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愛憎の始まり~九十八話~

母親に見捨てられて育った大介だった。


母親が壮介を抱きしめるのを見ながら どうして自分は抱いてもらえないんだろう

そう思った。



自分は何か悪いことをしたから 母親は大介を嫌うのか


幼心に大介はそう葛藤していた。


同じ顔の壮介が甘える姿を見ては

嫉妬でおかしくなりそうだった。




壮介が憎い




大介はいつの頃から そう思って暮らしてきた。

母親が自分のことを



「嫌な子・・・・。」そう言って

憎しみに満ちた目で自分を睨みつけた時



心に宿った母を恋しがる心が音をたてて壊れた。



母の温かい胸に抱きしめられない自分

愛されない自分



それなら父を求めるしかない。




しかし父親に抱きしめられたり 愛されていると実感することもなかった。

ただ言われたままに過ごせば


父親が喜んでくれるからと

反抗せずに 何でも受け入れてきた。



自分には父親しかいない



必死だった。

勉強なんかやりたくもない

ピアノだって 英会話だって 何一つ望んだこともない。



そんなある日 壮介がサッカーをやりたいと父親に言われて

撃沈していた。


何も押し付けられない壮介が憎らしかった。

学校でも休み時間は ボールを持ってグランドにかけだして行った。




父親に叱られているのを見て 嘲笑った。

意気消沈している壮介を 母親が優しい笑顔で接しているのを見て



憎しみだけが 心に宿って行く。



父親に愛人がいるのを知った時

母親の顔を浮かべて「ざまみろ」と思った。



若くて愛らしくて 母親とは全く違うタイプの女に

あの厳格な父はメロメロだった。




  情けないな……。



「おまえも結婚しても 女の一人や二人しっかりと

手玉にとれる男になれ。」


父親は得意げに言った。



  そんなもんなんだ・・・・・。



父親は全く違う顔を見せる。



  俺にはとうさんが手玉にとられてる気がするな。



愛人は 欲しいものをねだる時は うんと甘えた声を出した。




「仕方がないな~~。」


鼻の下を長くする 普段 厳格な父親が崩れて行くけど

大介はそれを冷ややかに見ていた。



自分が生きて行く場所はもう ここしかないから。



愛人は母親とはまったく違う女だった。




  じゃあなんで結婚したんだ。



大人の汚い所を 見て育ってきた自分はいつしか

心を隠すようになった。




母親が壮介を連れて出て行った。



二人が出て行った夜 大介はひさしぶりに泣いた。



「捨てられた……。」


自分と壮介の何がそんなに違うんだろう。

同じ顔をして



自分の方が努力している。


勉強だって習い事だって……いつか母親に褒めてもらいたかった。



「頑張ってるね」って……。


絶望感が大介を包んだ。

同じ顔をしているもう一人のかたわれに嫉妬して憎んだ。



「あいつら絶対に許さない。」



母親が出て行って 愛人が入ってきた。

大介は それでも普通にしていた。



さらに鼻の下を伸ばしている父親に嫌悪感を抱いても

尊敬するふりをして



愛人にも素直なふりをした。




  みんなバカ野郎だな……



いつかおまえらみんなここから追い出してやる。




母親に捨てられた今

愛されることのない父親のそばに今はいるしかない。



人生に絶望した。

男女の関係に失望して


親子の絆を憎んだ・・・・・・。





  俺は一人ぼっちだ。




大介は強くなろうと心に誓うのだった。

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