引き裂かれた心~八十三話~
しばらく圭さんに会う気になれなかった。
また いなかったら
そう思うと 怖くてとても部屋に行くこともできなくて
真実を知るのが怖くて目をそむけていた。
華子もすこぶる機嫌が悪かった。
「華子 聞いてるの?」叔母が聞いた。
「・・・・・・。」
「華子 おかあさんが話してるんだぞ。
なんとか言ったらどうなんだ?」
「・・・・・・。」
「華子!!」叔父が声を荒げる。
「企んでるんでしょ?凛が言ってたわ。
あの松下って女を 圭くんの彼女にしようってそういう魂胆らしいわね。
あの女もしおらしいわ、
そんなこと全然考えてませんみたいな素振りして
圭くんに近づいてるんだから。」
「圭はあきらめなさい。」
「やだ。勝手に身内にしたんじゃない。
圭くんは私の運命の人なんだから!!」
「圭の運命の人は華子じゃないのよ。
圭にはそんな気はまったくないんだから。」
叔母が困ったように華子に言った。
「圭くんに女としてみてもらう。
そしてちゃんと考えてもらう。」
華子は顔を覆った。
華子は可哀そうだと初めて思った。
最初から恋から除外されて少しの期待も持てない。
まだ凛の方がマシかもしれない。
華子が顔を覆った。
「どうして私だけ圭さんと恋しちゃいけないの?
凛にだって恋する資格はあるのに……
ひどいよ……おかあさまのせいよ……。」
華子が可哀そうだった。
華子を見て切なくなった。
恋をする資格
私と圭さんは……結ばれるんだろうか……
それとも……。
週末 圭さんがやってきた。
家の中には誰もいなくて シノさんは買いものに出ていた。
「何してた?幸。全然来ないから……こっちから来てしまった。」
いつもの圭さんがそこにいる。
「幸?どうした?」
「圭さん……あの日…朝電話したけど出なかったよ。」
「あの日?」
「ここで会社の人と飲んだ次の日……。」
一瞬圭さんの顔がとまった。
「電話したの。出なかったよ。」もう一度言った。
心臓がドキドキしていた。
圭さんの言葉を受け入れる準備をしている、
自分も後ろめたいから
「あ~あの日か。
俺さ 仕事やり残してて…早くに出勤したんだ。
出張先で足りなかった書類もあったし。ごめん。
心配かけちゃったね。」
よそよそしい嘘に聞こえた。
「お仕事だったんだ。」
「忙しくてさ。」
「松下さんも一緒?」
「松下さん?なんで一緒なの。」圭さんがとぼけた。
「そうだよね。ちょっと心配しただけ
あの人キレイな人だったから…叔父さんたちもなんだかすごく
気に言ってたから。」
「彼女は 義兄さんの知り合いの娘らしよ。」
そうか ならお見通しだもん
「キレイな人だよね。」
「そうだね。ってそんな話はどうでもいいんだけど……」
圭さんは私を強く抱きしめた。
嘘つき 圭さんのバカ
「抱きしめたかったんだ。」
「圭さん…ここはまずいよ……。」
いつもの圭さんじゃなかった。
荒々しい息が私の耳元にかかる。
圭さんは私を抱き上げて 階段を登った。
「圭さん シノさんも帰ってくるよ……
ダメだよ……圭さん……。」
さすがに私も慌てた。
圭さんは自分の部屋の使っていないベットに私を押し倒して
まるで別人のように私に覆いかぶさった。
「け・・・・圭さん!!やめて!!」
私は思わず大きな声で叫んでいた。




