裏切りの代賞~七十九話~
話が盛り上がって私から見るとそこは別世界。
自分の考えを熱く語る圭さん
それを見つめる 叔父と叔母の温かいまなざし
そしてきっと松下さんは
圭さんに恋をしている
それがはっきり私にはわかった。
途中氷を取り換えたり おつまみを足しに行ったり
私がここにいる意味・・・・
情けなかった……。
私はお手伝いでしかない
あの熱く語るあの中に入って行くことができない
そう考えると
私と圭さんの距離は大きく
いつもそばにいる松下さんは私より数倍 いろんな表情の圭さんを知っているんだ
哀しくなる。
愛してるのに
裏切った・・・・・・。
スキがあった……。
圭さんに愛される資格があるんだろうか……。
圭さんを想う気持ちだけは純粋でありたいと思っているのに……。
「これ・・・・。」
ふり向くと 松下さんがグラスを持ってきた。
「氷いただける?」
「はい……。」なんだかドキドキしたこの人には負けたくないって
「日高さん いつものでいいですか?」
いつもの・・・・
「ああ ちょっとジュース多めにして。」
「昨日もずい分酔ったから その方がいいですよ。」
昨日は…酔ったんだ・・・・
「圭 いい方がそばにいてくれて私も安心だわ。」
叔母がこれ見よがしに言った。
「会社でも松下さんは人気あるんですよ。
でも・・・・なぁ~~」
男性社員は顔を見合わせて笑った。
「何?何ですか?」松下さんは慌てて駆け寄った。
「日高くんとお似合いだから~~~なぁ~~」
みんなが爆笑した。
「もう~やだわ~~そんなこと言って
日高さんに迷惑だから……。」
カワイ子ぶりっこ…
「圭 いいんじゃないか?真面目に考えてみたら。」叔父がとうとう企みを決行し出した。
「社長~やめてください~~」松下さんが頬をおさえる。
圭さんと一瞬目が合って 私は下を向いた。
「松下さんは素敵な人だけど
俺には決めてる人がいるから……。」圭さんの言葉に周りが凍りつく。
「日高さん恋人がいるって…
酔うとその人のこと少しだけ教えてくれるんですよ。
うらやましいな…って思うくらい大切に想ってるみたいで……。」
松下さんの言葉に 男性社員たちが
「初耳だぞ~~~。俺らはてっきり松下さんといい感じなのかなって噂してたんだけどな。」
私はおそるおそる叔父と叔母を見た。
二人はすごい顔をしていた。
怖いくらいに…きっとその恋人を憎んでるんだろう。
それが私と知ったら
憎しみは倍増するに違いない。
「もしかして…まさか…部長の娘さん…ってことないよな?
今回帰る前に
めちゃめちゃ可愛いパジャマ…買ってたじゃん……。
俺はてっきり松下さんにプレゼントするのかなって思ってたからさ…
あれはその彼女へのプレゼントだったりして?」
みんなが酔ってるから会話が弾むけど
叔父と叔母 そして松下さんだけはとてもそんな楽しい空気じゃない。
「いつ見たんですか!?
やだな~~~それってプライバシーですからね。」
圭さんが少し照れながら笑った。
圭さんを見つめる
三人の顔が 氷のようで…怖かった。