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愛憎の始まり~九十五話~

受験の日が近づいてきたある日のことだった。



「ただいま~~」母の声に壮介はいつものように玄関まで出迎えに行った。



「おかえり。」母はニッコリと笑って


「ちょっとおきゃくさま連れてきちゃった。」と後から壮介と同じくらいの年の

女の子を前に出した。


女の子は変なコートを着ていて

壮介は不思議に思ってじろじろ見ていると後から



「う…ギャーーーー」と赤ちゃんの泣き声がしてビックリした。




「さぁ 入りなさい。」



壮介は慌てて勉強机に座った。



「おじゃまします。」女の子はそう言うと 小さな居間に入ってきた。



「寒かったでしょう。」


母は女の子のコートを脱がして紐でくくられている赤ちゃんを抱っこした。



「ウンギャ~~~」赤ん坊は元気に泣いた。




「静ちゃん これが私の息子 壮介。」



「壮介 静ちゃん。おかあさんの仕事場の人の娘さんなの。」



静という子は壮介を見ないで下を向いた。



「今夜はうちでご飯食べていきなさい。

何にもないけど おうどんにするから。」母はひさしぶりに明るい顔をしていた。



「すみません。おばさん。」静は頭を深く下げた。



「壮介 ほら ダッコしてて。

圭くんよ まだ赤ちゃんだから大切にダッコしててよ。」



壮介はおそるおそる赤ん坊を抱いた。



  けっこう重い・・・・



「かあさん・・・・でも壊れそうだ・・・・。」



「命の重みよ。よく勉強して下さい。

おかあさん ご飯支度するから 静ちゃんと一緒に見ててあげて。」



そう言うと母は台所へ入って行った。


そんないくら母親の知り合いだと言っても

同じ年くらいの女子と 簡単に話なんかできないのに…

壮介はすごく緊張していた。



静はやせていて おかっぱの髪の毛は少しギトギトしていた。



「男の子?」思い切って話かける。



「うん。日高 圭 って言うの。

私は日高 静。」



「さっき名前は聞いたよ。」




「あ…そうだった。」静は恥ずかしそうにしたを向く。



「弟?だよね。」



「そう。今年の冬に生まれたの。もうすぐ一歳。」



「可愛いだろ?」



「うん とっても可愛い。」



圭は 静に手を伸ばし 静も圭を慣れた手つきで抱き上げた、




「すごいね。慣れてる。」



「私が面倒を見てるから。おかあさん仕事とかあるし

あんまり家にいないの。」




「お父さんは?」思わず聞きずらい事を聞いてしまったと後悔した。



「離婚して・・・おかあさん一人なの。」




「俺とおなじだね。」


静も同じ境遇な子だと知ってなんだか親近感を覚えた。

母親のために弟の面倒をみているなんてエライなと思った。



「面倒みてるってえらいな。」




「たまに辛い時もあるけどね。

なんで私がこんな思いしなきゃなんないのって

遊びたい時もあるわ。」



「俺もさ。

だけどかあさんに前でそんなこと絶対言えないからさ

けっこう必死に耐えてるよ。

子供だっていろいろあるよな。」



「あはは・・・あはは・・・・

壮介くんおもしろい」静の口元から可愛い八重歯が見えた。




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