動き出す運命~四十五話~
夢のようだった。
圭さんはやっと私から唇を離した。
「ごめん…。驚いた?」
いつもの圭さんの笑顔にホッとした。
私は恥ずかしくて下を向いて
「はい。」声が震えていた。
「俺は来年卒業したら こっちに戻ってくるから……
頑張って待ってろよ。」
「え・・・?」
「そんなまんまるい目して……」
そう言うと圭さんはまた私を抱きしめた。
幸せな気分だった。
温かくて安らいでこのまま眠ってしまいたくらいだった。
「俺が幸を幸せにするよ。」
「幸せ?」
「そうその名前に負けないように たくさん幸せにするから
もう少し待ってろ。」
嬉しかった。
「なんか夢見てるみたい……。
圭さんにそんなこと言われるなんて……。」
「ただ…俺たちのことは誰にも知られてはいけない。
凛や華子も勘がいいからな。
幸は細心の注意が必要だぞ。
俺も義兄さんとのこともあるし……」
そう言うと少し暗い表情になった。
「裏切りってやつでしょ・・・・。これって……。
俺は義兄さんに感謝している。だから本当はこんなこと
してはいけないんだけどさ……。
恩返ししてから…そう思ってたけど……
幸が泣いてばかりいるから たまらなくなった。」
裏切り……
そうだ裏切りだ
叔父は 私と圭さんが結ばれるなんてバカな結末を望むわけない。
「だから絶対これだけは……
大切にするためにも……わかるよな?」
「はい……」嬉しくて涙が出た。
「泣き虫だな。」
そう言うと私の目尻を指で優しく撫ぜた。
「幸のここはいつも赤くなってるんだよね。」
「え?そうですか?」
「涙で荒れてるんだぞ。
泣いてばっかりいるだろ?」
「はい……泣かない日はないかな……。」
「次に会う時はさ ここ赤くしてるなよ。
心配になるから。」
圭さんの唇が目尻にたまった涙をとってくれた。
「可愛いよ 幸……。」
「え・・・だって私 全然お洒落してないし…
服だってこんなのばっかで…可愛いとこなんて一つもない……」
「違うよ。そんな飾りをしなくても
充分に幸は可愛いから……だから凛や華子は幸が気になるんだよ。
幸は気づいてないんだよ。
自分の魅力に……。」
圭さんの唇がまた私の唇に触れる。
「愛してる……。」
信じられない言葉だった……。
私も目を閉じてまた圭さんのキスに酔った。
たくさんキスをして 圭さんは
私に携帯の電話番号を教えてくれた。
「これは幸にしか教えてないから」
その秘密にワクワクした。
私だけの圭さん……
次の日 私が学校に行っている間に圭さんは
東京に戻って行った。
私に素敵な夢を与えて……
愛してる
その一言で私は シンデレラになった気分だった。




