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第三章

第三章


アイン:「どうした?何事だ?」

困惑する彼らを嘲笑うかのごとく、次々とシャッターが下りてくる。瞬く間に彼らは閉じ込められてしまった。

藤二:「何だ?火事か?」

純一:「いや、違うな・・・・・・」

近くにあったコンソールを覗く純一。その表示を見た途端彼は絶句した。

アイン:「どうした」

純一:「・・・・・・」

アイン:「おい?」

純一:「―非常事態コードB−Ωだ」

アイン:「っ!おい、それって!?」

純一:「ああ、そういうことだろうな」

いきなり専門用語を使い出した二人を見て三人の顔に恐怖の色が浮かんだ。

恵美:「ど、どういうことなの・・・・・・?」

恵美に尋ねられて純一とアインはお互いに顔を見合わせた。

純一:「(言っていいのか?)」

アイン:「(知らないわけにはいかないだろう)」

恵美:「ねえ?どういうこと?」

純一は拳を握り締め、そして重々しく口を開いた。

純一:「落ち着いて聞いてくれ」

恵美・藤二・恭子:『・・・・・・』

純一:「―コードBというのは、化学兵器に関する危険事態を示す。そして、Ωは現時点で対処し兼ねる緊急事態により少数あるいは多数の死者が発生する可能性が極めて大きいということだ」

藤二:「それって、もしかして―」

アイン:「ああ。バイオハザードが発生したってことだよ」


<一三二五時 S.O.F西日本分署>

ウィル:「一体どうなっている?さっさと状況を報告しろ!」

バルハートは未曾有の緊急事態に右往左往していた。

地上階のエアフィルターが未知の細菌を検出したのが五分前。AIが分析したところ、非常に致死性の高いウィルスであることが発覚、確認部位を隔離したのが一分前。旧軍がゲリラ制圧などに使用した遅効性細菌兵器は、その効力を発揮するまでにおよそ三時間を有した。だがこれは―

『国防総省のデータベースにも確認を取りましたが、いかなる細菌とも類似・合致しません』

AIはこの細菌が全く未知のものであるという答えを出した。つまり名称は不明。その影響も―不明。人体にどのような影響を与えるのかわからない限り、その汚染を可能な限り食い止めなければならない。そのために地上階を全て封鎖。パーティのために来ていた職員全てに特殊防護服を着させて対応に当たらせているが―

???:『こちらチーム・アルゴ。不審人物を発見。追跡し捕縛する』

???:『こちらチーム・ピカード。こちらも不審者発見』

バイオハザードが発生する数分前、監視カメラが特定不明の人物を映していた。彼が通ったルートで細菌が発見されているのでこの人物が持ち込んだのには間違いがなかった。だが、AIがFBIやCIAの犯罪者データベースにハッキングしても、いかなる人物とも該当しなかった。今捜査範囲を住民票にまで拡げているが、それでもやはり該当者がないのだ。一体彼は何者か?

???:『聞こえるか?HQ、応答せよ。こちらマグナス2』

純一からのひどくノイズの混じった通信だった。

ウィル:「こちらHQ。今何処だ?」

純一:『地上32階。アインや<シェルズ>三人も一緒だ。現時点では問題なし』

ウィル:「そうか。今ウィルスが持ち込んだであろう人物がそちらへ近づいている。何か武器はあるか?」

純一:『窓ガラスを割るための片手斧くらいしか』

各階には「災害時、扉が開かなくなったときのため」に刃渡り30センチ程度の小型の片手斧を設置していた。本当はこういう事態のために設置していたのだが、所詮は猫だまし程度にしかならない。相手が銃などを携帯していた場合、成すすべもなくやられてしまうだろう。

ウィル:「シャッターをそれで破って非常階段で下へ降りるんだ」

純一:『いいのか?ウィルスが何なのか特定できていないのでは・・・』

ウィル:「構わん。<シェルズ>が第三者の手に渡るだけことは何としても阻止せねばならん」

純一:『・・・・・・マグナス2了解』

通信が切れる。目の前のモニターはウィルスを持ち込んだミスターXが純一達の下へ近づく様子を映していた。


<一四〇〇時 全銀空ホテル>

アイン:「まだかよ、おい!?」

純一:「そう急かすな。思ったより、硬くてな」

先ほどから純一がシャッターを斧で切り破っているが、なかなか人が通れるサイズにまで穴が開かなかった。

アイン:「さっさとしねえと・・・・・ヤツが・・・・・・」

純一:「おい、どうした?」

突如ドサリと倒れるアイン。それに続くように恵美や藤二までも倒れてしまった。

恭子:「も、もしかして・・・・・・死んじゃったの?」

頚動脈に手を当てる。まだ脈はある。弱まってもいない。

恭子:「じゃ、じゃあどうしてみんな―」

???:「私のせいかな?」

『・・・・・・!』

声のした方を振り向くとスーツを着た男性がいた。

純一:「貴様、何者だ?」

恭子を背中に隠し斧を構える純一。だが、それを無視し、

???:「君達が眠らないのは、このウィルスが特定の遺伝子には作用しないからだよ」

純一:「何を言っている!?」

???:「一度君と正面から話をしたくてね。あの時、私に屈辱を味合わせた人物がいかなる人物なのかを知りたくて」

言いかけて、純一は凍りついた。

・・・・・・この男には、見覚えがある。一ヶ月前、藤二を拉致しようとしたあの男だ。まさか、あの自爆でも生きていたのか?

???:「私の特技は未来予知でね。ああなることがだいたいつかめたから行動不能にされる前に脱出したのさ」

純一:「黙れ!」

持っていた斧を一閃。だが、男はそうされることがわかっていたかのように平然と右手を前に差し出し―

恭子:「・・・・・・っ!」

斧の刃先を素手で受け止めた。素手である。受け止めたところから”青い”鮮血がしたたり落ちる。

???:「まあ、私にできるのは未来を知ることだけで、そこの彼女と違って決定された運命に抗うことはできないがね」

衝撃に目を塞いでいた恭子を指差して男は言った。

純一:「貴様、何を知っている?」

斧を持つ手に力を込める。だが、それ以上の力で押し返される。このままでは逆に押し切られてしまうのは見えていた。

???:「言っただろう、すべてだよ。この世界の定理はすべて知っているよ。彼女に教わったからね」

彼女とは一体だれのことか、その時純一には皆目検討がつかなかった。それが解ったのはずっと後になってからである。

???:「おっと、自己紹介がまだだったかな」

右手をくいっと押し出すと、純一は弾き飛ばされてしまった。後ろにいた恭子はその後ろにあったシャッターと挟まれ、うっと肺の息を洩らした。

???:「まあ私達には特定の名称などないのだが、せっかくだ。私は”ヴィルヘルム”だ。コードネームだと思ってくれて構わんよ」

英国の紳士のように会釈をする男―ヴィルヘルム。

純一:「ふざけるな・・・っ」

ヴィルヘルム:「ふざけてなどいないよ。君達なりの流儀だと教わったのだが?」

純一:「わけのわからないことを―」

ヴィルヘルム:「理解するのは無理だろうな。君は”見ていない”のだから。そのうちわかるよ」

純一:「・・・っ!・・・・・・何を―」

ヴィルヘルム:「そろそろ失礼するよ。あまりこの世界には長くいられないのでね」

純一:「・・・・・・くそったれ!!」

さっきから何意味不明なことを言ってやがる。まるで宇宙人みたいな口ぶりじゃねえか。

・・・・・・ん?そこでようやく純一はおかしさに気付いた。

目前の男―ヴィルヘルムの右手からは止まることなく血が流れ続けている。その色が―青いのだ。

純一:「―貴様・・・・・・何者だ」

ヴィルヘルム:「私が何者かという問いには答えられないね。まあ気になるんならこれを見るんだね」

といって銀色に光る物を放り投げた。それはCDケースのようだった。

ヴィルヘルム:「彼女以上の超頭脳がいるとも思えないけどね、人類の英知とやらを結集させてみればなんとかなるんじゃないかな。あ、そうそう。ウィルスのワクチンならここにあるけど、ただで渡すわけにもいかないね。もう一度勝負といこうか。」

ひとしきり言い終えると、ヴィルヘルムは姿を消した。

純一:「何を・・・・・・」

視界が霞んでいく。どうして床が迫ってくるんだ―


数時間後―

純一は突然の轟音に意識を取り戻した。

純一:「な、なんだ?」

轟音はホテルの外から聞こえてくる。純一は窓へ駆け寄ったのだが・・・・・・

窓からは見下ろした景色は、ただ枯れ木が点々とあるだけの、荒野だった。


えー、やはりこうした題名にするとあまり読んでもらえないようですね。まあようやく前置きが終わったので、次回からは趣向を変えます。


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