愛される自信~五十三話~
圭さんが 私の太ももの傷をどう見たのか少し心配だった。
気のせいか傷に圭さんが 何度かキスをした気がしたから……。
「足の傷・・・見た?」
真っ赤に肌から浮き上がった爪のあとは
数本のミミズバレとなって私の太ももを這っていた。
「あ…うん…なんかの傷かな。」圭さんが少し慌てたように言った。
「なんか不思議なの……。
でも…話すと罰が下りそうだから言わない……。」
「そっか~」
圭さんが私をまた強く抱きしめた。
「圭さん…帰んないと……。」
タイムリミット一時間前
「帰りたくないけど……帰んないとね……。」
「ごめんな。俺がもっと大人だったらこのまま幸を
どこにもやらないんだけど……。
それまで俺たちは この時間を守るためにいろんな裏切りを
していかないといけない。
わかるよな?」
「はい……。」
「とりあえず明日からそっちに帰るから……
でも向こうに行ったら 俺はそう簡単には幸を抱きしめたりはしない。
前のように屋上で二人で会うのも危険だ。
わかるよね。」
「はい。」
「その代わり ここで会う時はその百倍抱きしめるから……。
我慢しような・・・・。
俺がもう少し立派な大人になって幸をさらっていく
準備ができるまで…この秘密を大切にするために
お互い慎重にやっていこう。」
そのつもりだった。
圭さんが与えてくれる私への愛は絶対誰にも邪魔されたくない。
この城は私に与えられた幸せの空間……
そしてこの胸は 私の幸せの場所。
それを守るためならどんな女優にでもなれる。
「幸 主演女優賞とるくらい頑張るよ。」
「あはは・・・」圭さんが大爆笑した。
それから私たちは別れを惜しむようにもう一度キスをした。
「いつでもおいで。
怪しまれないようにな。」
「はい!!」
圭さんと私のお城は 私の学校の裏側の高台にあった。
怪しまれずに私が来れるようにとそれから美しい景色の見える部屋を
探すのに苦労したと笑った。
地下鉄駅まで車で送ってくれた。
「気をつけて。」
「はい。今日は夢のようでした。」
圭さんが助手席から出ようとした私の手をつかんで
思いっきり握ったから
「痛い~~」と声をあげた。
「バカだな~夢なんかじゃないだろ?」
圭さんがウインクをしたから 私はまた胸がキュンとなる。
「明日も行っていい?」
「いいよ。」
「学校終わったらすぐ行く!!明日は午前授業だから……
あ~神様に感謝しなきゃ~~なんていいタイミング~~」
「じゃあ昼メシ一緒に食べよう。」
「私が作る!!」
「じゃあ 後で一緒に買い物行こうか。」
「キャ~なんて素敵なの~~」私は大喜び。
「じゃあ明日な~~早く行け。
他の男に声かけられても絶対 ふり向くなよ。」
圭さんの笑顔に見送られて 現実の入り口へと帰って行く……。
だけど今日は辛いことなんてなかった。
この短い時間での出来事は私にとっての
一生分の幸せな時間だったから……。
私の・・・王子さまは…圭さんなのかもしれない……
上手な女優になって…圭さんとの愛を絶対に守って行こうと強く決意した。




