秘密~五十八話~
「痛むか?」
処置が終わった私のベットに圭さんが近づいてきた。
あのあとみんなを巻き込んで
圭さんは私を抱き上げて 病院に飛び込んだんだ。
車の中で圭さんはずっと
「ごめんな……ごめんな」と繰り返していた。
なるべく心配かけたくないから
私は無理にニッコリ笑った。
「うん……ヒリヒリするよ……。寒いし……。」
「ごめんな……。」
「圭さんのおかげでね…そんなに大したことにはならなかったから……
服の上から…お水かけてくれたのがよかったって。」
うつぶせ寝の私はしばらく入院することになった。
応急処置がよかったおかげで大事にはいたらなかったと
お医者さんが圭さんを褒めていた。
本当は入院までしなくてもよかったんだけど圭さんが
「せっかくだから ゆっくり休め。
帰ったってまた 寝てられないだろう?俺は毎日来るから。」
「個室だよ。大丈夫?」
「いいさ。それにこうして二人になれるだろ?」
うつぶせ寝の私の頬にキスをした。
「傷は少し残ってしまうかもしれないって……。」
傷なんてなれてるもん
「ごめん…ほんと……。」
圭さんの目が潤んできた。
「泣かないでって・・・大丈夫だから……
うつぶせ ちょっとつらいだけだもん……。」
あのあと圭さんは 華子と凛に帰って来てから話そうと言った。
何を話すんだろう・・・・・。
「少しここでゆっくり寝て…何も考えるな。」
「はい。退院したらいっぱいご褒美くれる?」
それまで心配そうな顔だった圭さんが吹き出した。
「もちろん。もういらないお腹一杯って幸が泣くまで
ご褒美あげるから。」
「なんか圭さん…やらしい顔ですよ。」
「何~?失礼な!!
とにかく今日は帰るけど 明日仕事中でもくるからいい子にしてろよ。」
うつぶせ寝の私の唇を指ではじいた。
「なんか赤ちゃんの時みたいだな。」
「え?赤ちゃん?」私が聞き返すと
「いや~うまそうなたらこみたいだな~って思ってさ。」
「失礼な~~だって口寄るでしょ。
もう~~意地悪なんだから。」
顔を枕に押し付けた。
「ごめん~~ほら俺帰るからさ。
顔見せて。」圭さんの優しい声
渋々 顔をまた圭さんの方に向けると ひざまついてた圭さんの
顔が近づいてきた。
チュッ……
「俺の夢・・・一杯見ろよ。」
圭さんはそういうと病室を出て行った。
彼のいなくなった空間は……色のない世界のように寂しかった。