秘密~六十話~
「圭さん……」
面会ギリギリで飛び込んできた圭に声をかけた。
「今日 睦月が来たんだけど昨日…出て行くって…言ったって…。」
「睦月来てくれたんだ。
うん いい機会だからさ。もうほんとウンザリなんだ。
可愛いよ二人とも ちっこい時からずっとなついてくれていて
幸には 意地の悪いこともするけど
叔父としてはやっぱ可愛い姪っ子なんだ。華子はもちろん 凛だって
俺にはとても女には思えないし…ねえさんにも言われてたんだ。
華子のためにならないって……。
ほんとは大学も地方を狙わせたかったけど 華子はガンとしてひかないし
俺もあっちの家で暮らしたいなって……。」
「でも…そうしたら会えないじゃない…。」
「どうして。今度はいつでも会えるじゃん。」
「そうだけど…でも板垣の家だったら遅くなったって会えるし
向こうに行ったら仕事が遅くなったら全然会えないもん…。」
私は悲しくなってきた。
「一緒に暮らすための下準備だよ。
幸が卒業したら義兄さんやねえさんに話そうと思ってる。
理解はしてくれないだろうけどね。」
「してくれなかったら?」
「いいよ。してくれないって思ってるよ。
後はゆっくりわかってもらおう。
いつかきっと…わかってくれるさ。」
そうかな…そんな簡単なもんじゃない…と思うけど
「そんな不安そうな顔すんなよ。」
圭さんが抱きしめてくれた。
「あ・・・痛い・・・。」
背中の傷に触れて 声をあげた。
「ごめん ごめん~~~
そうだった背中……痛かったか?ごめんな。」
圭さんが私を覗き込んだ。
「華子や凛…なんて言ってた?」
「そりゃ…ビービーうるさいよ。
引越し先教えろとか……でも絶対教えないって言ったんだ。
しばらくうるさいだろうけど……
週に一度だけ板垣の家に行くって約束させられたから
幸にも会えるよ。」
「私たちのこと気づかれてない?
睦月には言われたの。圭さんと交流あるのかって……
ビックリしたもん……。」
「睦月は勘がいいからな……。
気をつけないと・・・…。」
「圭さんが慌ててて…なんか変だなって思ったんだって……。
ビックリした?」
「ビックリしたよ。
可愛いあいつらだけどさ……幸を傷つけることは許せない。」
私は恥ずかしくなって圭さんのキレイな指を掴んだ。
「好き…大好き…圭さんとずっと一緒にいられたら…
どんなに幸せなんだろって……。」
「早く傷治せ。そしたら幸が不安がらないように
抱きしめてやるから……。」
「うん・・・幸せで・・・・幸せすぎて・・・
不安になっちゃうの……。」
「俺の心は幸しかないよ。」
ありがとう…ありがとう私の王子さま……
心が熱くなった……。