憎しみと愛~七十話~
「勝手なことは許さないぞ。おまえには
おまえが一番幸せになるように俺は考えているんだ。
そんなどこの馬の骨かわからない女に大事なおまえを任せられない。」
叔父が言った。
「義兄さんには感謝してるよ。
ここまで俺を育ててくれたのは義兄さんと姉さんだって
ほんとうにどんなに感謝しても足りないけど
これからは俺だって 俺の愛した女と一緒に残りの人生歩きたい。」
華子が耳をふさいだ。
「そんな話聞きたくない。もうお願いだからやめて…」
泣き声が悲鳴のように聞こえた。
「おじさまの責任でこの話しっかり潰して下さいね。
うちのパパも絶対許さないわ。
圭くんは会社を背負っていくんだから。」
凛が強い口調で言った。
「背負うって…ここには睦月って立派な後継ぎがいるんだし…」
「睦月なんてムリじゃん。
今だって勉強もしないでこんなことして
虚弱体質だし
うちのパパは 睦月には荷が重いって言ってたわ。
睦月は圭くんのサポートなしではムリだって
この大きな会社を経営するには力不足だから
おじさまだってわかってるでしょ?
帰ります。」
言いたいこと言って 凛はリビングを後にした。
睦月の気持ちを考えると気の毒に感じた。
凛がとんでもない発言をして帰ったから空気はすごく悪くなっていた。
「おまえには睦月の肩腕になってほしい。」叔父が言うと
「俺は別にここを継ぐとか考えてないし
圭くんに全部お任せしてくれていいよ。」
睦月が口を開いた。
「バカな事を言うな。おまえは俺の息子なんだぞ。
もっとしっかりしろ!!いつまでもそんなことしてるから
バカにされるんだ!!!」
叔父がめずらしく声を荒げたので 私はビックリした。
「とにかく圭も睦月も俺にとっては大事な後継ぎだからな。
勝手なことは絶対に許さない。
圭には圭にふさわしい最高の女を見つけてやる。
わかったな。」
叔父はそう怒鳴ると 部屋を出て行った。
「圭……そんな裏切り方はないわ。
私はあなたのためにいろんなことを犠牲にしてきたのよ。
もし大介が許しても 私は絶対に許さない。
その資格は私にはある。
圭は私を裏切る?そんな非道な子じゃないわよね。」
いつもおだやかな叔母がまるで別人のようだった。
「絶対に許さないからわかってるわね。」
叔母も部屋から出て行った。
圭さんがうなだれていた。
私も不安で一杯になった。