裏切りの代賞=七十七話~
裏切ったんじゃないもん
何度軽率だった行動を反省してもいても朝の光景では
私は裸で男と寝ていた。
圭さんだけのものだった私の誇りが
崩れてしまっていた。
汚れてしまったようで苦しかった。
何があったのか
私は裕也がくれたメモを見ていた。
明日…電話してみよう……
はっきりさせないと前に進めないから……
とにかく少し寝よう……。
飲み過ぎて痛い頭でいろんなことを考えて私は疲れてしまった。
しばらくして
「あら・・・幸ちゃん戻ってたの!?」
大きな声で目が覚めた。
「あ・・・ただいま……
すみませんちょっと体調が悪くて帰ってきてまっすぐ寝てたの。」
「勉強のし過ぎかしらね。
下にはうまくいっておくから寝ていなさい。」
「すみません。」
私はまた目を閉じて夢の中へと戻って行った。
「幸……?幸……。」
私は心地よい声に静かに目を開けた。
そこには今一番会いたくて 会いたくない人がいた。
「どうして待ってないんだ?
心配したんだぞ、昨日も何度かけても電話にでないし
帰ってたのか昨日から?」
「ごめんなさい・・・。
体調が悪くて…帰ってきました。」
嘘をついた
「そうか…ごめんな一人で心細かっただろ……。
またチャンス作って今度は必ず連れて行くから
ごめんな。仕事も何とかうまくいったから……。
今日は幸の顔 もう少し見たいからここで過ごすことにした。
おみやげ買ってあるから今度来た時渡すからね。」
圭さんの指が額に触れて 私は目を閉じた。
心苦しかった。
昨日のこと全部話して楽になりたいと思ったけど
絶対言っちゃダメ
舞がそう言っている。
幸と舞の真逆な二人が心の中で まるで凛と華子のように言い合ってる。
圭さんの登場で下からは賑やかな声がした。
また私は眠りについた。
「幸ちゃん・・・・どう?具合は・・・。」
シノさんの声で起こされた。
「もうだいぶいいです。すみません。」
「そうよかった。じゃあお願いがあるの。
下にお客さまがくるらしくて 手伝ってくれる?」
「あ・・・はい
わかりました……。」
気乗りはしなかったけど 圭さんの顔もやっぱ見ていたい
私は着替えをして髪の毛を束ねた。
エプロンをして下に降りて行くと
圭さんが優しく微笑んでくれた。
胸が痛い・・・・。
凛も来ていて圭さんの周りに華子とまとわりついていた。
いつもの光景。
キッチンに行ってシノに合流して料理を手伝った。
「旦那さまが急にお客様をお呼びになるって……
幸ちゃんが元気になってくれて助かったわ。」
「もう大丈夫です。心配かけてごめんなさい。」
叔父も叔母も今日は上機嫌だった。
きっと圭さんの仕事がうまくいったからだと思う。
「圭 本当によくやってくれた。
おまえは私の誇りだよ。いい義弟をもって私は嬉しいよ。」
叔父の笑顔はめずらしい。
今日は本当にご機嫌がいいんだと思った。
「みんな頑張ってくれたから。
もともと俺たちのプランが甘くて…もっと勉強しないと
義兄さんに迷惑かけたから申し訳ないよ。」
今夜はとりあえず楽しい食事になるんだろうと私は思っていた。
「勉強好きな変わりものさん おかえり。」睦月がつまみ食いをした。
「あら これお客様用だから 睦月のはこっちだよ。」
「いいじゃん~。お客さん 来たよ。」
その時リビングの入り口に 数人の人達が入ってきた。
その中に・・・・プリクラにうつっていたあの女の人もいた。
「ほら…あの人だよ。圭くんと一緒にいた人。
絶対 怪しげだよな~メッチャお似合いだもん。」 睦月はそう言うと自分の部屋に入って行った。
「おじゃまいたします。」
美しい黒髪が輝いていた。
そして実物も驚くほど キレイな人だった。




