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第一章

純一もとに同僚のアインハルト・シュワルツェネガーから電話がかかってくる。その内容は、S.O.F西日本で行われるパーティへ来ないかというものだった。

純一は、クラスメート三人を連れて向かうことにした。

第一章


<20XX/15/Oct 〇六〇〇時 辰巳駅前>

駅前のロータリーに萩原純一は立っていた。

S.O.F西日本分署で行われる首相歓迎パーティに友人を連れて行くため、待ち合わせをしているのだった。だが、

純一:「遅い・・・・・・」

予定の時間になっても誰も来る気配がない。いや、来るのはサラリーマンばかりであって、純一と同年代の若者は全く姿を見せないのだった。

(まったく―)

そこで純一は遥か遠方に影を見た。

恵美:「おーい、待たせてゴッメーン」

純一:「いや、六時には間に合ってる。後二三秒遅れれば、遅刻だった」

恵美:「えらい細かいな・・・・・・あと二人は?」

純一:「それがまだなのだ。連絡くらい入れてもよさそうだが」

恵美:「まあ二、三分は遅れるかもね」

純一:「その二、三分が命取りになるのだ。イラクでの市街地戦のときに―」

恵美は純一に跳び蹴りをかました。五メートルほど飛ばされる純一。

恵美:「そういうこと言うから、パクリだなんて言われるの!少しは自重しなさい!」

純一:「何を言ってるんだお前は・・・・・・」

恵美:「何って、あんた―」

言いかけて恵美ははっとした。出勤サラリーマンは全て電車に乗った。つまり、ここには二人きり。恵美は耳まで赤くなった。

純一:「どうした?」

恵美:「えっ、何、なにを―」

純一が恵美の額に手を押し当てた。

純一:「んー、熱はないみたいだな」

恵美:「あ、当たり前どじょ!」

慌てて純一の手を払いのける。恥ずかしさにろれつが回らなくなってしまった。

純一:「おい、顔が赤いぞ?寒いのか?」

恵美:「な、なんでもないったら!」

純一:「そうか・・・・・・」

それきり純一は黙ってしまった。恵美も何もいいだせず黙り込む。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そうして二人は二分ほど沈黙合戦を続けていたが、恵美が耐え切れず口を開いた。

恵美:「ね、ねえ?」

純一:「どうした?」

恵美:「もし、さ。今度ふたりで―」

純一:「おっ、来たようだな」

恵美:「?」

顔をあげると、走ってくる藤二と恭子の姿があった。

純一:「遅いぞ二人とも。三分遅刻だ」

藤二:「いや、ごめんごめん。渋滞に引っ掛かっちゃって」

純一:「歩行者に関係あるのか?」

恭子:「ほんとよ。青信号になっても車が邪魔で渡れなかったの」

二人は肩で息をしていた。よほど全速力で走ってきたのだろう。

純一:「・・・・・・わかった。じゃあ早く行こうか」

恵美:「(ちっ)」

恵美は自分でも気付かないうちに、舌打ちをしていた。


<〇六一三時 車内>

四人は、飲み物だけを自動販売機で買うと、ちょうど停車していた電車に乗り込んだ。

藤二:「そういやさ」

藤二が手をあげた。振り向く純一たち。

純一:「はい、フジワラクン」

藤二:「ふじはらだって」

純一:「わかってるよ。なんだ?」

藤二:「突っ込んで聞かなかったんだけどさ、どこへいくつもりなんだ?」

藤二と恭子と恵美がうんうんと頷く。純一は知り合いがパーティを開くと言っただけで、何処でやるとは言ってなかったりする。

純一:「このまま東京駅へ行ってだな、そこで新幹線に乗り換えて―」

恵美:「つまり、何処?」

純一:「―京都だ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

恵美・藤二・恭子:『京都ぉ?』

純一:「そうだ。・・・・・・言ってなかったか?」

恵美・藤二・恭子:『聞いてない』

三人は見事に驚きをシンクロさせた。

純一:「問題ないだろ?今日一日予定空けてくれたのでは?」

藤二:「それは、そうだけど・・・・・・」

恭子:「わたし、ちょっとああいうノリ、苦手かな・・・」

露骨に嫌悪をあらわにする二人。

恵美:「あの〜ここに関西出身者がいるんですが・・・・・・」

朝比奈恵美の父親が大阪出身で、かつて大阪の公立小学校に通っていた。

恵美:「まあ、でも、私もこっち来た時、ノリが合わないって思ってたから、人のこと言えないか」

純一:「なるほど・・・・・・国内でも地方の違いでカルチャーショックを受けるのか・・・・・・」

恭子:「あっ、そうか・・・・・・純一は、ここに来る前はアメリカにいたんだよね」

純一:「ああ、そうだ」

純一は肯定していたが、実際にはオーストラリアにいた。S.O.Fの専属傭兵として、オーストラリア支部で働いていたのだ。現在は、ある事情によって学生兼潜入護衛兵として平和学園付属校に―平和学園は秘密裏にS.O.F日本支部が管理している―在籍している。

ちなみに、アメリカにいたということにしているのは、純一の保護者(もちろん偽装)であるウィリアム・ベルセーリウス(ウィリアム・バルハートの偽名)がアメリカ在住(アメリカ人であるだけで、現在はオーストラリアのS.O.F支部にいるのだが)だからである。

純一:「まあ問題ないだろう。確かに大阪や京都出身の奴らもいるが、半分は外国人だ」

藤二:「余計問題あるような・・・・・・」

純一:「問題ない」

藤二:「でも―」

純一:「問題ない」

眉間にしわをよせ藤二に迫る純一。その顔はさながら鬼の形相をしていた。

藤二:「あっ、ははは。そうだよね。問題ないよね」

恵美:「(弱いな、おい)」

純一:「何か言ったか?」

恵美:「いえ、なにも〜」

純一:「そうか、ならいい。もうすぐ東京駅に着くぞ」

喧騒する彼らを尻目に車内アナウンスが『・・・まもなく、東京です。お降りの方は・・・・・・』と告げていた。


そして新大阪行きの新幹線に揺られること二時間。彼らはパーティで騒ぐ為に体力温存を図るため、到着するまで熟睡していた。


<〇八四五時 S.O.F西日本分署>

???:「はっろ〜えぶりわ〜ん!あ〜いむ、みすぐり〜ん!」

眠気を抑えて到着した彼らを出迎えたのは、ルックスは二枚目、痩せ型でそこはかとなく悲壮感を漂わせるアメリカ人だった。

純一:「・・・・・・そのネタ一部の中学生にしかわからんからやめろ、アイン」

アインと呼ばれたアメリカ人が解ってないなと言わんばかりの顔で純一を睨む。

アイン:「いいんだよ、一部の人が喜んでくれりゃ。これは大衆紙じゃない、ただの創作同人誌だ。二次転載は認めてないけど」

その場にいた一同の頭上に「・・・・・」と浮かんだ―ようにアインには見えていた。

アイン:「ま、ともかくだ。連れてきたのはそれで全員か?」

純一:「あ、ああ。そうだが?」

アイン:「いや〜それにしても〜」

アインがちょいちょいと手招きする。純一が近寄ると、アインが耳打ちして、

アイン:「お前はこんなかわいい子達のナイトなのか?え?」

純一:「な、何をいってるんだよ!」

アイン:「砂漠の真ん中でオアシスの恵美を受けて咲く一輪の花とそのそばに佇む美少女、か〜羨ましいね〜くぬ、くぬ」

どうやらアインには純一が”美少女”が三人いるように見えているようだ。

(た、確かに藤二は黙ってりゃ女に見えないこともない、か?)

わずかに赤みを帯びた頬、薄い眉、薄い唇、憂いを帯びた瞳。藤二自身、中学二年生までよく「ありがとう、お譲ちゃん」と言われたらしいが―

(まさか一八歳になってまで言われるとは・・・・・・)

藤二に同情を示す純一を余所に、当の本人は何ひそひそ話をしているのかと首をかしげ、アインは「誰がカモれそうかな〜」などと品定めをしていたりする。

純一:「おい、アイン」

アイン:「うるせえ!・・・俺の使命は貴様の毒牙から彼女達を護ることだ!」

純一:「酔ってるのかお前・・・・・・」

アイン:「てやんでぃ!俺の娘は〜渡さんからな〜」

純一:「一つしか年変わらんつーの」

突っ込む純一を無視し、純一の後ろで待っていた三人へ近寄るアイン。

アイン:「は〜い、皆さん、元気デスカー?ジュンイチの友達で大学生のアイン・シュワルツェネガーです。アイン君って呼んでくださいねー」

恵美・藤二・恭子:『は、はぁ・・・・・・』

三人は呆気にとられているが、アインはそんなことは気にせず、並ぶように立っていた三人と握手していった。


そして最後の一人と握手したところで―

アイン:「あん?」

アインは首をかしげた。

(こ、この感触は・・・・・・)

先ほどまでと違い、ザラザラした手触り。汗ですべる指。近くでみるとごつい肩幅、そして乙女にあるまじき汗の匂い―

アインは裏切り者に出会ったような顔をして、

アイン:「き、貴様っ!まさか―」

藤二:「はい?」

低い声で藤二が返事をする。

アイン:「オ・ト・コ・ノ・コ・エ・カー!?」

純一:「気付かないか、普通?」

アイン:「コ、コ、コ、コンナ、コトッテ・・・!」

アインは隣にいた恭子と藤二を見比べ、「う〜ん」と唸ると倒れてしまった。

藤二:「ど、どうしたんですか!ちょっと、お兄さん!」

自分が原因であるとも知らず本気でアインを心配する藤二であった。

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