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愛憎の始まり~九十二話~

別れることに対して 強はすぐに承諾した。

若い女を妻に迎え入れる準備はできていたのだろう。



「壮介はとりあえず私の息子で 大介の兄弟だ。

同じ顔をしている子供ということもあるから きちんとした教育をしてもらわなければならない。

泥でもぬられたら目をあてられないからな。

大学まで壮介の教育費は持たせてもらおう。

おまえもその方が助かるだろうからな。

養育費兼慰謝料とでも言えるだろう。」



「私の実家だってあなたにいいようにされて……

両親も騙されたと言ってます。」




「騙した?大きくしてやったんだろうが。

年よりは隠居した方がいいんだ。」



なんのためにこの男の妻になったのか



そう考えると情けなくて死にたくなった。




情けないけれど今は事実上父親の この男の経済力を借りないと生きていけない。

マサヨは屈辱感に傷つきながら 壮介を育てるために

強からの養育費を受け取ることにした。



生活費を稼ぐために慣れない仕事を始めた。




実家に戻りたいと言ったが おまえの旦那に騙されたと

両親と兄夫婦に邪魔者扱いをされて

とても世話になれる状態ではなかった。



夫に頼んで 家を借りた。



「どうあがいても おまえのような女が子供を育てられるわけがない。」



強にバカにされても耐えるしかなかった。



「頑張っていつか 二人だけで生きて行こうね。」



マサヨはそう言って泣いた。



壮介もそんな母が可哀そうで仕方がなかった。

塾も行ける余裕もなくでも 母のために勉強を必死にした。

生活費を少しでもおさえるために わがままを言わずに ほしいものも我慢した。

節電節約 自分が我慢できることは 率先して実行した。



慣れない仕事で母は疲れ始めていた。



「かあさん…大丈夫か?」



「うん 大丈夫よ。壮介だって頑張ってるんだもん

おかあさんが頑張らないと罰が当たるわ。」



疲れ顔で必死に笑いを作る母が哀れで仕方がなかった。

俺がいなきゃもっと

楽だっただろうに………。



壮介はそう思うと 母に申し訳なくなった。




隣の中学に通いだした壮介だったが

その学校に

いとこの 洋一が通っていた。



小さい頃から 大介の金魚のフンみたいな存在で

壮介をバカにしては喜んでいた。

大嫌いな洋一と再会した時には



  終わった



壮介はそう思ったけど 母の手前 泣きごとは言えないと覚悟した。




同じ年の洋一は 学校でも偉そうで金持ちということを鼻にかけてる

どうしようもないイヤな男だった。




嫌われてはいるけれど 洋一に怯えて誰も逆らえない。




先生もそうだった。

他の生徒にはうるさく注意したが 洋一には一目置いて何も言わなかった。


そんな洋一が壮介を攻撃してくるのも見ない振りだった。



  強く…強くなるんだ……。


壮介は母に見つからないように悔し涙にくれる。

「ただいま~」母の声がしたら顔を洗った。


心配はかけられない……。




「おかえり~かあさん疲れたろ。」



麦茶をいれてやる。




「美味しいわ~~壮介の笑顔見たら 疲れも吹っ飛んじゃうもん。」



母がにっこり笑う。

 


  かあさんも頑張ってるんだ

  俺も頑張らなきゃ……



壮介は必死で洋一の嫌がらせに耐える日々だった。

そして学校では笑う事のない子供に変わって行った。

そんな壮介を 狼 と呼ぶ。




母の前だけは 本当の壮介だった。

自分を守るため

母を守るため



壮介も壮介なりに戦っている。




「あいつらを 絶対に見返してやる。」



それだけが 壮介の目標だった。

母と自分をないがしろにした父親を・・・・

母親意外の女におべんちゃらを振る大介を・・・・




その周りにいる金魚のフンを絶対に許さないそう誓った。





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