第二章~八十八話~
叔母が気味の悪い微笑みで私を見下ろした。
「おまえが幸せになるのは許さない……。
私の宝物の圭をたぶらかしてたなんて…本当におまえは母親と同じだね。
壮介も圭も……そして華子からも……こんな形で大切なものを奪おうとするのは
絶対に許さない……。」
叔母はそういうと不気味に笑った。
冷たくそして怖いほど美しい微笑みで私の頬を打った。
「キャ……。」私は床に転がった。
「今のは…華子から……。」
叔母は転がった私の横腹を蹴りあげた。
「や…やめて……。」
殺される……
私は恐怖感で一杯になった。
「これからは私の分……壮介は……私の恋人だった。
将来を誓い合って……人生を一緒に歩く夢を見ていた。
それなのに……おまえの母親が出てきて私の人生を変えてしまったんだ。
おまえの母親は卑怯で最低の女だった。」
叔母は私の背中を踏みつけた。
「ママのことそんな風に言わないで!!
私のママは明るくて元気で…いつも笑顔で…それにそんな
ママをパパはたくさん愛してて…だからうちはいつも幸せだった…。」
恐ろしかったけど大好きな母を侮辱するのは許せなかった。
私は抵抗する。
背中を思いっきり踏まれてまた悲鳴をあげた。
「そこにいるのは…私だったのに…
壮介に愛されて…子供を産んで…毎日笑顔でいるのは
おまえの母親じゃなくて私だったはず……。」叔母の顔には表情もなくなった。
「私は壮介を愛していた……。」
叔母はそういうとソファーに深く腰をかけた。
「静………。もうやめなさい。」後を振り返ると叔父が睦月と立っていた。
叔母は激しく動揺し始めた。
「大介……。」
「わかってるよ。きみが…今でも壮介を忘れられないこと……。」
叔父は優しく叔母の肩を抱き寄せた。
「ごめんなさい…ごめんなさい……。」
さっきまでの鬼が 叔父に抱きしめられて子供のように泣きじゃくる。
私と圭さんが生まれる前………
ずっとずっと前に何があって 今 私はこんな境遇なのか……
過去の扉が開かれた。
昔・・・昔・・・
大きな会社を経営する父
夫の愛人の存在に 苦しめられている母
その二人から生まれた 叔父と父
大介と壮介
双子で生まれた二人にいつ憎しみが芽生えて
一緒にいるはずの兄弟が離れ離れになったのか……
叔母
日高 静
そしてその弟 圭
私の母
角谷 まどか
赤ちゃんだった私に近づき 呪いをかけ
そして爪痕を残した叔母が
なぜそこまでして私を憎んだのか
私はその過去に飛び込んで行く………。




