど」


「ここって?」


「ここ私の家が経営している学校なのよ」


「「「えーーーー」」」


「金持ちやないか」


「す、すごい」


秀隆と南が感心する。


「そうなの一応金持ちなのよ。私もゆずきも、ね」


ゆずきはだらだらと汗を流している。汚い。


「し、忍ちゃん。あのこの事は黙って…」


「黙りなさい!ゆずき、判っているでしょう」


「……」


忍は項垂れているゆずきから目を放し律に目を向けた。


「ごめんなさい。ゆずきを借りていいかしら」


「は、はい!どうぞご自由に」


「ごめんなさいね。今まで迷惑かけたでしょう。このド変態が」


「はいそれは…もちろん」


「ひどいりっつん!俺は遊びだったんだね」


忍と律の拳骨が炸裂した。


そしてゆずきは引きずられるように連れて行かれた。

けどその顔は嫌そうな顔ではなく、律さえも見たことのないくらい優しい瞳で忍を見ていた。


「なんかすごい人やな~あの先生を簡単に連れて行ったわ」


「うん、手際いい。なんか怖がりながらも嬉しそうだったし」


それにとに南は続けた


「それに?」


「あのひとなんか律に似てる」


「もしかして、元彼女だったりしてな~」


「うんうん!美男美女だもんね。一応見た目は」


「元彼女…」

その言葉が律の心のどこかに触れ、何かが律の中で弾けた。



忍と出ていったゆずきは帰ってこなかった。

そしてもやもやする気持ちを抱えて眠れなかった律は早めに家を出た。

そんな律が見たものは…

校庭の片隅で忍を抱きしめ彼女にキスするゆずきの姿を…

律はただ見つめていたその自覚を胸に抱いて


「私………ゆずきのこと好きなんだ……」

涙が伝った頬を秋の風が撫でていった。



「りっつん!今日の態度はなんだったんだい?りっつんはダイヤモンドダスト、生徒会長君は俺の授業をボイコットするわ、南さんはトイレに閉じこもって出てこない!俺の教師としての威厳というものがね微塵もなくなっちゃうだろう」


今朝のことを二人にポロリと話してしまうと二人は変態に対し態度で威圧感をかけてくれた。


「……」


「俺が何したっていうんだよう」


「貴方はうそつきです」


「何も嘘なんかついていないよ。おれ、りっつんに永久奴隷契約中だよ。天使につかまった悪魔的な?」


「…いつ契約したのよ」


そんな言い合いを律は部屋の中から変態は庭から続けること数時間、ついに変態は泣きだした。


「うわ―――ん、もう終わりだぁぁ!俺が何したっていうんだようううう―――!!」


そう叫びながら律の世間体を脅かす変態に律はイライラを募らせる。

変態は泣きながらもいそいそとスーツのポケットから携帯を取り出すとどこかにかけだした。


「もしもし、俺、俺ええっ!おれおれ詐欺じゃないからね。ゆずきだからね!!そんな悪い冗談は置いといてさ、なんかさりっつんの様子がおかしくて俺のことか待ってくれないんだ」


律は窓の近くからこの会話を聞いていたがその相手の名前にいら立ちはピークに達してきた。


「本当に詐欺じゃないからさ、教えてよ!忍ちゃん」


ゆずきはこの会話に律がいらだちを募らせていることには露とも気が付かない

律のことを愛しているとかなんだかほざいておきながら、変態は忍には優しいなんかこう包み込んでくれるような目で忍とやらを見ていた。

変態への恋心を自覚した律にとって忍はNGワードだ。


「うん、えっ近くに来ているから来てくれるの?ありがとう忍ちゃん、マジで大好きだよ」


はい律は切れました。律は台所から持ってきたフライパンを優しく変態に向かって投げた。


数分後、忍はやってきた。


「こんにちは、律ちゃん」


「…こんにちは」


律はじっと忍の足もとに視線を落としていた。そんな律を見つめてなぜか忍はにこにこ笑っている。


「急に二人の愛の巣に訪れてごめんなさいね。もしかしたら、りつちゃんゆずきのこと好きじゃない?」


律の耳元でそっと忍がそうささやいた。律はポッと頬が赤くなるのを感じた。


「なっ!」

そんなわけないじゃないですかと言いつのろうとしたがその前にゆずきの大きな声でかき消された。

「ああああああもう終わりだ―――何とかして世界が終わるよ!星が星が降ってくる。りっつんに振られたら俺の世界はこうなるうう」


先ほどから絶叫しながらゆずきは忍の足にまとわりついている。だから二人の話もゆずきにはきこえていなかったようだ。

律としてはこの変態のことが好きなのだが出てきたひとことは「きもい」だった。

なんだかこの変態を見ていると何でこんなことで悩まなきゃいけなくなっているのかわからなくなってくる。


「アーメンソーメンヒゲソーレ、わが守護天使よ――我を救済せよ」


何やらよりおかしくなっている変態は完全無視して会話が続く。


「本当にうれしいわ。こんな男を好きだって言ってくれる人が現れるなんて、これでゆずきも救われるわ」


「救われるんですか?」


「ええ、それでね私とゆずきのこと勘違いしてないかなぁってほら、今朝のこと見たんでしょう?」


「……」


「やっぱりね、私とゆずきは単なる幼馴染よ。本当に今朝のはゆずきではなくて弟の方なのよ」


「お、弟!」


急にそんな物語みたいな展開だされてもと戸惑う律だが忍は肯定するようにしっかりとうなずく。


「ゆずきは一卵性の双子だからね。といっても弟の方ともそうゆう関係じゃなくて歓喜のあまりだから、もちろん頬にね」


そう言って忍はほほを指さした。


「りっんという名のこの俺の世界を救い給える最後の女神を」

無視


「弟の方も今日は来ているから紹介するわね」


「はい、じゃあお願いします」


話はひと段落ついた二人の心はある意味一つだった。

(さっきからこの男本当にうざいんですけど!!)

二人は床を這いずり回っていた柚木を渾身の力で投げ飛ばした。

なぜかゆずきはスローモーションで弧を描きながら、庭で存在感を醸し出している木の枝に首をひっかけた。生死は不明だがどうせ生きているのだろう。


チャイムが鳴り玄関に向かうとそこには一人の青年が立っていた。

その青年に律は驚かずにはいられなかった。ゆずきに瓜二つである。


「この人が変態の弟で忍さんのほほキス相手なんですね?」


その律の発言に弟は眉間にしわを寄せた。


「忍さん…」


「あははは、この子が弟の方のゆずるです。で律ちゃんがゆずきのことを飼ってじゃないや住まわせてくれている木戸律ちゃんね」


その紹介で譲は律に視線を合わせるとゆっくりとお辞儀をした。


「木戸さん、不躾ですみません。今回は兄が本当にお世話になっているようで申し訳ございません」


こんなこと言うのも失礼だが変態の弟のくせにまともである。


「それで兄は今どこに」


その言葉に律と忍は閉まったと顔を見合わせた。変体は現在進行形で木の枝からぶら下がっている。

律は腹を決めてその姿がよくわかる窓へと譲を案内するのであった。


「本当にこの人がほほキス相手なんですか?そんなことするような人には見えませんけど…といっても変態の弟ってことにも驚かされますよ」


案内しながら律は忍に問いかける。


「そうなのよね、公共の場でそうゆうことする子ではないんだけど、感極まったのよ。一応二人は帰国子女だから外国の習慣は身についてしまっているし、ゆずきも学校では譲の前でもしてるんでしょうね」


「いや~双子でもこう違うとすごいですね」

感心する律に忍は曖昧な笑顔で応じた。


「あそこです」


案内した窓からの景色にゆずるはなにもいわず眉間のしわをただ深くした。

忍はその姿にはぁっと大きくため息を吐いた。

律は何が何だかわからず首をかしげた。

その直後家を揺らすような大声音が響き渡った。


「ににににいさ―――ん!!」


そう叫びながらゆずるは裸足のまま庭へと駈け出して行った。

一目散に変態の元まで走ると必死に枝からゆずきを離そうとしている。

その姿を律は呆気にとられながら見ていたが肩にポンと忍の手が載せられた。

そして忍はゆっくりと首を横に振った。


「ゆずるはまともな子なの普段は…けど柚木が関わってくるとダメなのよ。なんていうか極度のブラコンだから」

律はひしひしと現実を知った。蛙の子は蛙。変態が兄なら弟も変態。ゆずきの弟はゆずきの弟でしかないのだ。

ゆずきをやっとこさ地上に下ろしたゆずるは白目をむいた兄を掻き抱きながらまた近所迷惑に叫んだ。


「にいさ――ん!カムバァァァァク!!」


「私たちはあることをきっかけで家でしたゆずきを探していたの」


唐突に忍は語りだした。すると庭からも声が届いた。


「そう、あれは俺が必死こいて新居さんと旅行をするために休み返上で働いていた春の昼下がり…海外での仕事をやっと終え帰宅した俺に待っていたのは兄さんが家出をしたという悲劇だった」


「無視していいから」


「はい」


「でね、ゆずきは昔恋をしたの。いわゆる初恋ね。でもその結果は面白いじゃなくて悲劇だったのね」


口調は真剣なんだが顔は笑いをこらえている。


「もう恋はしないって5年間恋をしなかったのにいまゆずきは恋をした。すごく喜ばしいことなのよ」


「なんだって!兄さんが恋…俺がいるというのに嘆かわしい」


「無視していいから」


「はい、何かトラウマでも?」


「そうなのよ。聞きたい?話すけども」


「お願します」


この話を聞けばなんで忍に対してあんな目をゆずきがするのかわかるかもしれない。

まだちょっとしこりに残っている律である。


「柚木が恋がトラウマになり、変態と呼ばれるようになったあの事件を題してゆずきの華麗ならざる初恋よ」


嬉々としている忍を横目にゆずるはポツリと「兄さんおいたわしや」とつぶやいた。


ゆずき、未だ完全意識不明。




ヤバい…短編なのに続いてる


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ