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愛憎の始まり~九十九話~

本当の自分はどこにいるんだろう。

大介は模索していた。


いつしか自分を見失った どうでもよくなった。

ただ生きて行くために 父親に好かれるように努力するだけ。



中学に行くと 父親が求める高校を志望校にした。

この街でもトップクラスに入る学校だった。

仕方がないやるしかない。



「勉強だけじゃダメだぞ。おまえは将来会社を背負う人間だから

もっと人とかかわりなさい。」と言った。



  どれだけ俺に人間像をかぶせたら納得できるんだろう。

それでも自分はやるしかない大介は 生徒会に入部して 頭角を現す。

先生 生徒に信頼をされるようになって 気持ちもよかった。それが本当に自分なのかは

わからなかったけど。



二年の後半には生徒会長となった。

父親は喜んだ。


「さすが俺の子供だ。自慢の息子だ。」上機嫌な父親認めてもらえたと大介は嬉しかった。



三年生の卒業プロジェクトを企画していた時のことだった。



「二年六組 まだ企画あがらないのか?」



「ごめん。いろいろと手がかかって……。」六組の代表が口ごもる。



「最近 一人で出てるけどさ 女子の代表はどうした?」



「なんか忙しいとかで…学校が終わるとすぐ帰ってしまって だから自分も

今一人でやってるとこなんだ。」



「無責任だな。」



六組の女子の代表が最近委員会をさぼっているのは 執行部の中でも問題になっていた。

三年を追いだすプロジェクトは 大介の初の仕事だったから 

なんとか真面目にやってほしいと思った。



「会長から言ってもらえないか。俺が言っても返事はするけど

さぼってばっかだし……。」六組の代表も困っていた。



「わかった。」



大介は次の日の放課後 玄関で待ち伏せた。



すごい勢いで六組の代表が玄関に向かって走ってきて 慌ただしく靴をはいた。



「日高さん。」


大介が声をかけると ふり向いた。



日高 静   学校では大介とトップ争いをしている一人だった。



「今 急いでいるから……。」困った顔をした。




「俺たちも急いでんだよ。企画書は?」



「ごめんなさい。今そんな暇がなくて……。」



「暇?俺らだって忙しいんだよ。

もう少し真面目に取り組んでくれないかな?」



静は 大介よりかなり大きかった。

大介は背が伸びないことに コンプレックスを感じている。



静を 見上げて話すのはプライドも壊れてしまいそうだった。




「企画書だけ作ってきます。でも委員会にはしばらく欠席します。

家庭の事情でどうしても出席できないんです。」



そう言うと逃げる様に 静は走り出した。




  なんだ あいつ……



二年間同じ 執行部にいる日高 静は

名前の通り 静で存在感のないタイプだった。

学校では クラス代表は 成績のいい人間がすることになっていたから

トップ争いをしている静が代表委員に選ばれたんだろう。



  責任感のない奴だな。



「会長ってちっこいよね~」後で女子が騒いでいるのが耳に入った。



慌てて 気づかなかったようにしてその場を離れて

聞こえるところに体を隠した。



「聞こえたんじゃないの?」



「だって…めっちゃちっこくて可愛いじゃん。」



女子の笑い声がコンプレックスに突き刺さる。

「特に 日高さんと話してるとさ 笑えるよ。」



静は女子の中でも大きかった。

そして大介は男子の中でも 小さかった。



「もうちょっと大きかったら カッコいいのにね。

顔はまぁまぁだしやることやるし 頭はいいし ちょっと冷たい感じもいいよね。」




「そう言えば 会長って双子だったじゃん。

この間 見たよ。壮介くんの方。」




「まじ~~?あそこ離婚したんでしょ?壮介くんはおかあさんの方に

ついていったって聞いたけど。」




「小学校から全然タイプ違ったじゃん。

やっぱ違うよ。壮介くんは大きいもん。ガッチリしてるし。

なんか野性的で男らしかった~~~。」



「いいな~~私もあってみたい。

壮介くん かっこよかったんだね。女子はけっこうファン多かったよね。」




その話を最後まで聞くのがイヤになって大介は靴をはいて外に出た。




壮介の話をこんなところで聞くとは思ってもいなかったから すごく不愉快だった。

そして大きくてかっこいい

そんな話を聞いたらなおさら腹が立つ。




あいつは俺より大きいのか……

男らしくて かっこいいのか・・・・・・・・。



大介は庭の小枝を一本折って 何度も何度も足で踏みつける。



  あいつにだけは 絶対負けたくない…




母親を自分からとりあげて……一人で愛情を一身に受けて……




  俺から 母親を奪った……



大介の中でまた 新たな憎しみが湧きあがった。

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