憎しみと愛~六十五話~
暗い気持ちをひきずっていた。
圭さんを信じたい気持ちと ライバルがキレイでスタイルがいいと知って
私は動揺した。
だって毎日そんな人が近くにいたら
圭さんだって…好きになるかもしれない……
今は間違いなく私以上にその人は 圭さんとの時間を共有しているから……。
あいたいよ……
電話する時間もままならない私は もうしばらく圭さんと
まともに話していない。
仕事中で留守番電話に
「お仕事頑張って」努めて明るく言うのがやっとだった。
そんな日が続いていたある日のことだった。
登校中に
「幸~~」と声をかけられてそこに車に乗った圭さんがいた。
私は驚いてそして感動して泣きそうになった。
こんなに人を愛おしいと思ったことは初めてだった。
会えない時間は不安も愛しい想いも全部育ててくれていた。
「どうしたの?」もう泣きそうだった。
圭さんはあたりを見渡して
「乗れ。」と言った。
私は慌てて助手席に乗った。
圭さんは助手席の私に覆いかぶさって
「めっちゃ会いたかった~~」と抱きしめてくれて頬づりをしてくれた。
「うわ…つめたい…
もうすぐ雪になるかな?」
胸がときめいて息苦しい・・・・
人目なんて気にしないで 思いっきり愛をぶつけたい衝動に襲われる。
「今日って・・・早退して来い~~ムリか?」圭さんが笑った。
「早退してくる~~今日休みなんですか?」
「うん もう幸に会いたくてとっちゃったし~~」
嬉しかった。
「いっぱい演技してすぐ帰ってくるから。」
「よし 頑張れ
って大人のセリフじゃねーな…反省する……」苦笑する圭さん
私は一時間目が終わる時間に早退して
待ち合わせ場所に迎えにきてもらう約束をして 学校へと急いだ。
授業になんか集中できない。
演技しなくても胸が一杯で息苦しかった。
いつも真面目な私を先生の方が気遣ってくれて 私はなんなく
正門までを演技して
正門を出たところで走り出した。
圭さんの車を見つけて また感動する。
愛してる…もうこのまま死んでもいい……。
早く圭さんの体で抱きしめられて一つに溶けてしまいたいと思った。
そんな恥ずかしい自分がここにいるのはなんとも複雑だったけど
でもでも…心が募って募って
体全部がもう圭さんを求めている。
「おかえり~」圭さんがニッコリ笑った。
「サボりはダメだからな~~と一応大人だから・・・
って自分が言ったんだから俺って・・・ダメな大人だな。」
「ありがとう…もう今日これからの時間は
一分一秒私にとっての宝物だわ。」
もう耐えきれずに涙がこぼれおちる。
「なんで泣くんだ?」圭さんが慌てた。
「大好きで…大好きで…たまらないの……。ヒック…ヒック…」
圭さんが私の顔を覗き込んだ。
「俺もだよ。毛穴まで幸を求めてるから…
今日の俺はかなり野獣化してるから~」
恥ずかしくてドキドキする。
「早く二人っきりになりたい……。」思わず私はそうつぶやいていた。