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愛憎の始まり~九十六話~

お金もないのに母マサヨは 静に千円握らせた。

「雪も降ってるし 遅くなったからタクシーでも乗りなさい。」



「おばさん困ります。

大丈夫だから ごはんもご馳走になってほんと困りますから。」



丁寧な言葉で静はお金をかえした。



「子供らしくもらって。

何かにつかって少ないけど……」




母が受け取らなかったから 静は



「ありがとうございます。」と言った。



「壮介ちょっと……。」机の前にいる壮介を呼んで



「悪いけれど途中まででいいから送ってあげて。」と言ったから



「わかった。」とジャンバーを着た。




雪が降ってきたから背中で静かに眠っている圭に コートのフードをかけた。



「ごめんね。勉強中なのに。」



「いいよ。気分転換しなきゃさ。」



「ありがとね。」恥ずかしそうにうつむいた。



「おかあさん 優しくてうらやましいな~。」



「俺の?」



「うん すごく優しい笑顔で会うと癒される。」

褒めてくれたのがうれしかった。



「優しいよ。大事なかあさんだから~。

静ちゃんのおかあさんは?」



静の横顔が曇った。



「軽蔑してる。大嫌い……人間としても母としても最低の低だわ。」



自分の親のことをそんな風にいうのに驚いた。

母子家庭って親子で助け合って生活していくものだと思った。



「今日は おばさんに感謝した。

おいしいうどんも食べられたし……大切にしてあげてね。

あ…もうここでいいよ。

ここからバスに乗るから ありがとね。

おばさんによろしくね。」




そう言うと静は少し寂しげに微笑んでうつむき加減でバスセンターに入って行った。



事情がありそうだなと思いながら家に戻った。



「ありがとね。勉強してたのに。」


母が優しい笑顔で壮介の雪をはらってくれた。



「寒かったでしょう。」いつもの温かいミルクをくれた。


  俺のかあさんは最高だよ。



「あの子がよろしくって言ってたよ。

かあさんに感謝してるって。」



「そう あの子はホントに可哀そうな子で……」


母の仕事場の同僚の娘で 生活のだらしない人らしい。

周りからもかなりの借金をしていて 母も給料日に一万円を貸したことがあったが

戻ってくる気配もなかったらしい。

人あたりのいい人だったようで

まわりからもかなりの額を 借りているようだった。



赤ん坊のことも全然知らなかったらしい。

突然 身内に不幸があって二週間休みほしいと言ってその間に出産をしてきたという

噂だった。



静はたまにそんな母親のところに顔を出していて

母と顔見知りになったらしい。



「おかあさん あの子のおかあさんに

優しくしてもらってたの。すごく嬉しかった。

お金は帰って来ないけど 日高さんに救ってもらっていたから

あきらめちゃった。」



「おかあさんらしいな~。」



母がいじめられている姿を見ていたから

あの子の母親はそんな母に優しくしてくれたんだと壮介も感謝したくなった。



「あの子えらいな。

弟の世話してて あれ?母子家庭だろ?

赤ん坊は?」



「最近まで一緒に暮らしてた人らしいけど 知らない間に出て行ったらしいのよ。

籍も入ってなかったから 静ちゃんのお父さんは昔死んじゃったらしいわ。」




「そうなんだ。あの子大変だな。」



「そうそう受験生だから壮介と同じ年よ。

どこ受けるのかは知らないけど。」



「弟の世話しながら受験勉強か……

いろんな人がいるんだね。」




「ほんと・・・・。

おかあさんも最初はおかあさんくらい不幸な女はいないと思ってたけど

おかあさんには宝物いるから

だからもっともっと不幸な人はいるんだよね。

辛いこともあるけど 帰ってきて壮介の笑顔や頑張りを見られるだけで

幸せよ。壮介には苦労させるけど

二人だけの生活は最高に幸せだからね。」



母の笑顔に救われるのは自分の方だと思った。



「俺も幸せだよ。かあさん。」



母は嬉しそうに壮介の頭を撫ぜた。


窓の外は雪が激しくなった。

小さな弟を背負って あの子は今頃どうしているんだろう

壮介はそう思うと胸が締め付けられるようだった。




壮介と静


そして圭・・・・・



三人が出会った・・・・・・・。

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