引き裂かれる心~八十一話~
次の日の朝 公衆電話から裕也に電話した。
何度もためらいながら……
でも聞かないことには前に進めないから
「舞ちゃん?驚いたよ。
目が覚めたらいないんだもん。」
「あの・・・あのね…朝 私裸だった・・・もしかしてあなたと……。」
言葉が見つからなかった。
「覚えてないのかい?」
「ごめんなさい 私かなり酔ってたから……。」
裕也からはかれるだろう真実が怖くて声が震えた。
「舞ちゃん?」
「あ・・・はい・・・。」
「なんかあの夜の舞ちゃんとずい分違うけど……。」
「すみません酔ってて調子にのってました。
大事なことなんです。何も覚えてなくて……。」
「そっか。ごめん。不安にさせたんだな。
舞ちゃん めっちゃノリいいから 俺はその気満々だったんだけどさ…
服脱がしてる間中 他の男の名前をずっと呼ぶから…
やる気うせちゃって……そうしてるうちに完全に寝ちゃうし…
それで俺はふて寝したってとこかな。
とりあえず俺は大人の男だし…ムリなことはしたくないから……。」
「よかった……。」安堵が広がった。
「彼氏がいるんだろ?」
「はい…いろいろあってなんだから苦しさから逃れたいとか
思ってしまって…メイクで別人になった気になって…恥ずかしいです
ごめんなさい……。」
「だから俺言ったよね。
きみにはあの化粧は似合わないってさ。」
「はい…ご迷惑おかけしました。」
「今度はきみらしいメイクをしてみたいな。」
裕也がいい人でよかった。
完全に疑いがはれたわけではないけど 裕也の言葉を信じてもいいと思った。
「自信を持って きみはとても魅力的だよ。
きっと背伸びしなくても……今のままで……。」
自分にとってはいい経験だと思った。
愛する人を裏切るという行為がどんなに後味の悪いことか……
そして何も埋められないから
圭さんのまっすぐな愛の中で私は
不安でも辛くても 抱きしめてもらえる瞬間のために…
私は圭さんの部屋に向かって走り出した。
少しでも……会いたい
解放された喜びが私を優しく包んでくれた。