憎しみと愛~六十八話~
圭さんが板垣の家で食事をする夜は 凛もやってきて
二人は競い合って圭さんのそばに陣取る。
私はいつものように騒がしい食卓に 料理を運んだ。
何もないかのように演じる私たちが
秘密を楽しんでいるようで楽しかった。
華子と凛が かわるがわるに圭さんに話かけていた時
睦月が帰ってきた。
「おかえりなさい。」
叔母はとろけそうな笑顔で睦月を迎える。
「睦月 またいい男になったな。」圭さんも眩しそうにしている。
睦月はまた少し背が伸びてすっかり声も男らしくなった。
どこか圭さんに似ているのは 叔母が圭さんのおねえさんだから。
「圭くんも相変わらず大変そうだね。
うちではまたうるさいやつらに囲まれて
一人暮らしを始めたら 大人の女の人と・・・・・。
やるな~圭くんは~~
今度そういうテクニックも教えてもらわないと……。」
華子と凛の手が止まった。
そして私もその言葉に激しく動揺した。
「圭 何かいい人がいるの?」叔母がすかさず尋ねた。
「睦月 余計なこと言うなよ。
誤解されるだろ?それでなくてもうるさいのに。」
圭さんの顔も警戒顔に変わった。
「ほら松下女史のことだよ。」
圭さんが叔父にそう言った。
「松下くんは優秀だろう?」
叔父が言ってた人が・・・・・
「うん。優秀だよ、彼女のおかげでずい分やりやすいから。」
結婚相手にって企んでいる人が……
「めっちゃ美人だよな。
圭くんはあんなキレイな人と仕事してるんだ。」
睦月のバカ・・・・・
聞きたくないのに・・・・・。
「女じゃないよ。あの人は絶対に
結婚とかしないんじゃないかな。
女でいるのがもったいないよ。」
「頭のいい人だからな。
きっとお前の仕事にも欠かせない存在になるよ。」
叔父の言葉の意味を知っている私の心は落ち着かなかった。
企んでるんだよ
そう叫びたくなった。