呪い~六話~
初めての運動会も私にとってはつまらなかった。
もちろん園の先生たちが総出でお弁当を作って
他学年にいる園の子たちのために応援にきてくれていた。
でもその場は 好奇の目にさらされているようで
いたたまれなかった。
同情する目がウザイ……
同情しながら私たち一人一人が背負っている
過去を想像したりしている。
華子は体が弱いらしくて 短距離走には出ていなかった。
青白い顔の華子は日傘をさして見学している。
私はやっぱり凛と同じ列で短距離だった。
凛は足が速かった。
いつも練習では一位をとって 私の顔を見て優越感に浸っている。
でもね…それは今までのことでね……
私は力を温存してあった。
リレー決めの時も凛に花をもたせてやっていた。
とりあえず出ても出なくてもそう思ってとりあえずギリギリでリレー
完璧に凛は私に勝っていると思いこんでいた。
子供が少なくてクラスが半分紅白に分かれる。
幸いなことに私は赤 凛は白
スタートラインに立って凛が視界に入った。
見てなよ…あんたなんて……
ピストルが空を撃って
私たちは飛びだした。
いつものように凛が余裕の走りを見せ出した時
私はスピードをMAXまで上げた。
追い越した時の 凛の顔がおかしかった。
ウサギとカメの話を小さい頃母から聞いた。
実は私はウサギなんだよね~~
凛を遥か後にしてテープを切って 6年生のおねえさんが一位の
プラカードをもって私をつかまえた。
「めっちゃ早いね~~」
うれしかった。
思わずニッコリと笑ってしまった。
その横にニ位で入った凛が座って私を睨みつけた。
「卑怯なのね。」
私はおかしくて吹き出した。
凛の顔がみるみるうちに崩れてきた。
は?
膝に顔を埋めて背中が揺れている。
泣いてんの?
明らかに凛は泣いていた。
私に負けたことがそんなに悔しかったの?
あんたが悲しむと私……すっごくうれしいんだけど
日ごろ嫌がらせをされていた私の心は晴れていた。
「許さないから……せっかく圭くんが見に来ていたのに……
絶対に許さない……」
凛の声は低くまるで あの日の呪いの女のようで
私はビクついた。
その瞬間
「痛………」傷が一瞬痛んだ。
優越感から一気にまた恐怖感に襲われていた。
傷はいつも私が幸せを感じると痛んでいた。思わず短パンの下の
傷を撫ぜた。
凛をやり過ごして最高にうれしかったのに
水をさされた気分に変わっていた。
この傷…いったいいつまで痛むんだろう……
女の言葉を思い出す。
少しだけ忘れていたのに………
少しくらい幸せな気分になってもいけないの?
凛の肩が震えるのを見ながら
私は恐怖感に襲われていた。